審判のジャッジが、展開と結果に非常に大きな影響を及ぼした試合。
ゲームはいつもと同じく、バルサペースで進んでいった。ペリコは守備を固めてのカウンター戦術を採用し、ボールをバルサに譲る。さすがにこのパターンにもウンザリといったところのバルサだが、対応策は徐々に出来ているようだった。サイドからの崩しを心がけ、決定機も幾度となく演出。しかしGKカメニもキレがよく、バルサに得点を許さない。
まずは11分、左サイドをえぐったイニエスタのセンタリングが、DFの足に当たってあわやオウンゴールかというところで、カメニが懸命に残した足で守りきってセーフ。その1分後にはメッシのドリブル侵入から、ワンツーかと見せかけてのアンリの高速振り向きシュート。だがこれは惜しくもポスト右を通過している。さらに15分には、チャビのミドルシュートがクロスバー直撃となり、どこからどう見てもゲームはバルサ色。しかしスコアが内容に反映しないのは、よくある光景となってきた。その後に、あっさりと反撃に遭ってしまうのも。
そして19分、またも守備の混乱からバルサは失点を喫する。左から右へのクロスボールでアビダルがオフサイドラインを崩すことから始まり、折り返されたところをピケが中途半端にクリアミス。浮き上がったボールを今度はバルデスが処理するのだが、無難にコーナーに逃れていいところをルイス・ガルシアに小突かれたことによってキャッチしそこない、ポロリと落ちたボールをコロミナスに押し込まれたのだった。ガルシアのプレーは確かにファールだったが、それでも決められたのはバルサにも落ち度大。ファール以前に、防ぐ手立ては幾つもあったはずである。
失点後も、バルサはエスパニョールゴールに迫り続けた。特に惜しかったのは35分の場面。アルベスとの壁パスからメッシがシュート、これをカメニが弾き、そのこぼれ球をアンリが至近距離から右足でボレーをぶちかましたシーンである。しかしこれは身体を張って壁となったエスパニョール選手に防がれてゴールならず。これは決めておきたいチャンスだった。
また、前半ロスタイムにはネネーがブスケとボールを空中で競り合う際、肘打ちをしたとして2枚目のカードで退場となっている。
後半、10人でのプレーとなったエスパニョールは守りの体勢を固めてくる。相手に攻める気がないと見たペップは、勝負の交代に出た。アビダル、グジョンセン、ブスケを下げて、エトー、ケイタ、ボージャンを投入。明らかに攻めまくってゴールを奪え、のサインである。
エリア前に選手が集結するエスパニョールを相手に、バルサはボールを支配し続けた。この日のバルサは中央ばかりからゴリ押しで突破を狙うのではなく、サイドからの攻撃を忘れないだけの冷静さはもっていた。だが、エリア内で密集陣形を敷かれると、さすがになかなかゴールは決められない。
58分にはアンリのチレーナ。62分にはカウンター気味の速攻からアンリ(右)が折り返し、チャビがスルーしてエトーが強烈なグラウンダーのシュートを放つも、カメニが反応鋭くセーブ。さらに67分には怒涛の波状攻撃。右ショートコーナーからの一連のパス回しで、1.メッシの触ればゴールというボールに誰も合わせられず、2.ファーサイドでそれを拾ったアンリのシュートが左ポスト直撃、3.さらにそのこぼれ球を受けたイニエスタのミドルシュートもDFの壁に弾かれた。よよよ。
そしてその直後、スタンドの騒動でゲームは一時中断する。ゴール裏最上段に陣取っていたボイショス・ノイス(バルサ過激サポーター集団)からエスパニョールファンに向けて発炎筒が投げ込まれ、怒ったペリコたちがピッチになだれ込もうとするなど、ゲームどころではなくなってしまったのである。ゲームは9分にわたり、中断された。
ゲーム再開後も、ボールはバルサが支配していた。それが報われる瞬間が訪れたのは、83分のこと。エトーのチェックによって始まったカウンター。センターライン付近のチャビから一気に前線のアンリへとボールが送り込まれ、1対1となったカメニはどうにか身体を張って一度はボールを跳ね返すのだが、そのボールが不運にもDFジャルケに当たり、アンリへのパスに。アンリはこれを無人のゴールに流し込み、ついにバルサは1-1へと追いついた。
残り時間も、ゲームはエスパニョールのエリア付近で展開していった。密集する選手、弾き出されるボール。打てども打てども、バルサのシュートは入らない。そのシュート総数は、30を超えていた。だが入らないシュート。ロスタイムも消化され、引き分けかと思われたその瞬間、主審メディナ・カンタレホが最後にまた主役となった。エトーに対するパレハのチャージを、審判はペナルティと判断したのである。かなり微妙な判定。これをメッシが落ち着いて決め、バルサは土壇場で勝利を手に入れた。得点の直後、試合終了の笛が鳴る。
後には“発炎筒騒動のあったデルビー”としてだけ記憶されるであろう、そんなゲームだったが勝ちは勝ち。ペップバルサにはライカー時代になかった、ギリギリで結果を掴む気迫がある。
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