どんな逆境であっても、このバルサを止めるのは困難である。逆風が吹こうとも、このチームは闘志を捨てることはない。それが明らかにされたゲーム。
ハプニングはまずウォームアップ中に発生した。週日中に別メニューで練習を行っていたダニ・アルベスが、ふくらはぎの痛みで欠場となったのだ。急きょ、マクスウェルが右ラテラルを務めることになる。朗報としては、怪我以来リーガでは初先発となるガビ・ミリートだ。
ゲームはバルサペースで始まっている。序盤、いきなりいい仕事をやってくれたのはレオ・メッシである。まずは4分、惜しくも右に外れた強力なシュートでGKコディーナにご挨拶をすると、その直後の7分、ゴラッソをぶち込んで見せるのだ。コーナーキックからの一連のプレー。トゥレからのバックパスをメッシは正確極まりないカーブシュートでねじ込んだ。目の前にいたデフェンサたちも無関係。妨害者たちを外から巻き込み、ボールはゴール左隅へと突き刺さった。
先制点を奪い、バルサはボールを支配した。ヘタフェにそれを崩す気配はない。波に乗るメッシは幾度となくヘタフェエリアを襲撃し、彼らを脅かした。18分、マクスウェル、イブラヒモビッチとの連携による崩しは圧巻。コディーナは身体を張り、どうにかこれを防いでいる。
だが好事魔多し、である。24分、言い逃れ用のない危ないスライディングタックルにてピケが一発退場。そうそうにバルサは数的不利になり、状況もこれにて変化する。ヘタフェが息を吹き返すのだ。27分にはシュートには至らなかったものの危ないクロスを上げられ、37分にはミクのシュートをバルデスがパラドン。これらはひとつ違えば、入っていてもおかしくはなかった。
バルサもしかし、ヘタフェ陣内で決定機を作り出している。39分にはチャビの飛び出しによるヘディングシュートがあり、43分にはラインを突破したイブラヒモビッチがコディーナも抜きシュート。しかしそれまでの処理に時間がかかり、戻ったデフェンサによってクリアされてしまった。あと一歩。
前半を1-0で折り返したバルサ。後半、早い段階でペップは選手交代を行った。52分、イブラに替えてブスケツを送り込んだのだ。だがこれは、プレーまで守備的になることを意味していない。むしろ、逆だった。メッシ一人を前線に残し、イニエスタの位置を下げて中盤を強化。チャビ、イニエスタ、ブスケツでボールを展開し、ケイタが思い切りいい抜け出しでチャンスに絡む。バランスを立て直したバルサは、数的不利など感じさせないプレーでヘタフェを攻め立てた。
59分、フリーだったケイタのシュートは惜しくもポスト左に外れてしまうのだが、66分にはその攻撃的精神が報われる。カウンターアタックだった。センターサークル横でチャビからのボールを受けたメッシが、猛然とドリブル突破。エリア内まで切れ込むと、3人のマークを引き付けつつ、右でフリーのチャビにボールを送った。これで勝負アリ。たったふたりの切れ味ある攻撃により、バルサは安心の2点リードを手にすることとなった。
カンプノウはこれで落ち着いた。特にその2分前、トゥレが太ももを痛めて交代していただけに大きい。ゴールの起点となったのが、その替わって入ったマルケスのボールカットとすぐさまのチャビへの正確なパスだったってのも良かった。
ゲームはその後、バルサが支配。さらに追加点を求め、貪欲にヘタフェゴールへ襲い掛かっていった。その精神が素晴らしい。決定的チャンスは81分と86分。メッシの強烈な左足シュートと、またもフリーでボールを受けたケイタの枠外シュート。今日のケイタは、シュートが入らない日。
そうして無事2-0でゲームが終了しようかという90分、本日最後のハプニングが起こった。エリア内でマルケスがケパを押し倒したとして、一発退場。ペナルティが宣告されたのである。それまでバルサ選手に対するタックルは放置しておいたくせに、ここにきて厳格なジャッジ。文句のひとつも言いたくなる。ソルダードがきっちり決め、スタジアムの怒号と共に終了のホイッスルが鳴った。
カンペオンの誇りを胸に、あらゆる逆風に打ち克ったバルサ。次への信頼と勇気をくれる勝利だった。ただ、ピケとマルケスが次節ビセンテ・カルデロンでは出場停止。怪我でアルベスとトゥレ・ヤヤも使えない。ペップにとっては頭の痛いアトレチコ戦となる。
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