ロシアのチームは舐めてはいけない。試合前日、ペップやトゥレ・ヤヤがそう警告を発していた時、多くのクレは「そうはいっても最低限勝ってはくれるだろう」と考えていたはずだ。しかしふたを開けるとびっくり。ゴレアーダでの勝利などとんでもなく、待ち受ける現実は実に厳しいものだった。
代表ウィーク明けの連戦。チームペップはフィジカル状態が良くないようだった。加えて週末のバレンシア戦を引きずり、プレーのリズムもいまひとつ。キックオフ直後にイニエスタがエリアに飛び込んでいった時には、「お、いけそう」と思ったものの、2分後の“交通事故”により、状況は大きく変化するのである。
相手GKのゴールキックを、マルケスがトラップミス。ボールはトゥレの足元を抜けていく。普通であれば、何のことはない小さなエラーなのだが、それを受けたリャザンツェフのゴール30数メートルからのロングシュートがゴール右端に突き刺さるのだから、堪らない。超ゴラッソ。どうしようもない類のゴールといえる。
まさかの失点に、面食らったのはバルサだった。逆に気を良くしたルビンは、プレスを仕掛けてバルサを圧迫する。多少ラフなタックルが多かったが、この日の審判はそれに対し気前が良かった。そんな主審に当たったことも、バルサの不運のひとつといえる。いずれにせよ、バルサのプレーにはキレもリズムもなかった。頭ではなくハートでボールを回していた。チームで守備網を崩す動きがない。さらにそこに立ちはだかったのが、GKリジコフだった。
27分、アルベスのクロスにファーのペドロが頭で合わせたシーンは決定的。入っていておかしくないシュートだったが、全力で掻き出したリジコフの執念が勝利している。執念といえば、前半終了前に選手交代を行ったベルディエフ監督も然り。なんとしてもリードを守り抜く、の気合が窺えた。
だが後半、バルサはあっさりと同点に追いついてみせる。48分、チャビからの縦パスに単独で抜け出したイブラヒモビッチが、デフェンサふたりのマークをものともせず、そのままシュートをねじ込んでしまうのだ。クラックの技によるゴール。これでバルサは一気にペースを掴み、鮮やかに逆転勝利か、と思われた。
実際、これでバルサはプレーに激しさを増している。ラインを深くして守るルビンを相手にボールを支配し、一方的に攻め立てたといっていい。しかしよく守るルビンの守備陣形を崩すには至らず、チャンスとなったのは71分、イブラの強烈なフリーキックくらいだった。このあたり、いつでも得点できそうな気配だけはあったのだが・・・。
だがそのわずか2分後、バルサにとって状況は非常に厳しいものとなる。73分、何気なくボールを回していたところを、一瞬の隙を突かれルビンのカウンターを食らうのだ。ボールを手にしたドミンゲスが持ち上がり、ここぞのタイミングで斜め前方のカラデニスに絶妙パス。ピケとマルケスの間を通され、これまた巧いシュートでバルデスの壁も突破された。1-2。
追い込まれたバルサは、反撃を試みる。だが攻撃を急ぐあまり、そのプレーは空回り。今回はさらに運もなく、79分のイブラヒモビッチのシュートはクロスバー直撃となり、終了間際のトゥレ・ヤヤのヘディングシュートも右ポストに弾かれる。せめてどちらかが決まっていれば・・・というところだが、こういう日は入らないものなのだ。バルサにとっての更なる不運は、後半ロスタイムにアルベスが負傷交代したこと。しかも全治3週間という。なんてこった、しか言葉も出ない。
ゲームはそのまま、1-2で終了した。この不運だらけの日に、唯一ラッキーといえるのはインテルがカサでディナモと引き分けに終わったこと。これでいまだ勝ちのないインテルを除く3チームが4ポイントで並ぶ予想外の状況が出来上がった。厳寒のウクライナに、勝負が持ち越されることもほぼ確定。ハードな冬となりそうだ。
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