ゲームは序盤、中盤での制圧権競争だった。バルサもリヨンも中盤で圧力をかけ、非常に狭いエリアをボールが行き来する。バルサとしては、あまり落ち着かない状況だ。しかし10分を過ぎる頃から、主導権は徐々にバルサへと移っていく。機械仕掛けのバルサが、いよいよ機能し始めるのである。
皮切りとなったのは14分、チャビのフリーキックだった。これは惜しくも壁によって弾かれるが、15分にはイニエスタとエトーによる絶妙のコンビネーション、さらには16分のイニエスタ・アンリ・チャビとパスを展開しての→イニエスタシュート、というふうにチャンスは続いていく。そして24分からは、盛大なるゴールショーのスタートである。
最初のゴール主はアンリだった。ピッチ中央手前でボールをカットしたマルケスから、リヨンのライン裏へと絶妙のパスが出る。これにアンリが反応し、一気に抜け出してゴールを陥落せしめた。スピードに乗った、アンリらしい得点だった。さらにティティは3分後の27分、2点目をゲット。ゴール正面エリア際のチャビからのパスを受け、上手くオフサイドをかいくぐってネットに突き刺した。
合計スコア3-1となり、バルサは勝利へ大きく前進。だがフィエスタはまだ終わらない。39分、3点目の主はレオ・メッシだった。右サイドにて大きな展開のパスを受け取ったメッシが、そのままドリブル突進。デフェンサをひらりひらりとかわしてエリア内に侵入すると、エトーとの壁パスを経て、ゴール正面でフリーに。その隙を見逃さず、ズバッとゴール左隅へとボールを流し込んだ。一気加速の爆発力は圧巻!
となれば、あとはあの人であり、あの人はその期待に応えてくれた。42分、左サイドのアンリからのパスを受けた中央のエトーが、ワンタッチでさくっとマークを外す。この時点で、エトーはGKと1対1。そしてペナルティスポット地点から、どうだとばかりに右足を振り抜いた。諦めず、ゴールをしつこく狙い続けたご褒美だ。ゴール後、ピッチサイドにて何故だか警官風に敬礼。隣でアンリがマネをする。4-0。合計スコア5-1。勝負は決まった。
しかしハーフタイム間際の43分、右コーナーからあっさりとマクーンにヘッドで1点返されてしまうのはバルサらしいといえるが、いただけない。マンチェスター、チェルシー相手なら致命傷となりかねず、対セットプレーは修正課題であり続ける。
さらにハーフタイム明けの48分、バルサは追加失点を喫してしまう。右サイドのデルガドが競り合いでイニエスタを押し倒したあとのセンタリングを、ファーサイドのジュニーニョにフリーで決められてしまうのだ。ピケが股を抜かれ、懸命に足を出したマルケスが逆に絶妙のアシストになるなど不運はあったが、言い訳にはならない。
前半で圧倒的なリードを手にしてしまったバルサは、アクセルを緩めてしまっていた。逆にリヨンは2点を返したことで息を吹き返し、逆襲を仕掛けてくる。同点に追いつければ、リヨンはフエラゴールで勝ち抜ける。彼らは、総力で攻撃に出てきた。それに応じて、リヨンのファールは相当な数に上っていく。後半だけで、リヨンのファールは18、カードは5枚。逸る気持ちは分からないでもないが、これはダメだ。
あたかも、数週間前のデルビーで見たような光景。バルサは再び、相手の罠に落ちる可能性もあった。しかし、同じ轍は二度と踏まない。ピッチサイドでグアルディオラは指示の声を張り上げ、それが功を奏したか、選手たちは徐々に冷静さを取り戻し、ゲームに集中していくのである。これ、成長のあと。
実際、リヨンは攻勢に出るもファールでプレーを止めるだけであり、シュートは1本も打ててなかった。そしてバルサが落ち着くと、脅威を感じさせることもなくなっていく。決定機を作ることはなかったが、主導権はバルサが確保。82分には唯一、エリア内でベンゼマにシュートを放たれる場面があったが、ヒヤッとしたのはこれだけだった。
そしてゲームも終了という94分、途中出場のケイタがフィエスタを締めくくる。チャビからのスルーパスに抜け出し、勢いに乗って前に出てくるGKも突破、倒れながらもシュートを枠内に放り込んだのである。後半の序盤はグダグダだったが、終わりよければ気持ち良し。カンプノウは大いに湧き上がり、最高のお祭りに大喝采を送った。
チームとしてのポテンシャル、クラック力を見せ付け、バルサがリヨンに圧勝。1/4ファイナルへの切符を順当に手に入れた。スランプムードはすでに霧散。復調を印象付けたバルサが、シーズン終盤に向けてギアを上げている。さあ、次のライバルはどこのチームだ。
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