現リーガ王者としての誇りを捨て、亀になってもポイントを獲りにきたマドリーに、自力の違いを見せ付けての勝利。引きこもってきたチームを攻略しただけに、喜びもひとしおだ。
試合前、ペップ・グアルディオラはゴレアーダを期待する周囲の空気に対し、警戒を発していた。“マドリーはそんなに簡単に勝てる相手じゃない”。実際のゲームもペップが指摘したとおり、厳しいものとなる。マドリーが中小クラブのごとく、自陣に引きこもってきたのだ。勝てば官軍。マドリーらしいといえば、らしいともいえる。
4日前に新たに白組監督に就任したファンデ・ラモスにとって、まともにチームを熟成させる時間はない。採れる戦術は、とにかく守って速攻を決めることくらい。予想は出来ていたことだが、恥じらいもなくやってくるところは、ある意味さすがだ。キックオフ直後は、まだ前に出ようかという意思も感じられたマドリーだったが、バルサのプレスに手が出せないと分かると、さっさと守備を固めてくる。バルサに攻め勝てると思うほど、彼らはバカではなかった。
自陣で待つマドリーに対し、バルサはメッシを中心にして攻め込んでいく。これに対抗する白組の手段といえば、ファールファールファールである。フットボルの勝負では相手にならないので、反則を犯すことでどうにかしようとするその姿勢。悲しいもんだ。主審カンタレーホはそんなメッシに対し、救いの手を差し伸べない。ようやく最初のカードが出されたのは、20分を過ぎてのことだった。ただし、メッシに対するファールへのカードが出されるのは、28分。遅すぎる。
バルサはその頃までに、惜しいチャンスを4回ほど作り出していた。6分にはドリブル侵入から、16分にはエトーとの壁パスから、メッシがチャンスを演出。しかしこれらはカシージャスの攻守と、DFの必死のクリアによって防がれている。そして7分にはアンリがミドルシュートを放ち、18分にはアビダルが意表を突く突破からシュートに至っているが、ネットは揺らせていない。他にもプジョルやトゥレ・ヤヤがエリア内まで強引に突っ込むことで、守備網を崩そうと試みていた。
20分を過ぎた頃から、マドリーはカウンターから2回ほどバルデスを脅かす。24分、左サイドのドレンテが抜け出し、折り返しをスナイデルがダイレクトでシュート。これはバルデスが弾いてクリア。さらに26分にはスルーパス一発からドレンテがまたも抜け出し、今度はバルデスと1対1の状況となるのだが、エリア際にてバルデスが気合のシュート阻止。マドリーはほぼ最後のゴールチャンスを、活かすことが出来なかった。
そして30分頃からは再びバルサのペースに戻るのだが、決定的といえるほどにはマドリーを崩せてはいない。36分には、無理して出場していたスナイデルが負傷のため交代。お気の毒さまです。
後半になっても、マドリーは相変わらず扉を堅く閉ざすことだけに専念していた。シュスター時代末期は間延びしたライン間を簡単に狙われていた白組だったが、あれだけ引いて守れば、そう簡単にゴールは割られない。バルサはちょっと手詰まりといった感じ。メッシにもトップフォーム時のキレはなく、攻撃にもいまひとつアイディアを欠いていた。
そんな中、バルサは絶好のチャンスを手にする。68分、アルベスの浮き球パスに反応したブスケスがサルガドに倒され、ペナルティの笛が鳴るのである。盛り上がるカンプノウ、キッカーはエトー。なんとなく失敗しそうな空気が漂っていたのだが・・・こういう予感は当たるもので、カシージャスは横っ飛び一閃、このシュートを防ぐのだった。これで聖カシージャスは波に乗る。72分、エトーの強烈なミドルシュートをブロックすると、こぼれ球に詰めていたメッシの至近距離弾をも弾き返したのだ。明らかに、バルサにとっては嫌な流れだった。
このまま、小憎たらしいマドリーの守備戦術の前に、引き分けに終わってしまうのだろうか。そんなムードも漂い始めた試合終盤、いやいやいや!諦めればそこでゲームは終わるとばかりに、クラックたちが気を吐いた。それこそがクラックたる所以なのだが、まずは83分のエトー。チャビのふわりとした右コーナーをファーポストのプジョルが頭で落とし、エトーが太ももあたりだろうか、執念でボールを押し込んでみせるのだ。ついにきた先制弾!カンプノウは歓喜に沸いた。チームの喜びも爆発。苦労しただけに、とてつもなく嬉しいゴールだった。
ついにリードを許し、後のなくなったマドリーはここにきてようやく前に出てくる。しかしそれはバルサにとっては好都合。ロスタイムに突入していた92分、今度はバルサのカウンターからアンリが飛び出し、ここぞのタイミングで絶妙のパスをスペースに流し込む。そこにメッシが走りこみ、カシージャスとの1対1に持ち込むと、ほらよ、とボールをポーンと浮かせ、とどめの2点目を決めた。鮮やか!ポストに激突しながらもクリアしようとしたカンナバーロ、惜しくも間に合わず。メッシによる“やっつけた感”がより鮮明になった。
こうしてバルサは、亀マドリーを苦労の末に粉砕した。マドリーとの差は12ポイントに広がり、白組はほぼリーガにサヨナラを告げたといっていい。「カンプノウで勝利するのは不可能だ」。シュスターの言葉は、正しかった。王者のプライドを捨てても、1ポイントも持ち帰れなかったマドリー。ファンデ・ラモスさん、ベルナベウクラシコでまた会えますかね?次が本当の、リベンジの場です。バルサは来週も勝って、さらに首位を強固にしよう!バモス!
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