試合内容からすれば、不公平な結果といえる0-5での勝利。この日のバルサは決定力に優れ(特にメッシ)、一方のテネリフェにはその決定力と運がなかった。
直前の試合でレアル・マドリーがマジョルカを下していたため、首位を守るためにはバルサには勝利が必要だった。しかしゲームは地元テネリフェの攻勢にバルサはさらされることになった。積極的にプレスを仕掛け、インターセプトを狙ってくるテネリフェに対し、バルサはいまひとつプレーに入りきれていない感じ。パスミスは多く、危険なエリアで幾度となくボールを失っていた。
序盤はピンチの連続だった。プジョル&マルケスのコンビが最初は落ち着かず、その前でのマークも甘かったことで、背後のスペースをアルファロにとことん狙われた。5分のシュートはクロスバー直撃弾となり、跳ね返りもシュートされるもどうにかブロック。7分にはバルデスが1対1で跳ね返し、13分にも守護神は最後の壁となり立ちはだかった。このうちの1つでも決まっていれば、試合展開は厳しいものとなっていたはずだ。
決定機を3つ逃したことは、テネリフェにとって高くつくことになる。序盤のドタバタを凌いだバルサは、その後、じわじわではあるがペースを掴みかえしていく。逆にテネリフェのギアは、最初飛ばしたことで少しずつ低下してきていた。そして35分、ついに王者バルサのクラックたちが仕事をやって見せるのだ。左サイドを華麗な切り替えしドリブルで突破したボージャンがライン際まで切り込み、マイナス方向のセンタリング。これになんなくメッシが合わせ、呆気なく先制点を奪い取ったのだ。
それまでに決定機はボージャンが一度単独突破を仕掛けた時くらい。久々のチャンスであっさりとゴールを決めてしまうところが、メッシの偉大さである。ここから10分で、バルサは一気に畳み掛ける。43分、特に得点の匂いのしない位置からのフリーキックをメッシが蹴り、巧くデフェンサの前に入り込んだプジョルが頭で決めて0-2。
さらにロスタイムにはイニエスタが鬼キープの後、一旦つまづいたにもかかわらず、絶妙のタイミングでボージャンへスルーパスを供給。エリア内に走りこんだボージャンはここぞで右のメッシにボールを譲り、10番はこれをきっちりと仕留めた。これでスコアは0-3。出来すぎの結果を手に、バルサはハーフタイムを迎えた。
前半のうちに3点のリードを手にしてしまえば、後半は無理をする必要性はない。集中だけは欠かさないようにじりじりとボールを回し、相手の勢いを削ぎつつ、隙あらば攻め込んでおけばいい。テネリフェは前半の努力と結果のバランスの悪さに、凹んでいたのだろう。エネルギーも切れたと見え、確実に勢いはなくなっていた。
そういえば試合を通じて、メッシとは対照的に、呪われているかのごとくゴールが決まらなかったのはアンリだった。惜しいシュートは放つのだが、わずかに枠を逸れたり、ポストに嫌われたり。近く、彼に幸運が味方することを願う。
そして75分、バルサに追加点が入ることとなる。チャビからの縦パスを受けたボージャンが、そのボールを上手く処理できなかったことで結果的にポスト役となり、メッシへボールを落とす。これを2009年度バロン・デ・オロは狙い澄ましたバセリーナにて、事も無げにゴール右角に決めてしまうのだから恐ろしい。ゴールって、なんて簡単に入るんだろう、と思ってしまう。これにはテネリフェファンもお手上げで、惜しみない拍手が送られた。この日のメッシはさほど汗は流さず、効率的にハットトリックを達成。別世界のようだった。
試合最後の主役は、地元出身で今やスターの端くれとなったペドロだった。76分、大きな歓声とほんの少しの口笛を受けて登場したペドロはこの日も独特のゴールへの嗅覚を見せ、85分には5点目の立役者となる。左のアンリからボールを受けたペドロはエリア内で粘りに粘り、どうにかクリアしようとしたルナのオウンゴールを呼び込むのだ。約束どおり、得点に笑顔を見せなかったペドロだったが、スタンドの父ちゃんは嬉しそうにしていた。なかなかにほほえましい光景。
こうしてバルサは2010年最初の勝利を手にし、クラブにとって忘れられない場であるエリオドロ・ロドリゲスを後にした。マドリーのプレッシャーにも屈せず、首位をがっちりキープ。多少運に味方されたスコアではあるが、ありがたく頂戴することにしよう。これで運気が上昇すれば、実にありがたい。ゲームのMVPは、3アシストのボージャンか。エストレーモとしていい働きをしていたので、今後につながりそうで嬉しい。
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