ギアがトップのバルサは、すさまじい破壊力。キックオフ25分間のバルサは、最高クラスの出来栄えだった。
目下、公式戦8連勝中と波に乗るバルサ。ペップ監督はこの試合、開幕戦(ヌマンシア)と同じ先発メンバーをピッチに送り込んでくる。たまたまそうなったのか、2ヶ月前との違いをどうぞご覧あれ、とのメッセージなのか。そしてカンプノウは、夢のような前半を目撃することとなる。
開幕戦は「昨年のメンバーにアルベスが入っただけ。なにも変わっちゃいない」と酷評されたペップバルサだったが、今回はその同じ選手でこうもフットボルが変化するのか、をまざまざと見せ付けられた。アルメリアの出足は、決して悪くなかった。バルサの高いラインの裏を突くべく、どんどんとボールを前線へ送り込んでくる。6位(7節終了時)というのも分かる、意欲的なプレーだった。
しかし今回は相手が悪かった。開始わずか5分、バルサがまたも決定力の高さを披露し、あっさりと先制に成功するのである。得点者はエトーだった。深い位置のトゥレから、前線へ一気に走りこんだイニエスタへ浮き球スルーパス。これはDFに弾かれるのだが、クリアは半端。こぼれ球を狙っていたエトーがダイレクトに蹴り込み、ネットは揺らされるのだった。
バルサにとって、一番難しいのは先制点を奪うことだ。それを成し遂げられれば、あとは押せ押せ。畳み掛けるべく、怒涛の攻撃がアルメリアを襲った。追加点は13分。メッシからのパスにイニエスタが切れ込み、ゴールライン際でGKディエゴ・アルベスをかわしてセンタリング。これはDFに当たるのだが、すばやく拾ったメッシが逆サイドへ折り返し、アンリがちょこんと押し込んで2-0となった。
この時間帯で、バルサのボール支配率はなんと75%にまで到達していた。しかもボールを持たされているのではなく、文字通り完全に支配しての75%・・・これはもう凄まじいとしか言いようがない。アルメリアはここで踏ん張らなくては、と頑張りはしていたが、気持ちだけが焦っている感じ。逆にバルサは悠々と追加点を奪うのだから、それが勢いの違いだ。20分、アンリの突破はDFに拒まれるも、そのこぼれ球をすかさず拾ったイニエスタから前線に鋭いスルーパスが通る。受けたのはチャビ。これをチャビはさらっと横へ流し、詰めてきたエトーがなんなく押し込んだ。
もう、いい意味でのため息しか出ないカンプノウ。フィエスタはそれでは終わらなかった。24分、ボールはチャビから右のメッシへ。メッシはじわじわとエリア内に侵入し、最初の試みとしてのまた抜きパスは失敗するも、弾かれたボールを奪うと一気に縦方向へと切れ込み、GKの目の前でエトーへと左アウトサイドパス。エトーはゴールを背にしており、しかもマークも付いていたのだが、隙を見てヒールで流し込み、スコアを4-0とした。
24分でハットトリックのエトーは文句のつけようがないが、同じく素晴らしかったのは中盤チャビとイニエスタの攻撃参加。彼らのスルーパスやエリアへの飛び出しは非常に効果的でありかつ破壊力抜群、彼らを中心とした連携を止められるチームはほとんどないだろう。世界最高の中盤コンビだ。
点差は4に広がったが、それでもバルサはプレーへの激しさを緩めなかった。前線からのプレスは変わらず激しく、プレー速度も速い。それに苛立っていたのだろう。29分、ネグレドがマルケスへの悪質なファールで一発退場となっている。試合はもう完全にこれで決まった。さらに36分には、30数メートルの位置からフリーキックをズドンと突き刺し、5-0。まるで1試合を見たかのような満腹感のなか、前半は終了した。
後半はいわば、おまけのようなものだった。バルサにとっては、無理をする必要などまったくない45分。集中を切らさぬようにボールを支配し、ここぞの場面があれば押し込んでいけばいい。50分には、アビダルからのボールを受けたアンリがポンとボールを浮かせ、そのまま反転してのボレーシュート。さらに53分、今度はアンリからボールを受けたイニエスタがGKをかわしシュートという場面があったのだが、これらはいずれもシュートが枠を捉えなかった。カンプノウはしかし「いいぞ!」と温かく拍手。
そしてペップは、ベンチの選手たちへチャンスを与え、新たなる実験を行う決断をする。トゥレ、アンリ、アルベスが万雷の拍手を受けながらお役御免となり、フレブ、ボージャン、ビクトル・サンチェスが登場。システムもアルベスが下がったことによって3バックへと変化している。アルメリアは10人になっており、3バックでも十分に対応できた。アルメリアは後半、一矢報いようと盛り返してはいたものの、攻撃はいずれも単発。バルデスを脅かすまでには至らなかった。
試合終了間際、バルサは地元ファンに最後の楽しみを提供しようとギアを上げていくも、残念ながら追加点はならず。しかし観客たちは間違いなく満足して家路に着いたことだろう。このペップバルサは、日を追うごとに進歩している。最初はよろよろで始まった連勝も、いまや疑問の余地のない勝利の連続となり、数字もついに「9」にまで伸びた。むしろ、こんなに早くピークを迎えちゃっていいんですか?と不安になるくらいだ。単なる杞憂でありますように。
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