チェルシー戦から2試合続けて、後半ロスタイムでのドラマが待っていた。しかし今回は、ロンドンとは逆の結末。同点弾を叩き込んだのはビジャレアルであり、それにより優勝決定は次へお預け。バルサのフィエスタは尻切れトンボで終わることになった。
久々の地元優勝をこの目で見届けようと、ソシオたちは大挙してカンプノウへ足を運んでいた。スタンドはいつになく早いテンポで埋まっていく。試合前から、お祭りムード。選手入場時には大きな拍手があり、キックオフ直前には盛大なイニエスタコールも巻き起こっていた。
その声援に、チームもよく応えていた。チャンピオンズの疲れは確実にあるはずだが、一気にビジャレアルを制圧するため、積極的に前へ出て行く。リズムは良かった。そして11分、アビダルからのパスを受けたケイタが守備ラインを単独突破。エリア際から放ったシュートはデフェンサの足に当たるのだが、これにより都合よくドライブがかかり、ずどんとゴール右端に突き刺さる。カンペオンの運というやつだ。
バルサはこれにて主導権を得た。しかし22分、トゥレ・ヤヤが不注意からボールを失い、ビジャレアルはショートカウンター。イバガサからのパスを受けたロッシがエリア左を深く破り、そのクロスを中央のジョレンテに押し込まれてしまうのだった。
さらにバルサは26分にも、あわやという場面を作られている。イバガサによる左からのクロスを、ロッシに強烈なヘディングで合わされたのだ。だがこれは、バルデスの反射神経が勝利。右手一本で弾き返している。その後、なぜかロッシとバルデスはハイタッチ。好プレーを称えあった。
このあたりの時間帯は、バルサは本来のプレーを見失っていた。ビジャレアルのプレーはアグレッシブになり、ゲームは彼らのペースだったといえる。しかしバルサは抜け目のないプレーにより、再び主導権を取り戻す。36分、チャビの意表を突いた速いリスタートからメッシがエリア内にパスを送り込み、抜け出したイニエスタが一度は競り合いで倒れながらも、素早く起き上がりエトーへとパス。エトーはこれを余裕で押し込み、スコアを2-1とした。
追加点を得たことで、バルサのプレーに落ち着きが戻った。前半終盤は、バルサのペース。ボールは滑らかに動くようになっていた。そして前半ロスタイム、エリア際からのフリーキックをアルベスが直接叩き込んで3-1。バルセロニスタに勝利を確信させるゴールを手に、ハーフタイムへと突入した。ここまでは、上々の出来だった。
後半はまず、バルサのペースで進んでいった。さすがにギアは落ちてはいたが、ボールはしっかりコントロール。51分にはアルベスのクロスにケイタが頭であわせ、そのこぼれ球をチャビが押し込んでいる。だがこれは、オフサイド判定で無効。たしかにケイタの位置はギリギリではあったが、実際はオフサイドではなかった。
そして勝利を確信したスタンドは後半10分頃から、早くもお祭りムードに入ってしまう。ウェーブまで繰り広げられる、本格的な浮かれ状態。これが結果として、チームもフワッとさせてしまったところはあるだろう。ゲームの雲行きが怪しくなったのは77分、アビダルのニハトに対する微妙なファールにより退場になってからである。エリア内だったためにペナルティが宣告され、マティアス・フェルナンデスがこれをきっちり込める。1点差で、バルサは10人となった。
アビダルはチェルシー戦に続き、2戦連続ビミョーなジャッジで1発退場。彼にとっては、呪われたこの一週間。
ペップはここでどうにかチームを落ち着かせようと79分、エトーに替えてシルビーニョを送り込む。さらに84分にはチャビを下げて、ブスケを投入。だが希望を見出したビジャレアルが、それで大人しくなることはなかった。連戦の疲れが見えるバルサを尻目に、イエローサブマリンはペースを上げていく。このフィジカル勝負に、バルサは付いていけなかった。
それでもどうにか失点することなく迎えていた後半ロスタイム、最悪の結末が訪れる。91分、最終ラインからのロングボールを受けたジョレンテが、巧みなトラップとコントロールでバルサ守備陣をかわし、まさかの同点弾をぶち込んでしまうのである。最後まで諦めずにゴールを狙ったビジャレアルに、大きな報酬。バルサはエリアを閉ざさず、ラインを高く上げていたことがこのプレーでは災いした。
さらに悪いニュースは重なるもので、93分、バルサ最後の攻撃時にイニエスタが太ももを痛めてしまう。リーガ優勝が来週へ持ち越されることは仕方ないとしても、イニエスタの離脱はあまりにも痛すぎる。ローマでの決勝には、おそらく間に合わないだろう。でかすぎる、疲労の代償。ドタバタの代償。
|