余裕のある展開の前半と、あっぷあっぷの後半と。守備組織における課題が露呈した。
この日のペップは勝利した前2試合のゲンを担ぎ、グレーのスーツを着てのベンチ入りだった。そしてその効用は、それなりにあったといえる。苦しくはあったが、そのスーツの勝利ジンクスを3にまで伸ばすことが出来たのだから。しかし道のりは平坦ではなく、誰もが予想していなかったグジョンセンのゴラッソに助けられての勝利だった。試合がややこしくなった原因は、ビスラとのチャンピオンズ予選(4-0)以来、完封することのない守備の不安定さにある。特に油断が生む失点は、撲滅しなければならない。
試合の前半はほぼ完全にバルサペースだった。よく集中し、ボールへのアプローチも速く、ベティスにまったくチャンスを与えないバルサ。ボールはほぼベティス陣内で回されることになり、そしてエトーが切れていた。まだまだベストには遠い彼だが、それでもこの日は2得点。いよいよエンジンが回転してきた9番だ。
ひとつめは17分、エリア際中央付近でメッシからのボールを受け、細かいタッチでマークを突破して豪快に叩き込んだ右足のシュート。クロスバーに当たりながらも、ボールはズドンとネットに突き刺さった。ふたつめは23分、今度はメッシがエリア内にドリブル突破し、右足で折り返したボールを、ゴール正面に走りこんでいたエトーが押し込んでのゴールだった。ブラボー!
この2-0となった時点で、多くのバルセロニスタは勝利を確信しただろう。それほどにゲームはバルサが支配し、ベティスにはチャンスなどないように思えた。
しかし後半、バルサはガードを緩めることで自ら苦しむことになっていく。2点のリードに油断したのだろう、ハーフタイム明けのバルサはプレスに勢いがなくなっていた。のんびり流しながらプレーしているような感じ。そんなバルサに、ベティスは反撃を仕掛ける。まずは57分、カピの獰猛なミドルシュートが炸裂。どうにかバルデスがパンチングで防いでいる。そして59分、ゴール正面からの間接フリーキックを、モンソンに突き刺されて2-1。ボールは壁の隙間をすり抜け、ネットを揺らした。
この失点により、ヤバイかも、とギアを上げようとするバルサだが、一度ベティスに傾いた流れは簡単には取り戻せない。前半とは打って変わり、激しくプレスをかけてくるベティスに中盤をコントロールされ、不安定な守備ラインの裏をことごとく突かれるバルサ。そして67分、守備ラインの乱れからあっさりとホセ・マリに単独突破を許し、最後の壁バルデスもバセリーナで処理された。これで同点。さらにその1分前には、ペナルティにならなかったのが不思議なくらいの、セルヒオ・ガルシアへのカセレスによるタックルもあった。明らかにベティスの時間帯だった。
昨シーズンによく見たような展開。こういう場合、大抵の試合はそのまま終わるか、逆転を喫したものだった。しかし今回は予想外の男グジョンセンによってペップバルサは救われることになる。その数分前にケイタに代わって途中出場していた彼が、見事なゴラッソを決めてしまうのである。右サイドからのアルベスのアーリークロスに、ファーサイドのグジョンセンが滑り込みながら懸命に足を伸ばす。そしてその努力は報われ、ボールは逆ポスト際にすっぽりと収まるのだ。執念のゴールだった。
また、ゴールには結びつかなかったものの、途中出場のボージャンもいい動き。相手GKと2度ほど1対1の場面を作っていたので、そのうちのひとつは決めておきたかった。
バルサはリードを守りきり、苦しみながらも今季カンプノウ初勝利をもぎ取った。もうちょっと余裕をもって勝っておくべき試合だったが、エラーは常に高くつくもの。リードを奪ったことでリラックスしすぎる悪癖は早く直さなければならない。エスパニョールとのデルビー(モンジュイック)は3日後に控えている。
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