バルサ強し。イニエスタ恐るべし。このチームであれば、少なくともリーガに敵はいない。そう印象付けた試合だった。前日、“奇跡”の逆転勝利で盛り上がるマドリーに、これ以上ない返答。
さながら一日早くサンジョルディの日を祝うフィエスタといったところか。午後10時という遅い時間、しかも平日のゲームであったが、カンプノウには7万6千人ものファンが押し寄せていた。これから訪れる山場に、チームを応援せずにいられない。熱い気持ちがファンを後押ししていた。情熱とフットボル。それがバルサだ。
ファンたちの声援に応えるように、選手たちはキックオフ直後から躍動していた。メッシは前日の腹痛のために温存することになったが、そのレオの位置に入ったイニエスタが、凄まじい存在感を発揮するのである。それはわずか2分のことだった。ピッチ中央付近でアンリが奪ったボールを受けると、ドリブル開始。そして彼には珍しく、ペナルティサークル手前からズドン!とミドルシュートを突き刺した。パロップの代わりに出場していたGKハビ・バラス、完璧なシュートコースに一歩も動けず。
早々にリードを奪い、バルサのギアは一気にトップに入った。スタンドのサポートもあり、押せ押せである。5分にはアルベスのフリーキックがあり、8分にはイニエスタのパスで抜け出したエトーがシュート。そして16分には追加点が入るのだが、これまたイニエスタの才能によるものだった。チャビとの大きなワンツーによってエリア内に侵入すると、デフェンサを引き付けつつも左横でフリーになったエトーにパス。エトーはこれを、押し込むだけだった。
試合はこの2-0で、決まったといえる。セビージャは12分、ディエゴ・カペルの右からのクロスに、ファーのヘスス・ナバスが上手く飛び込んだのだが、シュートはわずかに枠の外。前半、彼らのチャンスはこれだけであり、あとはバルサがゲームをがっちりと支配した。乗ったバルサに、ライバルはいない。36分にはイニエスタからのパスを受け、エリア内でチャビがフリーとなる場面もあったが、惜しくもチャビのバセリーナはポストの左をかすめゴールならず。
そして後半も、ゲームは同じような展開となった。48分、あっさりと追加点が決まるのである。得点者は、チャビ。アシストは・・・ドン・イニエスタだった。セビージャエリア内で左のエトー、中央のアンリ、右のイニエスタとじりじりボールを回し、最後はエリア際正面にいたチャビがミドルシュートを叩き込むのだが、ラストパスを出す前のイニエスタのキックフェイントが効果大。デフェンサはそれに引き付けられ、チャビは完全にノーマークとなっていた。
これでもまだ、イニエスタ祭りは終わらない。その6分後、今度は左のアンリへとスルーパスを供給し、そのアンリがゴールライン際まで切れ込み、絶妙シュートでゴールを陥落させるのだ。右足で急加速すると見せかけ、即座に左足のシュートとはさすが。ハビ・バラスはまさかのタイミングに、どうすることも出来なかった。
55分時点で4点差をつけ、ペップ・グアルディオラはローテーションとしての選手交代を開始する。60分にはイニエスタがお役御免となり、万雷の拍手を受けながらベンチへ。さらに74分にはチャビもまた、ボージャンと交代しベンチへ下がった。イニエスタと代わって登場したフレブは、なかなかに気持ちのこもったプレーを披露。見せ場はそうはなかったが、気合は伝わってきた。残りシーズン、出番はあまり期待できないが、活躍してほしい選手の一人だ。
ゲームはその後、エトーに何度かゴールチャンスは巡ってきたものの、特にアクシデントもイベントも発生することなく、そのまま4-0で終了している。バルサ、強し。セビージャをここまで寄せ付けないとは、別次元といって過言ではない。まさにカンペオンのゲームだった。そしてメッシの不在をまったく感じさせなかったイニエスタ、恐るべし。
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