崖っぷちに追い込まれたバルサが、王者としての実力を取り戻した。インテルにやりたいことをさせず、やりたいことをやっての完全勝利。F組首位を奪還し、1/8ファイナルに大きく前進した。
グアルディオラとモウリーニョによる監督采配対決は、我らがペップに軍配が上がった。メッシとイブラヒモビッチの両看板を怪我で欠くバルサ。苦しい戦いになると予想されたのだが、ふたを開けてみればまるで逆だから分からない。メッシの代わりに右に入ったイニエスタが自由自在に動き回り、チャビとのコンビでインテルをかく乱。強烈なインパクトを放ったのである。
ブサッカ主審(ローマ決勝の担当者!)が最初の笛を吹いて以降、バルサは素早いチェックとボール回しでインテルを圧倒した。カルチョではまずこんなチームとは巡り合わないチームモウリーニョは、これに成す術もない様子。ただ守備的に、それも弱気に守備的に自陣に引くしかなかった。一方のバルサは、攻撃的な守備で軽々とインテルのボールを奪い取っていった。
そして10分、バルサの姿勢に報いるかのように、早々に先制点が決まるのである。10分、チャビの左コーナー(すでに3回目)をニアのアンリが頭で逸らし、ファーのピケがモッタの引っ張りをものともせずに押し込んだのだ。やった!もっとも困難な作業がここに成る!これでバルサは一気に楽になった。
重い空気を振り払うことに成功したバルサは、その後ゲームを見事にコントロールしていく。その様はまるで、インテルが全員頭痛と腹痛で試合どころではないんじゃないかと思わせるくらい。押し寄せるバルサの波に、モウリーニョの選手たちは明らかに飲み込まれていた。そして26分、勝利をぐいと手繰り寄せる追加点が入るのである。
完璧なチーム連動によるゴールだった。ブスケツから縦パスを受けたイニエスタが、左隣のチャビへとそれを送る。チャビはこの時、右サイドを疾走するアルベスを察知していた。ダイレクトでその前のスペースへとボールを流し込むと、アルベスもまたこれをワンタッチでセンタリング。そして逆サイドに走りこんだペドロが、上手いボレーにて押し込んだのだった。ニアに注意を引き付けた、アンリもナイス。
バルデスがヒヤッとしたのは、唯一35分、自らのトラップミスが相手に奪われ、無人のゴールにロングボールを蹴りこまれた時くらい。これがインテルの最初のシュートとなったが、幸い枠からは大きくずれていた。
後半となり、バルサは少しギアを下げた。それに比例してインテルも幾分活力を増し、より高い位置でプレスを仕掛けるようにはなっていたのだが、バルサを脅かすほどではなかった。ハーフタイム明け最初の決定機もバルサ。53分、アルベスのクロスにチャビが上手く頭で合わせたのだが、これはGKフリオ・セサルの好守によって阻まれている。
メンバー紹介時、カンプノウの観客たちから温かい拍手を受けたサム・エトーは、試合を通じてやりたいプレーを封じられている。見せ場はひとつだけ。68分、持ち味であるスピード突破でエリア内に切れ込んだシーンだ。試合後、元同僚たちと笑顔で挨拶を交わす姿の方が、ずっと印象的だった。
ゲームを完全に決める3点目もほしいところだったが、残り時間も減り、勝ちもほぼ見えてからのバルサはリード守り作戦を採るようになっていた。それによってインテルはバルサエリアに近づく機会も増えはしたが、それだけで決め手はない。策士モウが次々に送り込んだデランテロたちも、カンプノウをヒヤッとさせることはなかった。そのまま2-0にて、ゲームは無事終了している。
この勝利、そして他会場でルビンとディナモが引き分けたことにより、バルサはキエフでの最終節、1点差負けまでならば1/8ファイナルが確定。1位通過を目指すことに変わりはないが、精神的にぐっと楽になったのは間違いない。週末のクラシコに向けても、勇気をもらえる勝利。この調子だ、バルサ!オレ!
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