チームの実力差がそのまま現れたゲーム。スペースがあれば、バルサは強い。
1979年のレコパ決勝の舞台であり、FCバルセロナに初となるヨーロッパタイトルをもらたした“伝説の”スタジアム、セント・ヤコブ・パーク。その縁ある場所への30年ぶりとなる帰還はバルサにとって、非常に快適なものとなった。アスルグラナ色の由来だとも言われるバーゼルを、0-5で下したのである。
チーム力に大きな差が存在している相手との対戦の場合、重要になってくるのは、いかに早い時間帯でゲームを決めてしまえるかである。前半を守り、後半に勝負を賭けようとする相手のプランを早々にぶち壊すことが出来てしまえば、あとは一気に展開が楽になることが多い。そして今季のバルサは、そういったプレーが可能なのが素晴らしい。ペップにモチベーションを注入されたであろう選手たちは、最初からアクセルを踏み込んでいった。
キックオフ直後はパス回しでバーゼルをいなし、少し落ち着いたところでギアをトップに上げていくバルサ。そして4分には、あっさりとゴールを陥れてしまった。メッシがエリア内でボールをキープし、一度アルベスへと戻す。そしてアルベスが右足アウトでノールックで浮き球のパスを上げると、走りこんできたメッシがちょいと左足ボレーで流し込んだのだった。
序盤からいきなり、まざまざとポテンシャルの違いを見せられたバーゼルは、衝撃を受けたようだった。どうにか自分たちのペースでボールを回そうとはするものの、バルサの網に簡単に引っかかる。加えて彼らはライン取りが高かったため、そのスペースをバルサは存分に活用することが出来た。15分には、追加点。1点目と同じように、今度はチャビがふわりしたとパスを送り込み、これをブスケが左足アウトで優しくトラップ、鋭く切り返して左足のシュートを決めた。事実上、ゲームはここで決まったといえる。
勝利を大きく引き寄せたことで、バルサ選手たちは身軽になった。点を奪わねば、とのプレッシャーもなく、好きなようにフットボルを楽しめばいい状況。少々のエゴイストも許される展開に、存在をアピールしたのはボージャンだった。22分、マルケスからボールを受けたメッシがドリブルで持ち込み、エリア際やや中央のボージャンにパス。そしてボージャンはそのまま右方向へ移動しつつ、守備ラインの隙を見つけるや否や、グラウンダーのシュートを左ポスト横に叩き込んだ。天才少年の、今季初ゴール。
他にも多々チャンスはあったのだが、全部記すのはしんどいので割愛。前半は左サイドでプレーしていたフレブは最初ぎこちなさもあったものの、徐々に本来のくねくねした感じを取り戻し、複数回いいボールを中央へ送り込んでいた。あと一歩でゴールという場面も、少なくとも2つ。いいアクセントになっている。その調子。
後半に入っても、バルサの勢いは止まらなかった。おそらくはロッカーでペップに「序盤に止めを刺してしまおう!」と言われたのであろう。3分のうちに連続して2ゴールを決め、バーゼルのはかない希望を完全に打ち砕いてしまうのだ。4点目はいきなりの46分。ちょっとしたピンチをクリアした直後のカウンター。自陣にいたブスケから糸を引くような縦パスを受けたボージャンが、力強いドリブルでエリア内まで突き進み、GKコンスタンソを攻略してゴールを決めたのだった。
そしてそのわずか2分後、今度はチャビが魅せた。ブスケから左へとパス展開し、フレブがドリブルでエリアへと切れ込む。密集地帯で一度メッシがポストとなり、戻したボールをエリア際正面で待ち受けていたチャビが、右足を振りぬいて叩き込んだゴールだった。これら5得点、すべてがカンテラ選手によるゴール。素晴らしい、実に素晴らしい。
0-5となってしまえば、さすがにバルサのアクセルも緩む。プレーのリズムは下がり、その質も少々粗っぽくなっていった。ペップは試合が決まったことで、怪我明けにて万全ではないチャビとマルケスを交代で休ませており、指揮者がいなくなったこともリズムの低下に影響していたのだろう。そういうこともあって、残念ながらボージャンはハットトリックならず(惜しいチャンスはあった)。
リズムを落としたバルサに対し、バーゼルは2度ほど、最終ラインの裏へ抜けるパスにて得点機を演出している。しかしこれはバルデスやデフェンサたちの集中力を切らさない守りによって阻止。地元クラブを応援に駆けつけたロジャー・フェデラーの願いも空しく、バルサはそのまま無失点で逃げ切った。これで公式戦7連勝、2試合連続無失点。チームは着実にステップを上がっていっている。
|