予想されたとおり、非常に厳しいゲームとなった。展開次第では、どちらに転んでもおかしくなかったところを、きっちり勝ってしまうところが、このバルサの素晴らしさだ。
前節2位のセビージャが引き分けたことを知ってのキックオフ。バルサは勝てば“冬のカンペオン”が決定し、ビジャレアルが勝てばバルサに6ポイント差に迫れるゲームだ。その差は大きく、序盤から両チームのモチベーションの高さがうかがえた。
バルサは今回もいきなり、ゴールチャンスを手にする。2分、狭い地帯でのパス回しからチャビのスルーパス。これにアンリが抜け出しシュートを放つも、これはGKディエゴ・ロペスが弾き返した。
ゲームはハイペースで進んでいった。両チームの選手たちによる、プレス合戦。寄せの速さ、こぼれ球の奪取率ではバルサがビジャレアルを上回ってはいたものの、彼らも守備陣形の建て直しが速く、決定的な場面は許さない。12分には左にいたエトーが送り込んだスルーパスにアンリが抜け出し、エリア内で孤軍奮闘しシュートを放つが、惜しくもこれは枠から外れている。
ペップの指示は、ビジャレアルの中盤を窒息させることだった。カソルラ、ピレス、カニらを自由にさせず、ロッシへとボールを回さない。基本的にこれは上手くいき、ビジャレアルは前半ロッシのシュート1本に抑えられているのだが、その1本が危険だった。20分、バルサの攻撃をしのいだ黄色潜水艦が徐々に勢いを取り戻し、カウンターからロッシがバルデスと1対1に。しかしイタリア代表は狙いすぎたのか、このシュートに失敗。好調時なら、入っていた可能性は高い。
バルサは27分、コーナーの跳ね返りをブスケスが豪快にボレーのミドルシュート。これはディエゴ・ロペスの好守によって阻まれている。また35分にはアンリのパスカット→カウンターから、ゴール至近距離正面でメッシとチャビがあわやという場面を作っているが、転がったボールはわずかにポスト左に逸れてしまった。
前半はそうして、両者ともにスペースを潰され、決定機を多く作れない(作らせない)まま0-0で終了している。バルサに真っ向から挑み、五分に渡り合ってくるビジャレアル。さすがだ。しかし後半、最初の45分とはまったく異なり、呆気ないほどに早くゴールが生まれる。47分のことだった。
センターライン付近のロッシから、最終ライン後方に一本の絶妙なパスが送り込まれる。これに反応したのが、カニ。バルサの守備ラインを単独突破すると、ゴールエリア右角あたりからバルデスの肩口を抜ける、気の効いたシュートを決めてみせたのである。
苦手とするスタジアムで、先制点を奪われてしまった・・・!昨年までもバルサなら、非常に厳しい状況といえる。だが今季のチームは一味違い、間髪いれずに反撃を開始するのだった。そのすぐあとの54分、アルベスのクロスにケイタが飛び込んで気迫のゴール。相変わらずケイタはヘディングが強い。そしていいタイミングでネットを揺らしてくれる。へんに意外性のある選手だ。
この同点弾で、ビジャレアルはいくぶんショックを受けたようだった。逆にバルサは攻勢に出る。そしてそのまま押し切ってしまうところも、素晴らしい。66分、今度はチャビのエリア侵入から繰り出された絶妙なセンタリングに、中央のアンリがダイレクトに左足であわせ、逆転に成功してしまうのだ。緩急をつけたチャビの突破、守備陣の急所を突くGKと最終ラインの間へのパス、そしてアンリの反応、シュートテクニック。高給取りたちの、高度なプレーによるゴールだった。
しかしその約10分後、バルサにとって想定外の事件が起こる。よく分からない判定により、ピケが2枚目のカードによって退場処分になってしまうのだ。ペップはアンリを下げ、カセレスを投入することで対応。これにより、ゲーム終盤はイエローサブマリンの攻撃をバルサが跳ね返す展開となった。
バルセロニスタが冷や汗をかいたシーンは、少なくとも2回。ギジェ・フランコとニハトがそれぞれバルデスと1対1となっているのだが、彼らはこれを決められなかった。前半のロッシと同じく、これがこのところ勝ちに恵まれていないチームというものか。いずれも決定的だっただけに、バルサは幸運だったといえる。そして簡単にピンチを作ってしまったことが、今後の修正課題だ。
とはいえ、鬼門と呼ばれるエル・マドリガルでの勝利は値千金。直接のライバルをことごとくなぎ倒したバルサは、ついに16節にして2位に10ポイントの差を築き上げることに成功した。この時点でリーガ13勝は、クラブ史上最高記録。これ以上ない形で、チームはクリスマス休暇に入っていった。
|