誇りとともに大会に別れを告げたい。試合前日、バイエルン監督クリンスマンはそう語っていたが、その目標は半分ほど達成されたといえる。前半の序盤、そして後半最初の5分ほどであったが、この日のミュンヘンのプレーからは闘志が感じられたからだ。カンプノウでもこの気迫があれば、今回リードしてからさらに追加点を求める気持ちがあれば、展開はいくらか違ったものとなっていただろう。彼らにとっては、残念なことだ。
本気で向かってくるバイエルンには、本気でぶつからねばならない。ペップ・グアルディオラはこの手続きといえるゲームに、ベストの布陣を投入してきた。ローテーションで休ませてもよかったチャビやメッシ、イニエスタらも先発出場。前日に発熱したアンリだけが休養をとる形となった。
さてゲームはバイエルンの気合により、第1戦とはまったく異なる内容となった。アリアンツ・アレナを埋める地元ファンの声援と期待に応えるべく、序盤から積極的に押し寄せてくるゲルマンたち。リベリーに集中してボールを集め、なんとかバルサの守備ラインを突破しようとするのだが、気持ちが先走っていたのだろうか、正確性はそう高くはなかった。オフサイドの多さも、それを表している。
バイエルンが惜しかったのは、5分、右サイドのソサからの完璧なクロスに、ゴール正面のルカ・トニが合わせそこなった場面。これが決まっていれば、ゲーム展開はまた違ったものとなっていただろうが、イタリアンのヘッドはジャストミートせず、ボールは力なく枠を外れた。この試合では他にも精彩を欠く場面が何度かあり、トニの日ではなかったようだ。
バイエルンの勢いある攻撃は、20分弱で終わっている。そこからはバルサが徐々にペースを握っていくこととなるのだが、ルシオ、ラームといった一流のデフェンサが復帰したバイエルンは、最後のところでバルサ攻撃陣に仕事をさせない。そうして0-0のまま、前半は終了することになった。
そして後半、あっさりと先手を取ったのはバイエルンだった。47分、ゼ・ロベルトのスルーパスから左サイドを突破し、エリア侵入するリベリー。そして彼はそのままバルデスを引き付けつつもかわし、豪快なシュートを突き刺してみせたのである。さすがの才能。この選手を、来季はバルサで見てみたい、と思わせるゴールだった。
嫌なタイミングでの失点だっただけに、ここからバイエルン津波が押し寄せ、しんどいことになるのではないか。クレの心は、リベリー弾によって少々さざ波立つことになる。しかし実際は、そうはならなかった。1点のリードを守りきろうとしたのか、バイエルンは勢い付かなかったのである。そのような時間帯から、バルサ相手に保守的になってしまうと、大抵はろくな結果を呼ばないのに。
たとえ3-0で負けても、勝ち抜けに関してはOKのバルサだったが、ゲームに負けること自体が、彼らの誇りに懸けて許されないものだった。よってここから、おもむろにバルサの反撃が開始される。
53分にはアルベスの絶妙なクロスにメッシが合わせるも、ルシオの必死の守りに阻まれゴールならず。54分にはバン・ボメルによるイニエスタへのペナルティ性のファールを主審が見逃し、62分にはチャビのスルーパスに抜け出したメッシがオフサイドの判定。そして69分にはトゥレ・ヤヤからのスペースへのパスを受けたメッシがラインを突破、センタリングを上げるも、エトーへと届く寸前に、またもルシオが100点スライディングでこれを防いでいる。
バイエルンは、ルシオの頑張りと審判の判定に救われていた。だが、それもそう長くは続かない。73分、これぞバルサという美しいパス展開から、ミュンヘンのゴールは破られるのである。エトーからのパスを受けた左のイニエスタが、エリア内でエトーとワンツーパス交換、そしてセンタリング。中央で待つチャビはシュートを放てなかったものの、ポストの役割は果たし、下げたボールをケイタが稲妻のようなミドルシュートを叩き込んだ。やってくれます、イニエスタ師匠。
これに意気消沈したバイエルンだったが、それは78分の選手交代によってさらに鮮明となる。クリンスマンの二人同時交代はこれといった効果を発揮せず、ただ大人しくなったバイエルンを相手にバルサがボールとゲームを支配。残り20分ほどの手続きプレーを卒なくこなし、試合終了の笛は吹かれた。
ロンドンでは激しいゴールの奪い合いの末(4-4!合計得点7-5)、チェルシーがリバポーを下している。セミファイナルの相手は、曲者ヒディンク率いるブルース。しんどい戦いとなりそうだ。
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