スタートダッシュに失敗し、リーガではまだ勝ちのないアトレチコ。その彼らをペップは試合前、負けるとすればこういう相手だ、と警戒感を示していたが、ボスからしっかりとネジを締められていた選手たちは強かった。ゲームは一瞬にして、バルサ色に染まったのである。
インテル戦でのフラストレーションを晴らすが如く、バルサはキックオフ直後から攻撃を仕掛けていった。まずは1分と経たないうちに、燃えるアンリのポスト直撃弾。これはアトレチコにとっての、強烈な警告となる。何故ならその1分後、今度はイブラヒモビッチがその才能を見せ付けたからだ。
バルデスからマクスウェル、ブスケツと左サイドをボールが回り、ブスケツの絶妙スルーパスにズラタンが反応。長身クラックはエリア内に滑り込むと、その右足アウトサイドでの最初のタッチで柔らかふんわりシュートを繰り出し、GKロベルトを攻略、ボールは無人のゴールへと転がり込んでいった(2分)。
湧き上がるカンプノウ。意気揚がるバルサは攻撃を続けた。ラインを下げないアトレチコなので、スペースは充分にある。かといって、中盤での圧力もそうきつくはない。言ってみれば中途半端な戦術を前に、バルサはもう自由自在だった。追加点は別次元の二人、チャビとメッシから生まれる。16分、前を向いてフリーとなったチャビの気の利いた浮き球パスにメッシが反応。エリア内で胸トラップすると、そのまま中央へ切れ込み、軽くフェイントでロベルトを料理、余裕でネットを揺らすのだった。
ゴール祭りはまだまだ続く。3点目は30分、相変わらず元気いっぱいのダニ・アルベスのシューズにより生まれた。およそ30メートルはあるやや遠目のフリーキック。ブラジリアンはここで思い切り右足を振りぬくと、ボールは縦に変化、ズドンとゴール左隅に突き刺さるのだった。ブラボー!
そしてもうひとつ、前半のフィエスタを締めくくるゴールが。ラマダンもなんのその、好調を持続するケイタがその主だった。しかし本当にすごいのはそのお膳立てをしたメッシである。イブラからのセンス溢れるパスを受けたレオは、エリア内左にて超絶変態的ボールコントロールを披露。付いていけない守備陣を尻目に絶妙のラストパスを送り込み、中央のケイタがこれを押し込んだのだった。ズラタンがマークを引き付けて、メッシが切り裂く。2点目もそうだったが、このコンビは恐ろしい存在となりそうだ。
前半だけで4-0!勝利は間違いなし!とのムードがスタジアムに満ちた。しかしハーフタイム直前、バルサはミスから1点を失うことになる。アトレチコのボールを処理しようとして頭でのバックパスを選んだブスケツだったが、このボールが中途半端。前線で張っていたアグエロにあっさり奪われ、バルデスもバセリーナで攻略された。バルデスの無失点記録は571分(新記録達成)で終了した。
前半で大量得点差がついた場合、後半はギアが何段階か落ちてしまうのは、仕方のないことだ。意識はしなくとも、ここぞのタイミングでの瞬発力は確実になくなる。ということで、中断明けの45分は、手を抜いたわけではないけれども見せ場のないものとなった。
バルサのペースダウンによって、幾分ながら元気になったのはアトレチコである。シュートの数だけでいえば、コルチョネロ軍団の優勢勝ち。アトレチコは後半に5本のシュートを放っているが、バルサはわずか2本に止まっているのだ。ただピンチといえたのは84分、失点の場面くらい。その他はバルサが基本的にボールを支配するけれども、最後でギアがトップに入らない。アトレチコはショートカウンターで一矢報いようと粘る状況が続く。
2失点目も、バルサの守備的なエラーによるものだった。狙われたのはバルデスのゴールキック。中盤でヘッドによって弾かれると、それがビシッと一発でフォルランの元へ。チャンスを逃さないゴレアドールであるウルグアイ人は、これをきっちりゴール右隅に叩き込んだ。4-2。
しかしなにくそ!とやる気エンジンに火が入れば、このバルサは決定機を作り出せる。終了間際の45分、もやっとしたエンディングを避けようと、選手たちはギアをひとつ上げた。きっかけはエリア右でのアルベスとイニエスタ(チャビに代わって途中出場)のコンビネーション。大きなワンツー交換でエリアへ切れ込んだイニエスタが、再びダニへとボールを戻す。そしてアルベスはそれを隣のメッシへと送り、10番クラックが右足で仕上げたのであった。
最終的なスコアは、いかにもアトレチコ戦らしい5-2。エラーによって久々の失点を喫したのは反省点だが、最後にいい印象を残して終われたのは吉。役者たちが揃ってゴールを決めたのもなかなかだ。あとは執拗にファールを受け、それでも果敢に奮闘していたティティ・アンリにご褒美がくればばっちし。次はきっと、あんたのゲームになるよ。これにてリーガ開幕3連勝。昨年を上回る勢いで、バルサトレインは快走する。
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