前節のアトレチコ戦に大勝(5-2)したバルサだったが、指揮官はもうひとつ不満げ。「もっとプレーを良くしなければ」と釘を刺していた。その反省を受けての、中二日でのこの試合。さっそく効果が表れていたのが素晴らしい。
バルサは序盤から、完全にゲームを支配していた。格下だからと手抜きせず、強豪と対戦する時のようなプレー。前線からのプレス、速いボール回し。対するラシンは中盤でのプレスが甘く、またライン設定も深かった。ゆえにスペースが生まれ、チャビは余裕をもってボールを動かせる。こうなればもはや、バルサを止めることなど出来ない。序盤はやや、様子を見る感じ。ギアをぐっと上げたのは、15分をすぎる頃だった。
そして先制点は訪れる。20分、ゴール正面でのフリーキックをチャビが右エリア角のメッシへ流し、メッシはすかさず逆ポスト際へとクロスを上げる。ここにいたのは、イブラヒモビッチ。長身クラックはこれに難なく頭で合わせ、ボールをねじ込んで見せるのだった。クラブ記録更新となる、デビュー4試合連続ゴール。さらにその直後、イブラは速攻からあと一歩で追加点のチャンス。惜しくもこれは、左ポストに嫌われている。
挫けるラシンに対し、バルサは一気にアクセルを踏み込んだ。2点目はあっという間。23分、“宇宙人”メッシがエリア正面でのチャビとのパス交換のあと、悪魔的ドリブルでデフェンサ網を切り裂き、ゴール左角へズドン!なんだなんだ、このプレーは。手がつけられなくなっている、我らが10番。メッシへとボールを通したチャビのパスもスゴし。
2点差が付き、熱かったエル・サルディネロを静けさが包んでいた。それをさらに沈痛なものとしたのは、イブラのトドメ弾だ。26分、きっかけはチャビの左コーナー。ボールはいったんデフェンサにクリアされるのだが、アルベスを経由してズラタンがこれを受ける。まるで魅入られたように、イブラヒモビッチに吸い寄せられる守備陣。そして最終的には5人のマークを自らに集めた後、驚異のヒールパスをイブラは繰り出した。完全フリーのピケがこれを押し込み、スコアは0-3となった。
ハーフタイムまでの残り20分ほどは、バルサゆとりのロンド会。テレビ画面に映し出されるラシンファンの表情の多くは、絶望的なものとなっていた。
これではダメだ、とロッカーで喝が入ったのだろう。3点差をつけ、自ずとギアを下げるバルサに対し、ラシンはようやく積極的なプレーをやれるようになっていた。そう強くはないものの、プレスが徐々に機能していくのだ。
それにバルサには、歓迎されざるアクシデントも起こっていた。後半開始すぐにイブラヒモビッチが競り合いの中で足首を痛め、一度はプレーを再開したものの、ペドロと交代でベンチに下がったのだ(52分)。重傷ではなさそうなのが救いとはいえ、2試合ほどは欠場になるかもしれない。
ゲームはその後、こう着状態となっていた。頑張るラシンと、跳ね返すバルセロナ。しかしここでさらにダメ押し点を奪ったところが、アトレチコ戦とは異なっているバルサだ。63分、チャビからのパスを受けたメッシが、右から中央へと得意であり必殺のドリブル攻撃。ラシン守備陣はただずるずると引っ張られ、最後はクラックが豪快に左足シュートを突き刺した。
最高の仕事を終えたメッシは64分、イニエスタと交代でベンチに下がる。別次元のプレーをした彼に、エル・サルディネロから拍手が贈られた。
イブラとメッシがピッチを去り、さらに4点リード。バルサの攻撃からは火花散る鋭さはなくなっていた。ペドロはもう少し、縦へと仕掛けてほしいところ。中央で頑張るアンリも、孤軍奮闘ではゴールに結びつかない。次節はこのティティをどう上手く活かしていくかがテーマとなるだろう。
ラシンは前半のショックから立ち直り、一矢報いようとした努力が実った。71分に誇りのゴールをゲット。巧みなフェイントでマルケスをかわしたセラーノが、強力な左足シュートを叩き込んだのだ。
だがゲームの大勢に、このゴールによる影響はない。バルサは勝利をポケットに収めており、その後は集中を切らすことなく、きっちりとラシンを押さえ込んで締めくくった。これにて、開幕4連勝。まだ万全ではないバルサだけに、これからどこまで昇っていくのか楽しみだ。
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