ゲーム直前にプレー許可が下りたプジョルをベンチに置き、ブスケではなくケイタを中盤で起用した以外、ベストと呼べる布陣をペップ・グアルディオラは採用してきた。リヨン戦に向けての、主力温存はなし。このデルビーにかける監督の意気込みが窺える。
バルサの出足は、いつもどおりだった。前線からのプレスによってエスパニョールを窒息させ、自慢のトリデンテへボールを回す。これに対しエスパニョールは、とにかくエリア周辺の守備を固め、隙あらば速攻を狙う作戦。当然の帰結としてバルサがボールを支配し、ペリコ陣内にてほぼ全てのプレーは展開されている。
しかしイニエスタの不在が効いたか、あるいはチームとしてのコンディションの低下か。バルサはエスパニョールを有効に攻めることが出来ない。どうもリズムが単調であり、チャンスと呼べるものはほとんど訪れなかった。唯一惜しかったといえるのは、13分、チャビとの大きなワンツーで抜け出したメッシがライン際で折り返したボールを、逆サイドのアンリが頭で合わせた場面。だがティティのシュートは枠を捉えていない。
時間の経過と共に、エスパニョールのファールは増えていった。バルサから冷静さを奪うのが狙いだったろう。多くのファールはいささか激しかったし、それによってゲームは徐々に荒れた空気になっていく。それを確実に助長していたのは、主審デルガド・フェレイロだった。久々に見る、ゲームをぶち壊すタイプの審判。ペリコたちのファールはことごとく見逃され、彼らは時間稼ぎ&苛立たせの手段として存分に利用した。
そして37分、試合の流れに甚大な影響を及ぼすカードが繰り出される。首都系メディアからしても、厳しすぎるという見解の赤紙が、ケイタに対して示されたのだ。そんな理不尽なるカードによって、バルサは数的不利な状況に追い込まれた。エスパニョールはこれでもかとアンチフットボルを実行し、それを審判が後押しする。酷いことである。
後半、ケイタ退場によって手薄になった中盤を補強すべく、ペップはハーフタイム明けから動いた。アンリを下げ、ブスケを送り出したのである。しかし監督の計算とは裏腹に、後半はバルサにとって最悪の展開でスタートしていった。わずか10分のうちに、デラ・ペーニャにあっさりと2点を奪われてしまうのである。
1点目は49分、バルサエリア左に侵入したネネーに多くの意識が集中してしまう中、クロスを上げられ、逆サイドにいた“リトルブッダ”がフリーでヘディングシュート。実に何年ぶりだという復活ゴールを献上すると、2点目は54分、バルデスから有り得ないプレゼントパスを受け取ると、それを美しくバセリーナで決めて見せたのだ。ペリコはこの日2本のシュートで、2点獲得。デラ・ペーニャ様々である。
ベティス戦に続いて、またも2点を追う展開。しかも今度は、10人。これはもう、さすがに厳しい状況である。フットボルの神様はどこまでも、バルサに試練を与えてくださるものだ。だがここから、バルサの必死の反撃が始まった。このあたり、ペップバルサの非常に好感が持てる美点。決してタオルを投げず、最後まで勝利を目指すスピリットに、バルセロニスタは痺れさせられる。
気迫が通じたのだろう。逆襲のゴールはすぐに訪れた。62分、メッシが蹴ったフリーキックのこぼれ球を、エリア右方面にいたトゥレ・ヤヤが思い切り蹴りこみ、1-2。時間帯もよく、さあこれから同点、逆転だ!の期待は大いに持てた。実際、バルサは少しずつカメニを脅かしてはいたのだ。
ペップは65分にエトーを下げ、グジョンセンを投入している。驚かされたのは、それに伴いセルヒオ・ブスケがデランテロ・セントロの位置に収まったことである。アルベスや中盤からのボールに、ポストとなるためだった。しかしこの試みが、上手くいったかといえば、そういうわけでもない。ボール展開にアイディアがなく、放り込みに終始してしまったペップバルサ。エスパニョールは相変わらずファールを繰り出し、あるいはなんだかんだで地面に転がり続けていた。
ゴールへの執念は、感じられた。しかしゴールが決まる予感は、薄れていった。放たれるのは単純なシュートばかりであり、デルビーで花咲くカメニの壁はそんなことでは揺るがない。審判は最後のダメ押しとしてロスタイムを3分しか示さず、バルサはそのまま力なく終了の笛を迎えた。嗚呼なんて悔しい、開幕戦以来となるリーガでの黒星。
不満は多々ある。しかしこの結果は決して覆ることはない。今チームがなすべきことは、絶対に首を垂れることなく、落ち着いて次の試合に勝利することだ。まだ2位との差は7ポイントある。嫌なムードではあるが、焦る必要はどこにもない。
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