カンプノウではよくある光景。攻撃力に自信のないわけではないチームが、貝のように口を閉ざし、エリアをがちがちに固めてくる。試合前日、「攻撃的にいく。オープンな試合になる」と宣言していた敵将ヒディンクもまたその面白くもなんともない選択をし、そして収穫を持ち帰った。カンプノウで打ち合ってくるチームなど、バジャドリあたりしかいないのか。
チェルシーに積極的に攻める意思などこれっぽっちもなかった。エリア周辺に9人を配置し、前線にひとり残ったドログバの単騎カウンターが、ほぼすべての攻撃オプション。中盤でボールをつなぐ気もなく、GKチェクから淡々とロングボールが蹴り出されていった。ロンドン名物の大型バスを、これでもかと並べてくるチェルシー。
これに対し、バルサはいつものパスを回すことが出来ない。ボール奪取時のプレッシングは速く激しくはあったものの、ボールを回すとなると、情熱や熱さが感じられない。絶好調ゲームで見られるようなリズムは鳴りを潜め、アイディアのないパスは次々とバスに跳ね返されていった。エリア周辺にスペースはなく、それなら、と打つミドルシュートも苦し紛れだった。
バルサにとって最悪なのは、ミス絡みのカウンターで失点をすることである。39分、ドログバへのなんでもないパスをマルケスが処理しようとして、中途半端な横パス。ドログバはあっさりとこれを奪った。残るは、バルデスのみ。祈るバルセロニスタ。ここでバルデスが気迫のシュートブロックを2連発しなければ、悲惨すぎるシナリオが待っていたことだろう。グラシアス、ビクトル。ぶっちゃけ、これがこのゲーム最大の見せ場である。
後半はバルサにとって、非常によろしくないアクシデントで幕が開ける。50分、ディフェンスの要であるマルケスが突如、単独でピッチにうずくまる。完全に不吉な仕草である。案の定、マルケスはヒザにダメージを受けて負傷交代。プジョルが急きょピッチに立った。そのプジョルも後にカードをもらい、ロンドン決戦は出場停止。いきなりセントラルに人がいなくなり、どう対応するペップ。
その後、“サンドニの英雄”であるベレッティがランパーに代わって出場した際、スタジアムはわっと沸いた。久しぶりだな、と送られる拍手。そんな交代が話題となるほどに、このゲームには盛り上がる場面がなかった。
最後まで諦めず、チェルシーゴールへと迫るバルサ。しかし“ブルーズ”(今日は黄色)は相変わらずがっちがちに守りを固め、引きこもっている。後半のシュートがわずか1本であることからも、攻める気ゼロなのがよく分かるものだ。バルサはカウンターから、何度かいいところまでは行きかけてはいた。しかしアレックスとテリーの壁は厚く、チェクの壁はさらに厚かった。最大の決定機は90分、アルベスのクロスにボージャンが合わせようとした場面か。しかし、いかんせんちびっ子。上手く頭を合わすことが出来なかった。
ゲームはそのまま、0-0で終了。ローマ行きの切符は来週、ロンドンにて行方が決まることになった。バルサにとってポジティブだったのは、無失点で終えたことくらいだが、スタンフォード・ブリッジで1点奪えば引き分けでも勝ち抜け、と状況は分かりやすい。次は相手も出てくるし、ガンガンいってゴールを奪ってもらいたい。それにしても、あーもやもや。不完全燃焼なり。
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