FCバルセロナがついに世界チャンピオンの称号を手にした。土俵際まで追い詰められるも、バルサ戦士としての誇りが劇的な同点弾を生み、そして逆転弾へと結びつけた。おめでとう、カンペオン!ペップの涙に、こちらもついついもらい泣き。
前半の出来栄えは、ため息しか出ないほどに散々だった。ペップバルサの歴代ワーストといってもいいほど、その動きは悪かった。大舞台の経験豊富な選手たちが揃っているにもかかわらず、どうも神経質な様子。この試合の重要性は、それほどに重かったのだろう。最初の45分で、褒められたプレーはほとんどない。流動性はなく、パスは不正確。前半に1本のシュートも打てなかったバルサなど、逆に貴重なくらいである。
エストゥディアンテスは実によくバルサのプレーを研究していた。ポジショニングが非常に巧く、バルサのボールはことごとく南米王者の網に捕らえられた。ラフにすぎるところはあったが、この日の主審アルチュンディアは肉弾戦に寛容であり、さらにジャッジも不正確だった。苦戦の理由は審判でないにせよ、レベルに見合う人選ではなかっただろう。
バルサはこの試合でも、先制を許している。37分、左サイドのディアスからのロングボールに、ボセッリが頭で合わせてのゴールだった。アビダルがどうにか阻止しようと競り合ってはいたが、ボセッリは体勢を崩さずお見事なヘディングシュート。ボールはバルデスのジャンプも及ばず、ゴール左隅に突き刺さった。ゴラッソの類といえる。エストゥディアンテスは事実上、試合を通じこれが最大にして唯一のチャンスだった。それを決めさせてしまうのも、まあバルサらしいか。
前半のバルサのチャンスらしきものを挙げるなら、チャビの二つのプレーくらい。まずは7分、イブラヒモビッチの絶妙パスからエリア内に切れ込んだ場面だが、シュートかパスか迷った結果センタリングを選択し、そのボールには誰も届かず。続いては32分、スルーパスへの抜け出しでGKアルビルと交錯するも、ノーファールと判定された場面だった。
ハーフタイム明けから、ペップは動いてきた。ケイタに替えてペドロを送り込み、精彩を欠いていたメッシをメディアプンタに移動させたのだ。後半に入り、バルサの動きは幾分改善されていた。ボールは幾らかつながるようになり、イブラヒモビッチは何度かいいチャンスを手にしている。だがこの日は、イブラの日ではなかった。打てども打てども、ボールは枠へ飛ばず。ドツボにはまっているようでもあった。
一方、途中出場のペドロは今回も気合の入ったプレーを見せていた。59分にはアンリのクロスに一歩届かず、69分の突破もあと一歩及ばず。彼のプレーには、得点の匂いが(唯一)漂ってはいた。実際、彼はこの試合のヒーローになるのだが、それはしばし後のお話。
エストゥディアンテスは後半45分で1本のシュートも放っていない。彼らの狙いは、とにかく虎の子の一点を守り抜くことだった。バルサの攻撃に歯を食いしばり、耐え抜く。そしてそれは、功を奏すかに思われた。彼らが世界王者の座を獲得するまで、残りわずか3分だった。試合終了が近づき、バルサはピケも相手エリア内に居座るパワープレイに出ていた。これでもか、と送り込むロングボール。それを跳ね返すエストゥディアンテス。美しさも何もない。だがそれが、決まってしまうからこのチームはすごい。
87分、南米王者のクリア仕切れなかったボールがエリア内に舞い込み、それをピケが願いを込めて頭で前のスペースへと送り込む。そこにいたのは、聖ペドロだった。このラッキーボーイはGKアルビルの位置を瞬時に判断し、ちょこんと彼の頭上を越えるヘディングシュート!それがついにネットを揺らし、土壇場でバルサは同点に追いつくことに成功した。なんてヤロウだ、このペドロめ!!
そして突入した延長戦。気力と体力の大半を消耗していたエストゥディアンテスにとって、望みはペナルティ合戦に持ち込むことだけだった。しかし勢いを得たバルサを止めるのは、極めて困難な作業となる。とりわけ、83分に登場し元気いっぱいのジェフレンが効いていた。いいアピールになっただろう。また後付となるが、延長前半にメッシが放った際どいフリーキックは逆転弾の予兆だったか。試合を通じてほぼ行方不明だったクラックが、ここにきて静かに躍動し始めていたのである。
ゲームは延長後半に入り、両チーム共に疲労の色が濃く見えていた。そういう時こそ、仕事をやってのけるのが大クラックであり、大スター選手だ。119分、アルベスのアーリークロスに突如姿を現したのが、レオ・メッシ。ここぞの集中力で一気にスペースへと走りこみ、誰よりも速くボールに追いついては、胸でそのボールをゴールにねじ込んで見せたのには、流石としか云うほかにない。魂を込めた、胸エスクードでのシュートってのが実にいい。とてもいい。
そうして120分にも及んだ激戦をバルサが1-2で制し、クラブ史上初となる世界王者の座に就いた。これにてペップバルサは2009年、獲得可能なすべてのタイトルをその手中に収め、フットボル史上に燦然と輝く年間六冠を達成した。おめでとう!そしてありがとう!その道がいかに険しいものだったかは、試合終了後のグアルディオラの涙が物語っている。次なる挑戦に休む間もないけれど、思う存分、クリスマス休暇を満喫してほしい。 !Felicidades, campeones!
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