試合後にペップが「ベストゲームのひとつ」と語っているように、プレーの出来栄えは特に前半、非常に良かった。文字通り、相手を圧倒していたのだ。
エル・モリノンの熱狂に後押しされ、スポルティング・ヒホンは積極的にプレスを仕掛けてきた。しかしバルサが誇る攻撃的ちびっ子たちは、その圧力をものともしない。徐々に戻ってきている、流れるパスワーク。プレスをかわしつつ、バルサはすいすいとボールを展開した。
最初のビッグチャンスは11分。メッシがドリブルで仕掛け、エリア前でチャビと連携したイニエスタがシュートまで持ち込むのだが、果敢に前に出たGKファン・パブロによって阻まれている。また直後の12分にはドンの右からのクロスにイブラヒモビッチが頭で合わせ、これがポストを直撃するも、オフサイドの判定となっている。16分にもメッシが、得意の形で中央へ切れ込み、シュートを放っている。
ゲームはバルサが圧倒的に支配していた。ただボールを回すだけでなく、相手エリアを脅かし、チャンスも作り出している。しかしこの日はゴール前での仕上げが決まらなかった。降り落ちる雨も影響していたのだろうか。だがこういう時にやってくれるのがペドロである。鋭いゴール感覚と、勝負強さ。頼れる選手になったもんだ。
29分、自陣でのフリーキックを素早く行ったバルサは、イニエスタからペドロへと絶妙のパスが渡る。センターサークル付近から、広大なスペースを駆け上がるエストレーモ。彼はファン・パブロとの1対1も落ち着いて制し、ついにヒホンゴールにシュートを突き刺したのだった。際立つ決定力。ペドロにとってはこれが今季15個目となるゴールである。
この得点はヒホンの意識を、守備的なものとした。地元ファンの前で早く同点に追いつくことよりも、ゴレアーダを避けようとエリアを固めたスポルティング。バルサはそこに包囲網を築いたが、守りは崩せない。大きなチャンスを作ることなく、そのまま0-1で前半は終了する。
後半に入っても、バルサは攻め続けた。リードはわずかに1点。このままではなにが起こるかわからない。試合を決めてしまうには、早くとどめをさす必要があった。
そしてその機会は何度もあった。48分のズラタンのミドルシュート、51分にはペドロが深く持ち込み、戻したボールをイニエスタがシュート。64分にも切れ込んだペドロが落としたボールをメッシがシュートを放ち、73分にはペドロがフリーでのシュートを吹かしている。さらに74分、決まったかに見えたイブラのシュートも、さらに詰め寄ったペドロのスライディングも実らず、バルサは追加点を奪えなかった。普段ならもっと楽に勝てていそうなゲームなのに、そうはいかない。フットボルは難しい。
そうこうしているうちに、単発的ではあるが、ヒホンにも押し込む時間帯はやってくる。終盤、バルサは絶体絶命のピンチこそなかったものの、踏ん張らなければならない場面を何度か作られた。守備のためにメッシとプジョルがイエローカードをもらってしまったことからも、すんなりといかなかったことは判る。
ロスタイムになり、嫌な場所でふたつほどフリーキックを与えた時は、少々ではあるがパンプローナやビルバオでの悪夢が脳裏をよぎりもした。しかし今回は劇的な同点弾を許すことなく、そのままのスコア(0-1)でゲームは終了。貴重な勝点3を、ペップチームは持ち帰っている。
大量得点差となっていて不思議ではないゲームだった。やはり追加点を決められないと苦しい。だがペドロのゴールがチームを救い、正当な結果をものにした。リアソールでマドリーがまさかの勝利を手にしていただけに、値千金のゴール。バルサは2位との差を5ポイントのまま、後半戦を白星にてスタートした。安心を与え、次にさらに希望をもたらす内容と勝利だった。
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