開幕戦で喫した唯一の黒星の借りを、数倍にしてヌマンシアにお返しした。
前日の会見で、ペップはこう語っていた。「ゴレアーダはない。骨の折れる、きつい試合になるやろう」。結果的に、この監督の予想は半分だけ的中したことになる。この日のヌマンシアも開幕戦同様、非常にタイトな守備でバルサを苦しめた。だが持ち堪えられたのも、48分まで。その後はバルサの怒涛の攻めに、失点を重ねることになる。
特に意識はないのだろうが、この日のスタメンはロス・パハリートスで敗れたメンバーの再現だった。違いは怪我のマルケスに代わり、ピケが入ったことだけだった。ヌマンシアの狙いはハッキリしていた。エリア前に組織だった網を張り、ボールを奪ってのカウンター。ゲーム序盤、これはよく機能していた。
最初のビッグチャンスはヌマンシア。左サイドからの絶妙クロスに、デル・ピノが頭で合わせ、ネットを揺らすのである。しかしこれはシュートの際にイニエスタを突き飛ばしていたとして、ファール判定。微妙なジャッジだった。ヌマンシアはこれが、前半最大の見せ場となる。
前半が半ばを過ぎる頃から、バルサは徐々にペースを上げてきていた。カギとなっていたのは、チャビとイニエスタのコンビネーション。組織的に守る守備陣形の、ここぞのスペースを彼らはガンガン突いていった。しかし27分のピケのシュートも、34分のメッシから始まる波状攻撃も、36分のイニエスタのバセリーナも、ことごとくヌマンシアの身体を張った気迫ディフェンスに跳ね返される。GKファン・パブロを始め、とてもよく守り通していた。
そうしてゲームは0-0のまま、ハーフタイムを迎えることになる。なかなかに楽しい45分だった。
後半、先制点は呆気なく訪れる。49分、イニエスタのパス展開からダニ・アルベスがエリア内に侵入。上手くボールをコントロールし、最後は頭で送り込んだパスを、ニアポストに詰めていたメッシがちょこんと角度を変え、逆サイドに流し入れるのである。そのシュートセンス、並ではない。もっとも困難といえる先制点を手に、バルサは怒涛の攻撃を開始する。
追加点はあっという間に訪れた。52分、オフサイドラインぎりぎりのところからイニエスタのパスを受けたエトーが抜け出し、ファン・パブロと1対1からズドンと一発。デフェンサのチェックも、ポルテーロの寄せも、ものともしない力強い得点だった。しかし、イニエスタはよくもこんなところにパスを出すものだ。
2点リードとなり、バルサの楽勝ムードが漂う。だがここで、ヌマンシアが意地を見せた。60分、エリア正面右からのフリーキックを、バルケロがゴール右角に突き刺して見せるのだ。スピード、カーブ、コース、どれを取っても素晴らしいシュート。バルデスのジャンプも、あと数センチ届かなかった。ゴラッソ。
もちろん、この時間帯のチームの雰囲気を、ペップは気に入らない。ライン際から大声で檄を飛ばし、選手たちはそれにすぐさま応えた。このあたり、しっかりしている。
70分、バルサは再びヌマンシアを突き放す。メッシが悪魔ドリブルで右から中央へ切れ込み、守備陣の注意を引き付けておいて、ここぞでアンリへとパス。アンリは振り向きざまに鋭くシュートを放ち、ボールは右ポスト脇に転がり込んだ。ヌマンシアの抵抗もここまでだった。
試合はすでに決していたが、バルサは攻撃の手を緩めなかった。その5分後、メッシの破壊的個人技が炸裂する。左サイドに位置したイニエスタからのボールにエトーが抜け出し、深い切り替えしからシュートを放つも、これはヌマンシアがブロック。しかしボールはもう一度エトーが拾い、中央にいたメッシへと送り込む。ここでメッシは何がなんだかよく分からないボールコントロールから、無人のゴールにシュートを流し込むのである。デフェンサとファン・パブロが途中、2回ボールに足を当てているのだが、跳ね返りが全てメッシの懐に収まる。そして単独突破。理屈はいらない、それがメガクラックだ。
ヌマンシアは80分、パラシオスが2枚目のカードで退場となり、さらに厳しい状況に追い込まれる。そしてバルサは容赦なく、最後の笛がなるまで貪欲に追加点を狙っていく。ボージャンやフレブら、野心に燃える選手を送り込むなど、ペップの采配もモチベーションを刺激していた。特に熱かったのは、サムエル・エトー。だが今日の彼は少々力んでいるところも見られ、2度ほど決定機を逃している。場合によれば、6-1あたりにもなっていただろう。
こうして今節も、バルサはがっちりと勢いをキープ。ヌマンシアへのリベンジも果たし、“どうしようもない感じ”は日々強力になっている。ライバルは過去の記録たちのみ、といった様相だ。
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