もはやどんなチームも、このバルサを止められない。いよいよそれが本当に疑いようのない事実として、実感されるようになってきた。
“エタパ・レイナ”も2試合目、もっとも厳しい戦いになるのではないかと目されるバレンシア戦を向かえ、カンプノウは気合が入っていた。スタンドには今季一番の入りとなる、8万を超える大観衆。選手入場時にはモザイクが作られ、選手紹介には“オーレ!”の大合唱。クラシコを翌週に控え、まずはコウモリを料理して前菜にしてやる!そんな意気込みが熱く伝わってきた。
ゲームはのっけから、盛り上がりをみせる。1分、相手の不注意な横パス回しをチャビがカットし、一気にエリア内に侵入。GKレナンと1対1から、左ポスト直撃弾を放っている。惜しい!沸くスタンド。これはちょっとした、バルサからの挨拶である。エトーがいなくとも、バルサの強さも油断なさも変わらない。この攻めはそれを示していた。
前線の構成は、右から基本フレブ、メッシ、アンリという並びだった。この日、特にやる気に燃えていたのがアンリだ。序盤、中盤での激しい潰し合いによって両チーム共に決定機は作れていなかったが、ボールをコントロールしていたのはバルサだった。バレンシアはどうにか網にかけてはいるものの、守るのに精一杯といったところ。しかし彼らの堅守も、バルサの攻撃には持ちこたえられなかった。
19分、センターサークルのトゥレ・ややから、アンリに絶妙の浮き球パスが繰り出される。アンリはこの時、中央にいた。守備ラインをするりと抜け出し、瞬時にレナンと1対1。そして相手が出てくると見るや、アンリはちょこんと右足アウトサイドで心憎いバセリーナを決めてみせるのである。これぞアンリ、といったゴール。エトーがいなけりゃ、俺がいる。心強い男が戻ってきた。
バレンシアはその直後に、ホアキンのクロスにビジャが頭で合わせる場面を作っているのだが、このゲーム唯一ともいえるチャンスでシュートは枠に行かず。逆にバルサは28分、流れるような攻撃からリードを広げるのだった。主役はまたもアンリだった。
中央付近、ボールを持ち上がるダニ・アルベスから左サイドにいたフレブへとパスが展開される。フレブはナイスなトラップからひょいと右横のスペースにボールを流し、そこに走りこんできたアンリがズバッとシュートを突き刺した。この時点で、バレンシアはほぼグロッキーになっていた。このバルサに、自分たちが勝つチャンスはない。そう感じたに違いない。バルサはさらに37分、アルベスからの縦パスにメッシが抜け出し、エリアに切れ込んでシュート。これはなんとかレナンが足で防いでいる。
そして後半になるのだが、バルサの雪崩のごとき勢いは止まらなかった。いきなりの46分、チャビからのスペースへのパスにアルベスが走りこみ、そのままネット左隅に押し込んで3-0。これにて勝負の行方は、完全に決まった。電光石火の早業。こうなりゃあとは、もうフィエスタである。
この試合が始まるまで、バレンシアはフエラで3失点しか許していなかった。そんなチームを相手に、わずか46分で3点獲ってしまうバルサの破壊力。これはもう、凄まじいとしか言いようがない。だがバルサは“わずか”3点では、容赦はしなかった。挫けたコウモリを相手に、さらなる追い討ちをかけるべく攻撃を仕掛ける。バレンシアはどうにかファールでその流れを止めようとするが、無駄な行為だった。68分、メッシの飛び出しから始まり、アンリのシュートで終わる波状攻撃は、まさに圧巻。
フィエスタが最高潮に盛り上がったのは、79分だった。途中出場していたボージャンがアルベスのパスから抜け出し、ゴールライン際まで切れ込んでマイナスのパス。そこに待っていましたとアンリがおり、フレンチクラックはバルサ生活2度目となるハットトリックを達成するのである。ティティを敬愛するボージャンからの贈り物、ってのがいいじゃないですか。
こうしてバルサは、ピレネー越えの第2関所を難なく突破した。いや、この強さはもう圧倒的。来週末のクラシコに向け、チームのムードはこれ以上ないほどに盛り上がっている。油断は出来ないが、ひょっとしたらひょっとしちゃうかもしれないクラシコ。楽しみで仕方がない。ビバ!
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