非常に厳しいゲームとなった。フエラでは、苦戦することが増えてきている。
大方の予想通り、ボール支配はバルサだった。割合で言うと、7対3。ほぼ一方的に、バルサがパスを回している状態だ。しかし例によって、それはゲームを支配していることを意味しない。
この日ペップは、先日のコパでフル出場のメッシをベンチに置き、イニエスタを右で起用していた。だがイニエスタは右に居座ることはなく、主にメディアプンタ的にプレー。それゆえか、右で溜めがない分、アルベスの攻め上がる場面が見られなかった。雨による重いピッチ、中2日による連戦の疲れの影響も出ていたようだ。
ラシンの攻めは、堅く守ってのカウンター。中盤から最終ラインでの、ここぞのタイミングでのプレスは速く、バルサの中盤は思うようにボールが展開できない。何度か、左のアンリにボールが出ることはあったが、それ以上にチャンスは作り出せず、エトーにはパスすら回らない有様だった。前半のバルサのシュートは、フリーキックによる2本のみ。そのことからも、いかに前半のバルサが機能していなかったかが分かる。
前半最大の見せ場は、11分、ペレイラがマルケスのラインを突破し、角度のない地点から鋭いシュートを放った場面。これはバルデスがコースを塞ぎ、その後でポストに弾き返されている。試合を通じ、ペレイラのスピードある突破は非常に効いていた。ラインを破られること数度。バルサ守備陣は、ラシンの速さに手を焼いた。
そうして0-0のまま、楽しくない前半は終了する。
後半、最初からの選手交代はなかった。ゆえにゲームの展開も、変化はない。注目は、どこでペップが機能していない中盤と右サイドに修正を加えてくるかだった。しかしその前に、ラシンのカウンターがバルサに牙をむいた。
54分、必殺のカウンターからまたもペレイラが抜け出し、マルケスが堪え切れずにスライディングタックル。これがカードとなり、痛恨のペナルティを献上してしまうのだ。これをジギッチが落ち着いて決め、ラシンが先制に成功する。
このままではヤバイ。リーガ通算5,000ゴールだ、なんて気楽なことを言ってられない状況に追い込まれたバルサ。ペップはここで、迷うことなくメッシをピッチに送り込んだ。イニエスタは、居心地のいい中盤へ移動。これでチームは、ようやくスムーズに動き始める。
アルゼンチン人クラックは、いきなり強烈な輝きを放った。55分、左サイドのアンリからのクロスを、ニアに詰めていたチャビがヘッド。これは惜しくもクロスバーに阻まれるのだが、そのこぼれ球をメッシが流し込み、いとも簡単に同点に追いついて見せるのだ。さすが、世界一違いを出せる男。彼にしては珍しい、右足のシュートだった。
勢いに乗れば、バルサは強くなる。ここからのしばらくは、バルサの時間帯だった。ラシンは自陣に押し込まれ、自慢のカウンターも思うように繰り出せない。彼らは防戦一方となった。69分、ピッチにはお騒がせ男ジミー・ジャンプが乱入。
そして81分、伝説の瞬間きたる。チャビとエトーが試みたワンツーはデフェンサに阻止されるのだが、その浮き上がったボールをメッシは走りこみジャンプしながら胸でトラップ。空中で足をかけられ、バランスも崩れていたのだが、着地するや否や、またも右足を豪快に振りぬき、左サイドネットにシュートを文字通り突き刺した。超絶ゴラッソによる通算5,000ゴール!!アンビリーバボー!!!
バルサはこのゴールによるリードを守り抜き、そのまま1-2で勝利している。しかし試合はただでは終わらない。89分にマルケスが、92分にはピケがそれぞれ2枚目のカードで退場となっているのだ。いずれも意地を見せようとしたラシンの、カウンターを防ごうとしてのファールからだった。ピケの場合は1枚の目のカードが意味不明だっただけに、この退場は痛恨。おまけにアルベスが累積警告5枚となり、次節出場停止。プジョルも怪我で、非常にヤバイことになってしまった。ボルバラン主審の、ご乱心。
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