この試合、ペップはいきなり怪我から復帰したばかりのイニエスタを先発で起用している。代わりに、このところ出ずっぱりだったデランテロ三人衆はベンチスタートだった。ゲームの最初の見せ場は、そのイニエスタによるものだった。ピッチ中央付近でボールを受けると、猛然とドリブル開始。守備陣をさらりとかわし、エリア内へと侵入していく。しかし彼のシュートは、GKルクスに防がれ得点には至らなかった。これが決まっていれば、勝負は早々についていたのだが。
バルサの出足は良かった。しかし、その後がまったく続かないのだ。強い逆風(前半)も災いしてか、どうもプレーがしっくりいかない。マジョルカの攻めに迫力はさしてなかったが、トゥレ、ケイタ、ブスケによる中盤ではいまいちボールは回らず、前線の動きももうひとつ。チームとしての連動性はなく、前半は最初のイニエスタ以降、チャンスらしきものは作れないままに終わっている。
一方のマジョルカも、アランゴが特にこれといって脅威的でもないシュートを2本ほど放ったくらいで、他にはこれといった見せ場もなし。いわゆる凡戦であり、ゲームはそのまま0-0でハーフタイムに入ると思われた45分、バルサは突然、交通事故のようなゴラッソを叩き込まれるのである。エリア正面やや左からカストロが豪快に左足を振りぬき、獰猛なるシュートがゴール左角に突き刺さった。誰もが予想だにしないゴールだった。
このゴールは、心理的に非常に大きな意味を持っていた。あと一点決めれば、延長戦へ持ち込むことが出来るとマジョルカが希望を見出し、バルサゴールに襲い掛かるのである。後半は序盤から、バルサにとってピンチの連続だった。
49分にはウェボのゴールが、オフサイド判定となって取り消される。悲鳴を上げたクレは、そのジャッジに胸を撫で下ろした。しかしその1分後、クロスボールに対応しようとしたカセレスがエリア内でファールを犯し、赤紙で一発退場。ちょっと突入が強引すぎた。ペナルティが宣告され、バルサは絶体絶命のピンチを迎えるのである。
だが、ここでチームを救ったのはピントだった。マルティが中央へ蹴りこんだシュートを、残した足で気合一発弾いてみせたのだ。グッジョブ、ピント!!
ビッグチャンスを逃したマジョルカは、それにて幾分意気消沈したようだった。しかしカセレス退場はバルサにとって痛手であり、勝利への道が厳しいものとなったのは間違いない。54分、ここでペップは怪我明けのイニエスタをお役御免とし、マルケスを送り込んでいる。さらに4分後にはボージャンを下げてメッシを投入。前線にはフレブ一人が残った。
メッシが登場したことで、バルサのプレーにはちょっとした変化の兆しは見えていた。とはいえ、まだ希望を抱くにはもう一押しが足りなかった。それが訪れたのは63分、メッシへのファールでホセミが2枚目のカードをもらい、退場となった瞬間である。これにて、バルサの数的不利は解消された。続くアルベスの放った強烈なるフリーキックを、ルクスが辛うじてセーブしている。
決勝へ進むためには、マジョルカは前に出る必要があった。しかも10人対10人である。当然、スペースは生まれる。そしてこの日のメッシは、過去数試合に比べ好調な様子。となれば、彼が仕事をするであろうことを、予想するのは難しくなかった。実際、メッシはそれをやってしまうから素晴らしい。
81分、メッシはデフェンサの致命的なエラーによってボールをゲットした。ピケがスペースへ放り込んだパスをラミス?が自ゴールへと向けて送ろうとして痛恨のキックミス、それをメッシがカットし、まんまとルクスと1対1の場面を手にしたのである。そして完璧なるバセリーナにより、マジョルカゴールを陥落せしめるあたり、心憎いクラック。スコアは1-1となり、マジョルキンたちの夢はこれにて費えた。
残り10分ほどで、3点を入れる力はマジョルカにはもちろんない。足の震えがようやく止まったバルサは、残り時間をコントロールし、試合はそのまま終了した。これにて、バルサは5月13日バレンシアでの決勝戦を戦う権利を手に入れた。相手はアスレチック・ビルバオである。共にコパ優勝回数24回を誇るクラブ同士の対戦。楽しくなりそうだ。
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