メッシが超絶に輝きを放った試合。リベンジに燃えるアトレチコを、敵地で粉砕した。
この日ペップ・グアルディオラは、大胆なローテーションを採用している。怪我や風邪などの影響もあったが、週末のマジョルカ戦に先発したバルデス、プジョル、マルケス、アビダル、チャビ、グジョンセン、フレブ、アンリ、エトーの実に9人が自宅で、あるいはベンチで試合を見守ったのである。しかしだからといって、その変更が気にならないのが今季のバルサの凄まじさ。まさにダブルチームだ。
国王杯の正ポルテーロとなっているピント、そしてピケとカセレスによる若きセントラルコンビの働きはお見事。守備の要であるプジョルとマルケスがいない、ということさえも忘れてしまうほどに、彼らの頑張りは光っていた。好セーブを何度かみせたピントも、グッジョブ!
この試合、バルサは幾分守備的にアプローチしている。中盤をトゥレ・ヤヤ、ケイタ、ブスケスで固め、イニエスタ、アルベス、メッシでアトレチコをかき回す作戦。この3人が同じチームにいるというのは、相手にとっては悪夢である。カンプノウでの6-1の雪辱を果たしたいと意気込んだアトレチコだったが、それも叶わず。バルサはコルチョネロたちにスペースを与えず、機を見てのスペクタクルな攻撃で圧倒した。
先制点はメッシだった。12分、エリア右角でのアルベスとのワンツー。ブラジル人ラテラルはロナウジーニョばりのヒールパスを送っているのだから、実に心憎い。メッシはフリーでボールを受け取り、詰め寄るGKクペの動きを見て、冷静に足元に鋭いシュート。悪魔的なコンビによる、ゴラッソであった。
そして最近、徐々に存在感が増してきているのが、セイドゥ・ケイタだ。守備面での汚れ仕事をきっちりとこなしていく一方で、チャンスとあれば積極的に前線に顔を出し、得点機に絡むケイタ。今回はネットを揺らすことはなかったのだが、前半に2回ほど惜しいチャンスを演出している。
後半になっても、試合の流れは変わらなかった。バルサがゲームの主導権を握り、55分にはトゥレ・ヤヤのクロスバー直撃ヘッド弾でスタンドを沸かせる。そしてその1分後、試合に大きな影響を及ぼすプレーが発生した。アルベスの深い位置からのクロス、ファーに飛び込んだメッシを後ろから倒したとして、ヘイティンガが赤紙一発退場。宣告されたペナルティをメッシ本人が悠々と決め、スコアは0-2となったのである。
2点差をつけ、しかも相手は10人。こういう状況は、むしろ逆によろしくないことが起こることが多い。知らずの内に、少しばかりガードは緩んでしまうのだろう。案の定、68分、右コーナーからウイファルシにフリーで頭で合わされ、1点献上。スタジアムはにわかに盛り上がる。アトレチコも元気を取り戻した。
だがそれも、そう長くは続かなかった。アトレチコがバルサゴールに迫った78分、その直後、逆にとどめとなるゴールをメッシが突き刺してみせたのだ。まずは右サイド、低い位置でボールを受けた彼は一気にドリブル開始。得意のコース取りでひょいひょいとデフェンサをかわし、ペナルティスポット前から左脚を振り抜いている。このシュートは惜しくもクロスバーに跳ね返されるのだが、波状攻撃は終わらない。その後ボールを受けたイニエスタが必殺キープで守備陣の注意を集中させ、ここぞのタイミングでエリア中央に一人でいたメッシに完璧パス。メッシは詰めるクペをひらりとかわし、無人のゴールにポン、とボールを放り込んだ。グレイト!!
メッシはその2分後にペドロと交代しベンチに下がるのだが、ここでまたひとつのエピソードが誕生する。あまりにも見事なクラックのプレーを称え、ビセンテ・カルデロンの観客たちが大きな拍手を送ったのだ。3年前、ベルナベウがロナウジーニョに降参の拍手を送ったように。
そうしてコパ1/8ファイナル第1戦は、1-3で幕を閉じた。バルサの勝ち抜けを、とてつもなく有利にする大きな一勝。しかもそれを、メンバーほぼ総入れ替えのチームでやってのけるのだから強烈だ。1週間後、カンプノウでの第2戦。油断することなく、さらに気持ちいい試合を決めてほしい。このバルサなら、コパも獲れてしまいそうな気配がぷんぷんだ。
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