ド派手ではないものの、拮抗した2チームによる激しく手に汗握るクラシコ。バルサに勝利を呼び寄せたものは、イブラヒモビッチの流石の決定力と、プジョルを筆頭とする守備陣の奮闘、そしてチームとしての一体感だった。
今回のグラン・デルビーは、“カンテラ対カルテラ(財布)の戦い”というのがひとつの構図だった。先発11人の中にカンテラ産が6人いたバルサと、自家製はカシージャスひとりで夏に2億6000万ユーロを補強に費やしたマドリーと。そしてそのプレースタイルも対極。ワンタッチパスをつなぐことで相手守備を崩そうとするバルサに対し、マドリーはイグアイン、カカー、ロナルド3人によるカウンターで脅威を作っていた。
このスタイルのぶつかり合いは今回、非常に拮抗したものとなる。普段は哀しい内容の多いマドリーなのだが、この日の試合だけを見れば印象は全く違う。さすがにクラシコという気合の入りよう。彼らはなかなかに強力だった。ゲームは前半、エル・ブランコのペースで進んでいく。
バルサはいつものように、速いパス展開で主導権を握ろうとするが、勇気を持って高い守備ラインを設定する白組の寄せは素早かった。チャビ、イニエスタは前を向いてボールを受けることが出来ず、メッシの突破も効果を発揮しない。アンリの飛び出しは、オフサイドの網にかけられていた。アルベスのクロスが3本続けて失敗だったように、少し堅くなっていたのかもしれない。
最初に決定機を手にしたのはマドリーである。20分、カカーが切れ味鋭いドリブルでエリア際まで持ち込み、注意を十分に引き付けてから右でフリーのクリスティアノにパス。完全にやられた、という場面だった。しかし色男のシュートはバルデスが右足でブロック。去年のドレンテ同様、白組は先制の絶好機を逃している。
その後も、バルサはリズムを作ることが出来なかった。マドリーのチェックに引っかかり、ボールを失っては危ない速攻を受ける、という場面が多数。ハーフタイム前には幾分ペースを取り戻してはいたが、ゴール前でカシージャスに冷や汗をかかせるには至っていない。
だが後半、イブラヒモビッチが入ることでバルサは変わった。この日は動きの早かったペップ・グアルディオラは51分にアンリに替えてズラタンを投入。そして長身クラックはいきなり大仕事をやってのけるのである。56分、右サイドを疾走するアルベスから良質のボールが上がり、ファーに走りこんでいたイブラが左ボレーでズドン!クラックの上手いマーク外しと驚くべき正確な技術のシュートにより、ついに均衡は破られた。バルサ先制!カンプノウは湧き上がる。
リードを奪われたマドリーは、バルサゴールへ襲い掛かっていく。当初はそれを上手く防いでいたペップチームだったが、状況が厳しくなったのは62分、ハンドによって2枚目のカードをもらったセルヒオ・ブスケツが退場になってからだった。その数分後には、ペジェグリーニは怪我明けのロナルドをベンチに下げ、ベンセマを送り出している。
絶叫回数でいけば、後半は前半を上回っていた。攻撃面でも、守備面でも両方だ。守備ではカウンターによって大ピンチに見舞われることが多く、そのたびにエリア内外にて守備陣(特にプジョル!)の集中した気合の守りにて事なきを得ている。本日最大の英雄は間違いなく、炎のカピタンだっただろう。それほどにヒヤッとさせられるシーンは何度もあった。マドリーが後半、枠内シュートが0だったのも幸いした。
一方で、バルサも3度ほど決定機を作りだしている。69分にはフリーキックからピケのヘディングがわずかにポスト右。76分にはなんとチャビのスルーパスにアビダルが抜け出し、際どいシュートを放っている。これも惜しくもポストの右、枠を捉えなかった。そして88分には、カウンターで駆け上がるアルベスから絶妙のパスがエリア内に送られ、メッシがフリーでこれを受ける。しかしバルデスに負けてなるかと今度はカシージャスが、左足一本でこれを弾き出している。
どちらに転ぶか分からない白熱のクラシコは、こうして1-0のまま終了した。ハラハラ疲れたが、見応えのあるゲームだった。今季最高のマドリーを下したバルサが、これにて一週間で首位奪還。運命のビッグウィークを見事連勝で終え、自信も掴んだだろう。過密日程は続くが、まずはお疲れ様。チーム全員、実によくやってくれた。ビスカ、バルサ!
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