懸念されたFIFAウイルスも選手起用で上手に乗り切り、リーガ開幕2連勝。
代表ウィークの常ではあるが、選手たちが揃ったのが2日前の午後。南米予選組はさらに一日合流が遅れ、ペップにはローテーションが求められていた。そこで監督は前線に期待の若手たちを起用する。イブラヒモビッチを中心に、両サイドをペドロとジェフレンが務めた。セントラルはなんと、チーム練習に参加して間もないチグリンスキーがいきなり登場。ファンを驚かせた。
前半、予想されたとおりバルサは苦しんだ。開幕戦を1-4と勝利したヘタフェは、本拠地アルフォンソ・ペレスで積極果敢なるプレーを仕掛けてくる。前線、中盤での激しいプレス。最終ラインからのボール回し。まるでバルサのようなプレーを、彼らは行ってきたのである。
これには本家バルサも手こずった。支配率では勝るものの、リズムはヘタフェに分が上がる。ボールは前線に収まらず、守備組織の整った相手からスペースを見つけ出せなかった。両サイドの若カンテラーノたちにボールを預けるも、1対1の仕掛けから突破が出来ない。バルサはヘタフェ陣形を深く敗れず、エリアにすら侵入できなかった。
逆にヘタフェは前半に2度、決定的チャンスを作っている。12分にはカウンター後のポストプレーからアルビンの豪快なボレーシュートが左ポストを直撃し、28分には好調ソルダードのチレーナが右ポスト。あと少しの運があれば、ヘタフェがリードを奪っていてもおかしくはなかった。
バルサ前半の決定機は、43分のイブラくらい。右のジェフレンからのボールを受けた中央のイブラヒモビッチが変態トラップにて抜け出し、GKウスタリと1対1でシュート。この勝負はあと一歩のところでウスタリに軍配が上がっている。
しかし後半、ゲームの流れは劇的に変わる。ヘタフェの鬼プレスはハーフタイム前から弱まる様子を見せていたのだが、後半になってもそれは継続。チャビがまず、前を向いてプレーが出来るようになっていた。そして58分、早々にペップは動いた。もっと経験が必要であることを示したペドロとジェフレンを下げ、超一級クラックであるメッシとイニエスタを投入。ここから試合は、別の顔をみせる。
メッシ、イニエスタが入ることで、バルサは両サイドにて局地戦に勝利するようになった。守備ラインが崩れ、スペースが生まれだしていた。前線にボールが収まるので、後方からの攻撃参加も容易となる。66分、先制点はアビダルのオーバーラップからだった。
相手選手に囲まれながらも、中央のメッシが粘って粘って左のアビダルへボールを供給。アビダルはこれをシンプルにグラウンダーのパスで折り返し、デフェンサに当たって軌道の変わったボールを、イブラヒモビッチが鋭い反応にてファーに流し込んだのだった。ゴレアドールとしての本能が炸裂。いいゴールだった。
ズラタンはスポルティング戦よりもチームへの順応をみせていた。ポストとしての技術は言うまでもない。この日すごかったのは、その気の効いたアシスト能力だ。先制後、ペップはさらに攻撃的な采配を行っていた。67分、プジョルに替えてダニ・アルベスを投入している。その最強ラテラルのボールを基点に、追加点は生まれるのだった。
75分、右サイドを駆け上がるアルベスから、逆サイドのイブラヒモビッチへとパスが送られる。ズラタンの前にはウスタリがただ一人。ここでシュートかと思いきや、彼は瞬時に柔らかい浮きパスを上げ、そこに詰めていたメッシのヘディングが決まるのである。素晴らしいスピード感!リズム!テクニック!昨年までのバルサにはなかったタイプのゴール。イブラの能力が、バルサにまたひとつ別のオプションを作り出している。
前半をなんとか凌ぎ、後半が勝負というペップの狙いは見事的中した。ヘタフェは素晴らしい前半を披露しながらも、後半に登場したクラックと消耗のために力尽きる。レギュラーメンバーが揃った時の、バルサの凄まじさ。無事FIFAウイルスを乗り切ったペップバルサは、意気揚々と次のインテル戦へと臨む。待ってろ、サンシーロ!
追記。この日がバルサデビューとなったチグリンスキーは、本当に2日前に練習初参加かと思えるプレーっぷり。ピケや周囲との連携はもちろんまだこれからだが、ペップが求めるパス出しは後半になると本領発揮。徐々にその切れ味は増し、びしびしと質の高い縦パスを通していた。さすがペップが執拗に獲得にこだわった選手。今後どこまでいくのか、実に楽しみだ。エクセレンテ!
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