好守においてバルサが、天敵アトレチコを圧倒した。
歴史的に、バルサとアトレチコのゲームは点の奪い合いになることが多い。しかし今回のゲームは、得点はバルサに集中していた。共にミッドウィーク水曜日にチャンピオンズがあり、スケジュール的に厳しい試合ではあったが、その影響が感じられたのはアトレチコのみ。バルサは序盤から積極的に攻撃を仕掛け、あっという間に大きな主導権を得るのである。
今回のペップの布陣は、直前に怪我によってアルベスが欠場となり、プジョルを右に置いたこと以外は、いわゆる“実験”のないメンバーとなっていた。この試合への、バルサ戦士たちの入り方は最高。速く分厚いプレスを与え、ボール回しもワンタッチで軽快。左サイドのイニエスタがまずは起点となり、アトレチコ陣内に攻め入った。その報酬は、あっという間に訪れる。
前半3分、イニのコントロールによって得たコーナーを、ニアのマルケスが頭で完璧に合わせ、いとも簡単に先制点を奪ってしまうのだ。苦手としていたアトレチコに、思いもよらないほど早い時間帯でリードできた。それだけでも驚きなのだが、この日はそれは序章に過ぎなかった。直後の5分、おそらくは動揺していたであろうアトレチコエリア内に切れ込み、ウイファルシからファールを獲得。ペナルティキックとなるのである。これはエトーが決めて、2-0。いつものバルサなら、ここでスコアは落ち着くところだ。
しかしさらにその直後の8分、またもメッシがアトレチコを出し抜く。今度はピッチ右方面でのフリーキックだった。赤白マドリーが壁を作っている最中の隙を逃さず、早いタイミングで蹴ったシュートがすっぽりとアトレチコのゴールに収まった。GKクペはただそれを逆サイドから見送るだけだった。天敵を相手に前半10分で3-0に出来ようとは、誰が予想しただろうか。スイッチの入らないアトレチコに、怒涛のゴールラッシュで一気にトドメ。素晴らしかった。
軽々と3点のリードを手にしたことで、バルサのアクセルは少々緩むことになる。そして13分、ブスケの軽いプレーによってマキシ・ロドリゲスにボールを奪われ、そのままズドンと20mシュートを叩き込まれて失点。せっかくのいいゲームだっただけに、このゴールは勿体なかった。ただしアトレチコが払った代償も大きく、ロドリゲスはこのシュートで太ももを痛め、負傷後退している。
バルサにとってのネガティブな出来事は、この失点だけだった。あとのプレーは、ほぼ完璧といっていいだろう。選手たちはここからまた気を引き締めなおし、アトレチコを圧倒していく。差を縮められたのなら、また広げればいい、とばかりに18分、エトーが相手の反撃ムードを消し去るゴールを入れる。チャビの浮き球パスを胸でトラップし、守備ライン中央を突破。さらに切り返しでウイファルシを料理し、あとは相手ゴールに流し込むだけ。見事なボールコントロールだった。
勝負はこのゴールでついたといっていい。アトレチコはしぼみ、バルサはさらに意気高揚。攻撃の手を緩めることなく圧力をかけ続け、それは決定機、さらにゴールとなって報われるのだった。5つ目のゴールが決まったのは、28分。イニエスタがドリブルで持ち込み、エリア内で切り替えしてシュート。これは右ポストに拒まれるのだが、跳ね返りをグジョンセンが押し込んだ。
31分にもイニエスタは、右ポスト直撃弾を放っている。今度は左エリア角から、GKクペの位置を見計らってふわりとコントロールシュート。決まっていれば美しかったのだが・・・この跳ね返りはメッシが詰めるも、惜しくも右足でヒットせず。中央のエトーも間に合わなかった。さらに38分には、チャビが右から切れ込み、中央のグジョンセンに合わせるという決定機も作っている。40分にはピッチ中央からメッシが怒涛のドリブル突破からのシュート。最後は左足アウトサイドでちょんと浮かせてクペを処理したところまではパーフェクト。ただ残念なことに、ボールはわずかにポスト左に逸れてしまった。
前半を終えて、5-1。プレー内容もよく、カンプノウはフィエスタとなっていた。後半はさすがに追加でゴールラッシュとはいかなかったが、ポジティブだったのはエトーに代わって登場したアンリにゴールが生まれたこと。しかも非常にきれいなゴールだったのが良かった。74分、アンリ、チャビ、ボージャン(70分、メッシと交代)と小気味良くボールがつながり、最後はアンリがズドンとシュートを突き刺したのだった。
久々に7万5000人のファンで埋まったカンプノウも、この勝利には大満足。ヒホンでの1-6はなんとなく6点取れましたという感じだったが、この日は攻撃的、かつ知的にアトレチコを圧倒し、文句の付けようのない6-1。何年かぶりにバルセロニスタが夢を見られるバルサが戻ってきたような気がする。なんといっても、チームとして機能しだしているのが、素晴らしいことだ。その調子でどんどんいこう!
ここで代表戦ウィークが挟まってしまうのが、なんとも惜しい。
|