なんだかんだで、メッシが主役を持っていった試合。恒例のパターンで先制され、ギガクラック投入により一気に逆転、ダメ押し。その影で、ペドロが偉大なる新記録を樹立した。
このゲーム、スコアだけ見ればバルサの1-3勝利。苦もなく順当に勝ち上がったかにも思える。しかし北中米王者アトランテ攻略はそう容易ではなかった。まずキックオフ直後、もうお馴染みとなったロングボール一発攻撃で先制を許してしまうのだ。アトランテ陣内からの(なんとなく前に送った)フリーキックが守備ラインの背後にぽとりと落ち、上手く突入したロハスが浮き球でバルデスを攻略、そのまま無人のゴールにボールをねじ込んだのである。
見慣れた光景ながら、こういった大会では致命傷になりかねない失点。クレの脳裏には、過去二度の嫌な思い出が甦った。これは展開次第では、ややこしいことになるやもしれぬ・・・。
当然ながら、リードしたアトランテはゴール前を固めてくる。そして疲れがたまりアイディアに欠けるバルサは、その網を破ることが出来ない。焦りは感じられなかったが、回すボールのほとんどはエリアに到達する以前にアトランテ守備陣によりカットされた。だが、こういう時に役立ってくれるのはセットプレー。まずは33分、ズラタンの強烈キャノン砲をもって警告とすると、その直後、ついにバルサは同点ゴールを奪い取る。チャビの右コーナーを中央のトゥレ・ヤヤが頭ですらし、ファーのブスケツがダイレクトに押し込んだのだった。
その後、ハーフタイム直前にスルーパスに抜け出したアルベスがGKビラールと1対1の場面を手にするも、シュートは惜しくもサイドネット。アトランテはなんとか1-1のまま試合を折り返している。
後半が始まるとすぐ、ペップ・グアルディオラは大きな決断を下している。本当であれば温存したかったメッシを、早いタイミングで投入するのである。早めに勝負を決めてしまいたいという願いだろう。53分、トゥレに替わってメッシ登場。そしてクラックは一瞬でその監督の期待に応えてみせた。
メッシが入り、イニエスタが中盤に下がったことで、バルサ中盤のパス展開は明らかに滑らかになっていた。そして幾つかのボール回しの後、イブラヒモビッチからエリア前のスペースに鮮やかなパスが送られる。ここに走りこんだメッシはそのままエリア内に突入し、ここぞのタイミングでシュート。ビラールはなんとかボールに触れはしたが、その勢いを消すことは出来なかった。ピッチに入って最初のプレーで、あっさりとゴールを奪う。なんて選手だろうか。
バルサはその後も、アトランテを攻め立てた。そして8分後、歴史に残るゴールが誕生する。イブラからのナイスパスを受けたイニエスタが左からエリア内に侵入し、右のメッシらにボールを送るかと見せかけ、密集地帯にいた隣のペドロを使うのだ。これで勝負あり。ペドロは史上初、一年で6大会でゴールを決めた選手となった。
2点のリードを奪い、バルサ選手にも精神的余裕も生まれたのだろう。ゆとりをもって、選手たちはアトランテ陣内に攻め込んだ。そしていくつかの楽しいトリックプレー、ゴールチャンスも見られたのだが、さらなる追加点はなし。ボージャンがゴール前で再三チャンスを外し、彼だけは内面での焦りを感じさせた。
一方で守備面では若干のギア低下もあり、アトランテに何度かのカウンターも許している。最終局面でのプジョルを中心とした守りにて失点はしなかったが、オープンな展開はどうも精神衛生上よろしくない。一度は1対1の場面も作られていて、バルデスの好守によって事なきを得たものの、入っていれば厄介なことになっていたかもしれない。決勝は、ビシッといこう。
そして心配なのは、左太ももにダメージを受けて途中交代したイニエスタの怪我の具合。詳細は検査待ちだが、明らかなのは土曜日のピッチに彼がいないことである。
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