またもメッシのひとり舞台。彼が乗りに乗り、やってやろうと燃えている試合は、とにかく手がつけられない。バルサの最近の12得点中、11得点がレオの足によるものなのだ。
この試合、グアルディオラは中盤をケイタ、トゥレ・ヤヤ、ブスケツの三人で構成してきた。怪我で休みのチャビに加え、イニエスタまで先発から外したのは意外だった。前線はペドロ、メッシ、イブラヒモビッチ。アンリとドンは、水曜のオサスナ戦へ温存か。プジョルもまた、ベンチスタートとなっている。
ゲーム開始直後、いきなり仕事をやってのけたのはメッシだった。4分での出来事。左サイドのペドロが切れ込んであげたクロスを、頭でちょこんと合わせてゴールにしてしまうのである。軽く当てただけのシュートだったが、GKロベルト一歩も動けず。これも乗ってるクラックの成せる業か。
あっさりとバルサに先制を許したサラゴサではあったが、熱狂的なラ・ロマレダの観客に後押しされ、戦いを挑んできた。だが彼らは熱いハートが先に行っているようで、プレーにもうひとつ落ち着きがない。気持ちは感じられるのだが、その攻めは効果的とはいえなかった。惜しいチャンスは17分、ライン裏へ抜け出したエリセウのシュートを、ロケットのごとく戻ってきたアルベスがブロック、コーナーに逃れた場面。
一方のバルサはサラゴサの攻撃をかわしつつも、決定機を幾つか作り出していた。7分、ピケによる意表を突いたヒールシュート。23分、ペドロとマクスウェルの連携で左を突破し、上がったクロスをファーのトゥレがアクロバティックなボレーシュート。30分、右コーナーをフリーのイブラがヘディングシュート。特にこのズラタンは決定的で、外してしまうところに彼の焦りが窺える。
このサラゴサ戦はメッシとイブラヒモビッチが対照的だった。メッシがいとも簡単に得点を重ねる反面、イブラはどうした?と心配になるほどシュートが枠に飛んでいかない。懸命にスペースへ流れ、パスを引き出そうとしているもののボールが出てこない。出たとしても、オフサイドの網にかかってしまう。表情は硬く、もがく様子がよく表れていた。
後半、サラゴサはさらに気合が入っていた。ハーフタイム明けに登場したラフィタが効いていたようだ。バルサのボールの出所に盛んに圧力をかけ、どんどんと前線へボールを送り込んでいく。ゲームはボールの行き来が激しい展開となっていた。
そして60分を経過し、両監督はここで動いてくる。バルサはトゥレに替えてイニエスタを投入。サラゴサはコルンガをピッチに送り込んだ。これより試合は動きを見せた。
66分、まず輝いたのはレオ・メッシだった。中盤でボールを奪い取った10番は、そのまま猛然とサラゴサ陣内に突入する。電撃ドリブルでエリア内まで侵入したクラックは三人のデフェンサをものともせず、最後はポルテーロの左脇を突き抜けるシュート。なんというプレー。圧巻。もう言葉はない。彼は世界最高のフットボーラーだ。
0-2となり、ゲームはほぼ決した。だがメッシはまだ満足などしない。78分、イニエスタからの右アウトサイドパスを受けたメッシが、ズバッとゴール右隅に鮮やかなシュートを叩き込む。2試合連続ハットトリック達成。いい意味で、開いた口がふさがらない。0-3。
これで試合は終わったかに思われた。だが、何があるか分からないのがフットボルである。残り10分、ゲームはドタバタとした展開を迎えることになった。サラゴサファンを喜ばせたのは、途中出場のコルンガだった。このスピードあるデランテロは、84分と88分、バルサ守備陣の隙をつき、立て続けに2点を奪ってみせた。共に後方からの一発の縦パスでラインを突破されてのもの。たまにある失点パターンであり、速いデランテロがいる場合は、十分に注意しなければならない。
こうしてドタバタとゴールが入っていく間、バルセロニスタを仰け反らせていたのはイブラヒモビッチだった。昨シーズンのセリエA得点王はどうしたことか、77分、83分、87分とゴールチャンスを逃している。いずれも本来の彼なら決まっていたであろう場面で、相当に気持ちが足を堅くしているようだ。
ゲームの最後には、またもメッシがエリア内にドリブル突破を仕掛け、ペナルティを手に入れる。これまた、悪魔的ドリブルだった。そしてレオはキッカーをイブラに譲る。ああ、なんて緊張感のあるペナルティキックだっただろうか。ズラタンはこれを、きっちり決めた。だがその顔に、笑みはなかった。自然と笑顔が出るゴールまで、もう少し時間がかかりそうだ。
なにはともあれ、ゲームは2-4で終了。バルサはラ・ロマレダにて重要な勝点3を手に入れた。手がつけられない状態のメッシが、どこまでいってくれるのか。“好事魔多し”ともいうし、好調すぎるがゆえに、怪我などないようにと、心より願う。なんて幸せな不安だろうか。
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