アトレチコ戦で喫した初黒星と、それによる首都方面の圧力キャンペーンに対する現王者の返答。誰がそんなものに屈するものか。
ペップバルサはこのラシン戦も、怪我人過多に悩まされていた。ピケとマルケスが出場停止から戻り、トゥレ・ヤヤとチグリンスキーが怪我から回復したものの、今度はイブラヒモビッチが足首の不調で大事をとって召集外に。そこでペップはここ3試合出番のなかったアンリをスタメンに起用する。これが大正解だった。
序盤からバルサは、ゲームを支配していた。サンタンデールの対バルサ戦術をかわす、ロングボール戦法。選手たちは中盤を省略し、ミリメトロの長いボールをどんどんと前線に送り込んでいく。そして7分、マルケスからのパスがエリア内のアンリへ送られ、クレスポがクリアしきれなかったこぼれ球を詰め寄ったイニエスタが押し込んで先制点ゲット。“英国方式”により、バルサはあっさりとラシンゴールを陥れた。公式戦300試合出場を自ら祝う、スタンフォード・ブリッジ以来となるドンの得点だった。
先制点を得たバルサは、自分たちのペースでさらにゲームを進めていけるようになる。ラシンはボールを前に送ることすらままならず、シュートも打てない。そうして29分、ペップチームは追加点の機会を手に入れた。ブスケツの攻撃参加で得たフリーキックを、アンリが直接ぶち込んだのだ。ラシンの壁の間をするりと抜ける、なんとも幸運なゴール。しかしゴールには変わりない。ティティの悪い流れが、これで断ち切れることを願う。
さらにその5分後、またもやフリーキックでバルサは3点目を獲得する。ハンドで手にしたこのチャンス、キッカーはマルケスだった。蹴ったボールはいつものパワフル弾ではなく、クーマンのごとき放物線を描く正確なショット。壁の頭上を越え、ボールは左ポストをかすりながらゴールネットを揺らした。
バルサと同じように主力を多く欠くラシンは、ほとんどバルデスの脅威とはならなかった。36分にはシスコにゴールを割られるのだが、これはオフサイドの判定で無効。最初は微妙な判定かと思えたが、実際はしっかりとしたオフサイド。白メディアの突っ込む余地もない。注目のカナーレスも見せ場は特になし。まだこれからの選手といった印象だった。この日のラシンなら、そうなって当然か。
後半もバルサの支配は続いた。前半だけで3-0となっていたので、さすがにギアは幾段か落としている。火曜日のシュツットガルト戦も脳裏には浮かんでいただろう。ラシンも挫けていたため、ゲームのリズムは低めとなった。こういうときにファンが望むのは、フレッシュな若手の投入。ペップはそれに応えてくれた。76分、トゥレと交代でチアゴ・アルカンタラが登場したのだ。最後の交代により、11人中の9人がカンテラーノという素晴らしさ。
さらにゲームを締めくくる得点が、チアゴによって生まれたのだから言うことはない。短い時間ながら、堂々としたプレーっぷりと共にテクニックや当たり強さ、ゲーム感覚を見せたアルカンタラは84分、メッシがエリア内に切れ込み、ライン際から戻したボールを思い切りよく蹴りこんだ。ボールはデコのシュートっぽく、デフェンサに当たりながらもゴールに突き刺さった。
こうしてバルサはライバルに恵まれたところはあるものの、多くの欠場者を感じさせない内容のプレーで3ポイントを確保した。しかしこういう勝利で、「リズムがなかった」と引き締めるのがペップらしい。シュツットガルト戦にむけて弾みはついた。このチームなら、この難しい局面も乗り越えていくだろう。
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