若干だが台所事情が苦しい中、試験的なメンバー構成。チーム全体の動きがぎこちなく、期待されたようなキレは見られなかった。
この日ペップは、予想されていたメッシとマルケスをリストから外し、さらにアンリをベンチに置いてきた。前線はエトー、ボージャン、フレブという未知の組み合わせ。メレンゲ以外の上位3チームがそれぞれポイントを落とした状況での地元カンプノウ戦、どうにか3ポイントを確保しておきたい試合ではあったが、メンバーを試しながら様子を見て見ようとの考えがあったのだろうか。
序盤から、ビクトル・ムニョス率いるヘタフェは積極果敢に攻めてきた。自陣に引きこもることなく、どんどんバルサにプレスを仕掛けてくる。バルサもこれにプレスで対抗するのだが、この日の中盤はあまり機能しない。パスコースが限定され、前線に届くことなくボールがカットされてしまうのだ。15分を終えて、支配率はほぼ互角。むしろバルサ陣内でのプレー時間のほうが多かったのではないかと思えるくらいだ。シュートもアルベスのミドル一本に限られていた。
そして19分、よろしくない形でバルサは先制を許してしまう。ピケの軽率なパスをピッチ中央でカットされ、そのままカウンター。マヌにエリア前まで持ち込まれ、上手く守備陣の隙間を縫ったシュートを、ゴール右隅に突き刺されてしまうのだった。ジャンプしたバルデスも、あと一歩及ばず。
そこからの反撃も、今回はさほど見られなかった。惜しかったのは20分、クリアボールのこぼれ球をボージャンが至近距離からボレーするも、デフェンサに弾かれゴールならず。メッシならば・・・と思うのは酷だろうか。ボージャンは今回は右サイドでフィットせず、ここぞでの冷静さもなかった。後半の交代後、ベンチでうな垂れていたのが出来を象徴している。
また、この試合ではフレブやケイタら新戦力選手たちのプレーも期待外れに終わった。ケイタは後半に唯一の得点者となるも、ゲーム全般では存在感を発揮できず(ラテラルは意外と面白かったけれども)。フレブもどこか中途半端なプレーに終始し、見せ場らしいものは全く作り出せていない。このあたり、あまり時間をもらえていない選手たちの適応に、課題が残る試合だった。
ヘタフェは序盤からの積極的なプレスのせいで、前半途中からは疲れが出始めていた。それによりバルサはボールをより保有することが出来るようになったのだが、守る相手を崩すには至れない。逆にカウンターを食らい、ドタバタする場面がしばしあった。ハーフタイム前には、エトーのミドルシュートがクロスバーを直撃したのだが、得点機はそれくらいだったろうか。こうしてバルサは、ヘタフェにリードを許したまま前半を終了する。
後半、喝を入れられたであろうバルサは、幾分か縦への突破を意識したプレーをするようになる。しかし大勢に変化はなく、55分、ペップは状況打開のために前線を一気に二枚替える決断をした。いまいちだったボージャンとフレブに代え、ペドロとアンリが送り込まれたのだ。ここで存在感を見せたのは、アンリだった。フレブでは見られなかった縦への動きで、バルサの攻撃は少し活性化する。右のペドロからも、気合が感じられた。
カンプノウが沸いたのは、バルデスがアルビンの強烈なシュートをどうにか防いだ直後だった。70分、右のアルベスが切れ込み上げたクロスを、ファーのケイタが頭で押し込んで同点!さらにペップは一気呵成にいくべく、シルビーニョを下げてグジョンセンを投入していた(72分)。これでケイタが左ラテラルへ。勝負師である。
だが監督、そして選手たちの願いも空しく、追加点は訪れなかった。惜しかったのは79分、チャビの左コーナーをピケが頭で合わせた場面。普通なら入っていておかしくないシュートではあったが、GKアボンダンシエリの好反応、さらにクロスバーによってボールは阻まれ得点ならず。なんてこったい。プレーがいまひとつだと、ゴール運も付いてこないものなのか。
残り時間も減り、そこからのバルサはハートだけで攻め込んでいるようなものだった。理詰めで崩そうなんていうプレーは、もう見られない。勝ちたい気持ち、勝つための姿勢は認めるのだが、それだけで勝てるほどフットボルは甘くないということだ。バルサといえども、試験的なメンバー構成でホイホイ勝てるものではない。選手は組み合わせが重要であるのが、このゲームでは示された。いかにしてメッシ不在を感じさせないチームを作るか、まだまだ先は長い。
|