エトーのゴールが勝負を決めた。
バルサはこのアスレチック戦、“FIFAウイルス”の猛威に襲われることになる。まず代表から怪我をして帰ってきたチャビとグジョンセンを起用することが出来ず、故障のリスクがあるためにプジョルとメッシはベンチスタート。さらにゲーム中にもケイタとマルケスが負傷交代してしまい、ペップ・グアルディオラはプランの大幅変更を迫られている。試合過多による負傷者の続発。勘弁してもらいたい。
チャビの不在により、ペップはビクトル・サンチェスを先発に起用してきた。予想はしていたものの、思い切った起用だ。今季初先発カンテラーノと中盤を組むのは、トゥレとケイタ。このメンバーからしても、監督はどうやら守備重視の作戦を練っていたと思われる。攻撃のカギとなるのは、この日は前線右方面に配置されたイニエスタだった。
ゲームはどちらかといえば、アスレチックよりの流れで進んでいった。前半3分には、際どいフリーキックをバルデスがジャンプ一番セーブ。その後も簡単なパス回しでバルサ守備ラインの背後を突こうとするアスレチックは、ちょこちょこではあるが、バルサエリアに迫ってはいた。ただし、得点の匂いがしたのは22分、今度はジェステのフリーキックくらい。これもバルデスが横っ飛びにて弾き出している。この日のバルデスは、キレがあり良かった。
バルサはいつもよりも全体にやや後方の位置取りをしており、さらにゲームメイカーもいなかったため、上手くゲームを組み立てることが出来なかった。中盤でボールが収まらず、相手をじわじわと締め付けるようなパス展開も、意表をつく縦への突破もほとんどみられない。チャビとメッシの不在は、やはり大きく感じられた。両チームともにイマイチだったが、よりペースを掴めていないのはバルサだという印象。前半のチャンスは8分、華麗な切り替えしでマークをかわしてのエトーの強烈なシュートくらい。非常にいいシュートだったが、GKの守備範囲だったのが惜しまれる。
また、32分には、ボールを奪おうと足を伸ばしたケイタが、運悪く自重で右ひざを痛めるアクシデントにて負傷交代。後半66分にはボールを競り合った際に足首をひねり交代という不幸もあった。怪我人が連発すると、どうしてもムードは暗くなってしまう。作戦も修正せざるを得ない。
後半になっても、ゲームは相変わらずこれといった見せ場もなく、地味な様子で進んでいった。ただ、バルサは前半に比べ、ペースを握りつつはあった。イニエスタが存在感を出し始め、前半は硬さのあったV.サンチェスもほぐれてきた様子で随所に登場。流れるようなプレーには遠かったが、ゴールには近づいている予感はあった。
均衡が崩れたのは63分のことだった。右方面でボールを受けたアンリが中央へドリブルで持ち込み、ここぞのタイミングでスルーパス。それにエトーが反応し、絶妙のトラップとボールコントロールでデフェンサを突破、豪快な左足シュートを叩き込んで見せたのである。クラックにしか出来ないシュート。能力の差が得点となった。
終盤、地元で負けられないビルバオはどうにか反撃を試みるのだが、この日のバルサは守備への集中を途切れさせなかった。若干ドタバタする場面はありはしたものの、決定的なチャンスを作られることはなし。そのままバスクのライオンを封印し、8月13日のチャンピオンズ予選ビスラ戦以来となる無失点ゲームを成し遂げた。
ちなみに81分、エトーはあわや2点目のチャンスを逃している。右を突破したイニエスタの折り返しを受けたエトーは完全にフリー、GKゴルカと1対1だったのだが、簡単に見えたシュートを狙いすぎ、枠から外してしまうのである。ああ、惜しかった。入っていれば、ゲームは完全に決まっていたのに。
なんだかんだで、バルサはこれでリーガ5連勝、チャンピオンズも入れれば7連勝を達成した。内容は華々しくなくとも、メッシやチャビがいなくとも、最後には3ポイントを手にすることが今のペップバルサには出来ている。この調子でポイントを重ねていけるなら、いいシーズンになる可能性は十分。その調子でいってもらいたい。
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