なんてすごいんだろうか、このバルサは。カンプノウにドイツの雄バイエルンを迎えてのチャンピオンズ第1戦は、一方的なゲーム展開によって4-0勝利。セミファイナル進出をほぼ決定付けた。勝ちはするだろうとは思っていたが、まさかここまでとは・・・。
翌日のスポーツ各紙には、ペップバルサの偉大さを称える記事が溢れかえるだろう。どれほどの形容詞が与えられるかは、想像もつかないほどだ。全ての選手たちが有機的に結合し、織り成す良質のフットボル。観て楽しく、そして強い。こんなチームが過去、どれだけ存在しただろうか。
試合の立ち上がりは、予想されていたよりも静かだった。攻撃的にいくぞ宣言をしていた両チームではあったが、5分ほどは様子を見るようにボールを進めていく。だがバイエルンがさほど激しくこないと見るや、バルサはガンガン攻めていく。その兆候は5分、斜め方向の飛び出しで守備ラインを突破したアンリに現れた。GKブットを抜き、無人のゴールへシュートを放つアンリ。ただ、このシュートは弱く、寸でのところでデミチェリスにクリアされている。
これはその後に起こるお祭りの、序章にすぎなかった。アンリが行った斜め移動と、そこを狙ったスルーパス。これが実に効果を発揮し、バルサは次々とチャンスを作り出していく。先制点は9分、イニエスタがドリブルで切れ込み、エトーが注意をひきつけて右のスペースへ粋なスルーパス。あとはフリーのメッシが、悠々と流し込むだけだった。
さらに12分、カウンター気味の攻撃から、イニエスタ、チャビとつないでメッシにボールが渡る。ここで“10番”は中央に向かいドリブルを仕掛け、頃合いを見計らって斜め移動のエトーへスルーパス。オフサイドぎりぎりだったが、抜け出したエトーが冷静にブットを股抜きシュートで攻略し、早々と2点のリードを奪い取るのだった。
その少し後の16分、ちょっとした事件が起こる。主審ウェッブが、かなりペナルティくさいメッシへのファールを、逆にシュミレーションだと判断。メッシにカードを提示したことにペップが異様に腹を立て、執拗な抗議の末、退場処分を受けてしまうのだ。ペップは残り時間、スタンド(ベンチすぐ後ろ)から試合を見守ることになる。
ただ、指揮官の不在もバルサを凹ませることはなかった。むしろその逆といえるだろう。バルサはその後も攻め続け、38分には勝負をほぼ決定付ける3点目をゲット。アンリが左サイドをえぐり、そのセンタリングにメッシが果敢に飛び込んでのゴールだった。デフェンサたちに囲まれながらも、負けじとボールに向かって滑り込む執念。お見事!
そしてその5分後、今度は右サイドのメッシがドリブルで中央へ切れ込み、アルベスとおしゃれなワンツー。メッシは直後にファールで潰されるのだが、ポストとなったエトーからボールを奪おうとしたバン・ボメルのクリアがアンリへの絶妙なパスとなり、ティティは難なくこれをネットに突き刺した。4-0。なんてスペクタクル!カンプノウはお祭りムードに湧き上がった。
夢の45分で十分すぎるアドバンテージを奪ったとなれば、残る45分は失点をせぬよう、じっくりとボールを回していればいい。注意すべきは集中力の欠如による凡ミスだけであり、チャンスがくればゴールを狙っていけばいいだけである。バイエルンはこれ以上の失点は防ぐべく、守りを整えていた。そこからのカウンターにより、4-1を目指す作戦。リベリーが前線で一人気を吐いていたが、脅威とはならなかった。
バルサ守備陣にとっては、予想外に楽な試合だった。唯一危なかったのは、70分、カウンターからゼ・ロベルトがあわやバルデスと1対1になるか、という場面。だがこれはプジョルの絶妙なるチェックにより、事なきを得ている。さすがはカピタンである。
バルサには後半もそれなりにゴールチャンスはあったが(イニエスタはやはり良い!でもシュートは入らない!)、前半ほどに気合も入っていないので、追加点には至らなかった。ゲームはそのまま、4-0で終了。第2戦に戦力を温存する余裕を手にしたことが、非常に大きい。これ以上望むことなど出来ない、完璧な試合だった。
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