前途多難を印象付けた、苦いリーガ開幕戦。
バルセロニスタにとって、ビスラでのチャンピオンズ予選は“消化試合だったから内容も結果もひどかった”と結論付けたいゲームだった。そのためには、相手が同様に守りを固めてくるであろうフエラでの試合で、きっちり勝っておく必要があったペップバルサ。昨年は敵地でさっぱりであり、それがタイトルを失った大きな要因だったから、チームは変わったんだということを、ここは示しておきたいところだった。
その大事な試合のスタメンは、結局のところ新顔としてダニ・アルベスが入っただけで、あとは全員去年から見知ったメンバー。なんとなく、不安がよぎる。事実上チームライカーと同じ選手たちで、果たして“フエラで勝てない病”は治っているのだろうか・・・。
前半のバルサは、期待外れという言葉がぴったり当てはまるようなチームだった。ユニフォームだけは新しくなっているが、パッと見は去年のバルサと変わらない。多用される、アイディアのない横パス。攻撃は中央から強引に。メッシの破壊力に頼るも、個人技だけではずらりと並ぶ壁は破れない。最初は様子を見て、というようなことだったのだろうが、ヌマンシアに守備的欠陥を突かれ、先制を許したことで話はややこしくなってしまった。
12分、課題であるアルベスの背後を利用されてのカウンター。バルサはまんまと右サイドを突破され、慌てて守備陣形を立て直そうとするも間に合わず、逆サイドにボールを振られて勝負あり。ドフリーだったマリオが難なくボールをネットに突き刺し、ヌマンシアがリードを奪うのだった。沸きあがるスタンド。
となれば、後の展開はいつも同じだ。ヌマンシアはよりいっそう守りを固め、バルサはどうにかしてそれをこじ開けようとするものの、これといったアイディアはない。焦って攻めるので、内容は悪化するばかり。一見はバルサがヌマンシアを圧倒しているように思えるのだが、それは完全に彼らの狙うところだった。昨シーズンから知れ渡っている、バルサ攻略法なのだから。前半最大にしてほぼ唯一の好機は16分、クロスバーを叩いたエトーのミドルシュートだった。
そうして前半は終了し、後半もまた同じような展開で始まる。ボールを支配するのはバルサだが、これといったチャンスを作るのはヌマンシア。53分、オフサイドだったとはいえ、ブリに単独でヘディングを許した場面は危なかった。バルサは相変わらず、アイディアがない。
後半が10分ほど過ぎたあたりから、ペップ監督は積極的に選手を交代させていく。トゥレ、アンリ、イニエスタがベンチに下がり、フレブ、ボージャン、ケイタがピッチへ。ファンとしては楽しみな、新加入選手が二人登場だ。期待感は、少し高まる。しかし残念ながら、局面は大きくは変化しなかった。密集したエリア内でボージャンはちょっとした存在感を出し、ケイタやフレブもそれなりにアピールの場はあったのだが、流れを変えるには至らない。根本的な問題である“中央からの強引な突破”が、それでもなお続いていたからである。
データ上は、バルサの攻めは圧倒している。実際、シュートはそれなりに打てている。しかし扉を堅く閉ざすヌマンシアの防御陣形を、崩せないバルサ。そもそもエリア内を10人で守られればゴールは奪えないものだが、バルサは完全に相手の術中にはまってしまっていた。チャビやケイタ、メッシのミドルシュートは、運が良ければ入ったかもしれない。だがもっと、チームとしての工夫が必要だった。
体力の限り、ゴールを守り通そうと必死のヌマンシア。だが90分間守るのはさすがにしんどく、終了間際になってようやく、バルサに同点のチャンスが訪れる。ひとつは41分、ケイタのクロスに頭で合わせたエトーのシュート。そしてもうひとつが45分、エリア際からのメッシのフリーキック。しかし無情なことにこれらはあとわずかのところで枠を捉えず(メッシのシュートはポスト直撃)、ゲームセットの笛は吹かれた。
バルサはこれにて、14年ぶりのリーガ黒星スタートとなった。テクニコが変わり、補強に8000万ユーロを費やしても、フエラで勝てない病を治すのは簡単ではないようだ。明るい兆しを見出すのなら、それはチームが昨年より“どうにかして勝ちたい”という気持ちを発するようになっていることと、より懸命に走れるようになっているところか。ペップの戦術が浸透し、少しでも早く開花することを強く願う。救いは鬼門リアソールにて、マドリーが同じく黒星発進をしてくれたことだ。
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