悲惨な内容ながらも、最後のツキだけはある。負け試合ながら、メッシによる終了間際の連続ゴールで逆転勝利。
このゲームはバルサが前半を自ら放棄したような内容だった。出ずっぱりのメッシをベンチに置いたのはいいとして、その代役となるべき選手がいない。イニエスタ、あるいはエトーが右サイドを担当しているのだが、残念ながら拠点とはなりえていなかった。また、アルベスを活かすためであろう“エスカレーター式”3バックも、機能したとはいえない。前線にボールが落ち着かず、アルベスは右サイドで孤立状態に陥っていた。
中盤の構成は、チャビ、ケイタ、トゥレ。試合後半のオプションとしてなら良さそうな組み合わせだが、ゲームを作るとなると話は別。この日のバルサはリズムが悪く、パス展開が遅く、ミスも連発。中盤はまったくゲームを組み立てられず、まったくもって悲惨な内容だった。前半唯一のチャンスは7分、エトーからのスルーパスにアンリが抜け出し、マークを引き連れながらシュートを放った場面。アンリが持ち味を出したプレーだったが、シュートはGK正面で弾かれている。
シャクタールは基本として守備に専念し、カウンター狙いという、いつものパターン。バルサエリアに接近することは多くはなかったが、その数少ない攻撃は、少なからず脅威を伴っていた。目立っていたのは(ラフプレーも含めて)左に位置したブランドン。力強いドリブルと効果的なクロスが特徴で、36分、彼のセンタリングを中央のフェルナンジーニョがポストとなり右へ展開、イリシーニョがフリーでシュートを放ったシーンはあまりにも決定的だった。これはバルデスが身を挺し、コーナーに逃れている。
しかしホッとしたのも束の間、ハーフタイム直前にバルサは痛恨の先制点を奪われる。またも守備の乱れからの失点だった。最終ライン、スルナからのロングボールをピケが競り合い、落ちたボールがイリシーニョへの絶妙のアシストに。ピケの見事なポストプレーだった(皮肉)。イリシーニョはそのままエリア内へとドリブル突破。チェックに行くプジョルも甘く、最後はバセリーナでバルデスもかわされてネットを揺らされるのだった。
そして後半、ペップはシステムを4バックに戻すも、チームは劇的には甦らない。前半よりバランスは良かったが、その程度だった。シャクタールはハードなチェックでバルサを自由にさせない。前半同様、徐々に彼らがペースを掴み始めていた。グアルディオラはそこでアンリに代え、温存していた最終兵器、メッシを投入(60分)。さらに73分にはエトーに代えてボージャンを、81分にはケイタに代えてグジョンセンを投入した。結果的にこの交代が、功を奏することになる。
メッシは早々にボールキープ能力を発揮し、鋭いアシストも連発。ボージャンもまた攻撃に活力を与え、チームの雰囲気は変わっていた。とはいっても、プレーは気持ちばかり逸るといった様子で、効果的な崩しは多くはない。最大のチャンスは、交代前のエトーが魅せた67分のシーンだったろうか。メッシの絶妙パスから最終ラインを突破するも、フェイントでバランスをやや崩し、最後のシュートがギリギリで左ポストをかすめた場面。また81分にはボージャンがデフェンサ4人を引き連れながら、超強引にドリブル突破。シュートは惜しくも左サイドネットに突き刺さっている。
そしてそのまま試合は1-0で終わると誰もが考えていた87分、メッシが爆発する。ゴール前の競り合いで選手が傷んだことで、シャクタールはボールを大きく蹴りだすのだが、そのスローインをボージャンが容赦なくセンタリングし、GKピアトフがキャッチし損ねたところを、詰めていたメッシがごっつぁんゴール。物議を呼ぶゴールだったのだが、とにかくバルサは同点に追いついた。
さらにロスタイムも終わりかという94分、チャビからの絶妙な斜めパスを受けたメッシが、バセリーナでピアトフを処理して1-2。エスパニョール戦に続いて、土壇場での逆転勝利を決めた。メッシというクラックがチームにいたこと、それが今回の勝因だったといえよう。ペップという人は、なにか特別な勝利運を持っているのかもしれない。
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