代表戦ウィークでの、チームとしての準備がまったく出来なかった試合。それを言い訳にはしたくないというのはペップ・グアルディオラの弁だが、やはり愚痴のひとつくらいは言いたくもなる。代表戦の影響から、メッシ、アンリ、マルケスの3人をベンチに置かざるを得なかったからだ。それによって出番が回ってきた選手たち、フレブ、ケイタ、カセレスは、チャンスとはいえ求められるものは大きかった。
ゲーム序盤は、明らかにベティスのペースだった。4分にはいきなり、えぐいピンチを作られる。遠い位置からのフリーキック、クリアできなかったところをファニートに抜け出され、センタリングを中央にいたオリベイラに至近距離から合わされたのだ。これはケイタがライン上でどうにかクリアしたのだが、半ばオリベイラのミスといっていい。バルセロニスタは、肝を冷やした。
バルサは例によって、ボールは保持していた。しかし攻めにこれといったアイディアが感じられない。ボール回しに、ほとんどバルサ流のリズムがないのだ。
この日のベティスは、実に効率的だった。少ないチャンス、セットプレーを非常に有効に活用していた。先制点はコーナーキックから。密集地帯からやや離れた位置にいたメッジが、ブスケとの空中戦を制し、完璧なヘッドを決めてみせたのである。興奮に湧き上がるルイス・デ・ロペラ。前節に引き続き、セットプレーからの失点だった。
そしてさらに24分、バルサはエトーのミドルシュート、チャビとイニエスタのワンツーによっていくばくかベティスゴールを脅かした後、またも失点を喫してしまう。今度も、セットプレーからの一連の流れだった。左遠方からM. ゴンサレスが蹴ったボールは右へ流れるのだが、これを拾ったセルヒオ・ガルシアが再びクロス。これが今度は左のM. ゴンサレスへと再度渡り、胸トラップ後に左足ボレーをゴール右隅へと突き刺されてしまうのだった。
前半のバルサは、左エストレーモを務めていたイニエスタが、孤軍奮闘していた。右サイドのフレブにまったく存在感がなく、可能性はイニエスタ発でしか感じられない状況だった。何度も何度も、ドリブル突破やアビダルとのパスによってベティス守備陣形を崩そうと試みるアンドレス。踏ん張るベティス。そしてそのまま2-0でハーフタイムかと思われた前半ロスタイム、美白カンテラーノの努力は報われた。ドリブル突破を試みたイニエスタが倒され、イトゥラルデ・ゴンサレス主審はペナルティを宣告したのである。
キッカーはエトーだった。なんとなく、外しそうな予感。そのクレの予感は的中し、最初のシュートはGKリカルドによって弾かれる。しかしそのこぼれ球をエトーが拾い、執念で押し込んだ。2-1。プレゼントされた感のあるゴールではあったが、精神的にはとても大きな得点となった。
そして後半、ゲームの流れが前半と大差ないと判断すると、56分、グアルディオラはさっさとフレブ&ケイタをベンチに下げ、メッシ&アンリを送り込んだ。ちなみに50分には、ベティスの鮮やかなカウンターからのオリベイラのゴールが明らかなオフサイドで無効となったりもしている。前がかりのバルサに、ベティスのカウンターがよく効いていた。55分にも、危ない場面があった。
トリデンテがそろい踏みしてからは、基本的に圧倒的なるバルサペースだった。やや疲れたか、ベティスは自陣に張り付け。チャビとイニエスタが自在にボールを展開し、メッシとアンリ、アルベスらでスペースをどうにかこじ開けようと試みた。惜しいシュートも連発。65分から70分にかけては、いつ同点になってもおかしくはないほどにバルサの攻勢は迫力があった。ただ、リカルドと守備陣が気合で踏みとどまるのである。
逆に72分、バルサはあわや3-1というシーンを作られている。ファンデ→セルヒオ・ガルシア→オリベイラと簡単にワンタッチで縦パスをつながれ、バルデスと1対1にされてしまうのだ。しかしあまりの絶好機に焦ったか、オリベイラはこれに失敗。バルデスは思いのほか簡単に、シュートを弾き返している。
攻めるバルサ、守るベティス。時折繰り出される、高速カウンター。疲れでミスは見られたものの、動きの大きい、面白みのあるゲームは続いていた。そして残り10分となり、ペップはどかんと勝負に出た。ブスケを下げ、ボージャン投入。プレーは基本ベティス陣内だったので、パワープレーを仕掛けたのだ。勝ちを諦めない姿勢が、そこには表れていた。
それにボージャンを入れるのにエトーを下げなかったことが、すぐに結果となってしまうところなど、ペップは非常に引きが強い。その3分後の84分、エトーが個人技から同点弾をぶち込んで見せるのだ。チャビからの深い縦パスをエリア際正面で受けたとき、エトーはゴールを背にしていた。しかしそのまま反転しつつ上手く右方面へ回り込み、背負った3人のデフェンサたちをものともせず、ゴレアドールはベティスゴールを陥落させてしまうのだった。
その時点まで、リカルドは狂い咲きといっていいほどに当たっていた。アンリ、メッシ、ピケ・・・普通なら入っていておかしくないようなシュートを、阻まれたシーンは幾多。そのリカルドがこの日、唯一止められなかったのがエトーだった。なんだかんだで、2得点、このエトーの決定力は恐るべし。その後もバルサのパワープレーは続いたが、追加点は訪れることなく試合終了となった。
こうして、バルサの連勝は10でストップ。やはり、マヌエル・ルイス・デ・ロペラはバルサにとってしんどいスタジアムだった。しかし負けていた可能性が高いこのゲームで、引き分けられたのもバルサの諦めない姿勢が生んだもの。長いシーズン、敵地でポイントを落すことがあっても不思議はない。1ポイント拾えたことを、今回は前向きに評価しよう。
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