なにかと盛り上がったゲームだった。内容ではバルサがアーセナルを圧倒。前半だけで勝負を決することも出来たはずだった。だが後半、ゲームは思わぬ方向へと進んでいく。
試合前日、両監督ともに「ボールを持って回す」と自己流への信念を示していた。そして注目のキックオフ。直後から圧倒的なテクニック、ボール展開速度、情熱によってボールを支配したのはペップチームだった。序盤から押し寄せる波のごとくアーセナルエリアに攻めより、これでもかと決定機の連続。最初の20分だけで、少なくとも10回は得点機を作り出していた。それぞれを記述するのが面倒なほどだ。
なかでも決定的だったのは、6分のイブラヒモビッチ。アルベスからのクロスにゴール正面で合わせた9番だったが、当てるシュートを吹かしてしまいゴールならず。イブラは13分にも至近距離からフリーでシュートを放っているが、GKアルムニアの攻守に阻まれた。15分の連続攻撃も圧巻。最後はチャビが単独シュートに持ち込むのだが、またもアルムニアの壁が立ちはだかった。
その他、5分のメッシ弾、18分のピケのヘッドなどがあったが、序盤はとにかくアルムニアが当たっていた。狂い咲きといってもいいレベルで、バルサのシュートをとにかく弾いてくれた。バルサがシュートを外したともいえるが、アーセナルが運に恵まれていたのは確かだろう。前半にゴレアーダとなり、勝負がついていた可能性は高い。アルムニアはこの試合、9つのシュートをセーブしている。
バルサの最初の20分は、史上最高といっても過言ではない出来だった。ただゴールだけがなかった。猛攻が実らなかったバルサは、その後、少しリズムを下げる。そんな瞬間を突き、23分、パス展開からナスリが惜しいシュート。これが前半のガナーズの唯一の好機となる。37分にもあわやという場面を作られたが、こちらはオフサイドと判定されている。
守備面ではツキのあったアーセナルだが、怪我面では不幸に見舞われた。28分にはアルシャビンが、44分にはガラスがそれぞれ負傷によってベンチに下がっている。試合終了前、セスクもまた負傷。第2戦はいずれにせよカード累積で出場停止のセスクだが、シーズンも失うことになりそうだ。
0-3でもおかしくはない展開だったが、試合は0-0のままハーフタイムに突入した。だがあんなに入らなかったゴールがウソのように簡単に、後半開始直後に決まってしまうのだ。46分、ピケからのロングボールにマークを外していたイブラヒモビッチが抜け出し、アルムニアの位置をよくみてバセリーナによるゴールを奪ってみせた。鮮やかなり!調子を上げてきたぞ、我らが9番。
非常に重要なアウェーゴール(しかも先制点)が決まり、ペップバルサの目標第一弾はクリアされた。だいぶ気持ちも楽になったことだろう。だがアーセナルは即座に反撃をした。52分にはセスクのクロスにベントナーが頭でどんぴしゃに合わせ、これをバルデスがパラドン。いつもビクトルには救われる。
次のゴールも、バルサだった。得点者も同じイブラヒモビッチで、パターンも類似していた。59分、今度はチャビからの縦パスに抜け出したズラタンが、アルムニアとの1対1から思い切りよくシュートを叩き込んだのだった。イブラのマーク外しも上々、チャビのパスもお見事。エミレーツ・スタジアムはこのゴールで言葉を失った。
バルサにとって過ちだったのは、0-2となったことでアクセルを大きく緩めたことである。もう1点奪っておけば問題はなかったのだが、変に油断したのはまずかった。66分、ベンゲル監督は右にスピードのあるウォルコットを送り込んでおり、67分に彼はさっそく危ない場面を作り出している。しかしバルサはそれに対応できず、69分にはマクスウェルがあっさりと背後を取られてそのままゴールを陥れられた。バルデスは反応したものの、シュートの威力がそれを上回った。
1-2となり、スタジアムもアーセナルも息を吹き返す。押せ押せでバルサ陣内に攻め入るガナーズ。ペップはこれにシステム変更で応じようとするが(76分イブラ→アンリ)、それも不十分だった。ゲームは非常にオープンな展開となり、もう何が起こっても不思議ではなかった。そして83分、あろうことかエリア内でのプジョルの守りがセスクへのファールとされ、カピタンは一発退場。与えられたペナルティをセスク本人が決め、スコアは2-2となった。
これで72分に黄紙をもらっていたピケに続き、プジョルもまた第2戦は出場停止。ペナルティは仕方ないにせよ、せめて黄色にしておいてほしかった。一発赤はちょっと厳しい。
試合はそのまま、2-2にて終了した。圧勝できていたかもしれないチャンスを逃し、同点に追いつかれたのはバルサにとっては痛手だった。だがフエラで2点を奪ったのは、普通に考えればとてもポジティブな結果だ。セントラルのやり繰りは問題だが、油断しなければセミファイナルは大きな門をバルサに向けて開いている。楽しみなり、カンプノウでの第2幕。
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