この日のバルサは、出足が悪かった。平日の寒い夜、スタンドは半分ほどしか埋まらない。それでやる気が出ないわけじゃなかろうが、序盤はパスミスが目立ち、マルケスから苦し紛れのロングパスもしばし見られていた。
バルサのボール支配は明らかだった。警戒するマジョルカは、ほとんど自陣から出てこない。だがボールを持てても、チャンスを作れなければ、あまり意味はない。最初の決定機は8分、ボージャンの個人技によるものだったが、これはシュートが不発。バルサがリズムに乗り出すのは、25分を過ぎた頃からとなる。
27分にはトゥレ・ヤヤが惜しいヘディングシュートを放ち(GKルクスが好セーブ)、29分にはアンリとのコンビネーションから放たれたイニエスタのシュートが、わずかにポスト左。そして34分、先制点の瞬間が訪れた。我らが“コパの王子様”ボージャンによる右からのクロスを、アンリが頭で合わせ、マジョルカゴールにねじ込んだのである。
ペップは後半、さらにリードを広めようとしていた。後半開始と共にメッシ、ブスケツにアップを命じ、54分には2枚同時交代。グジョンセン、そして殊勲のアンリを下げ、彼らを送り出した。大拍手で応える、スタンドのファン。ペップにしては珍しい采配である。
メッシが入ることで、バルサのリズムは変わっている。いろんな意味で、影響力のでかい選手。彼がいることで、チャンスは目に見えて増えるのだ。63分にはイニエスタとのコンビネーションから、65分には個人技の突破から好機を演出。71分にも、惜しい場面を作り出している。
しかし追加点はメッシでもボージャンでもなく、アステカの皇帝マルケスだった。72分、イニエスタがもらったエリア正面でのフリーキックを、豪快に突き刺してのゴール。壁の上を越え、ルクスのジャンプ空しく、ボールはゴール左隅にズバッと決まった。
2-0となったことで、バルサはアクセルを緩めた。3点目を狙うよりも、無失点で切り抜けることを選択。3-1よりも、2-0で上等だ。マジョルカはなんとか一矢報いようと攻撃的な選手を送り込むが、バルサはそれをのらりくらりとかわす。結局、マジョルカには決定機を許すことはなかった。
試合はそのままのスコアで終了。1ヵ月後、ソン・モイシュでの第2戦が残ってはいるものの、両チームの状況からすれば、バレンシアでの決勝行き切符を半分以上手にしたのは間違いない。過去2年のような失敗をすることもないだろう。次も気を引き締めていけば、大丈夫。この調子だ。
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