運命のインテル戦へとつなぐ、出来れば弾みとしたい最下位チームとの一戦。それだけに心はそちらに取られていたようで、なんとなく締まらないゲームとなった。
このゲーム、言ってみれば勝つことが最優先目標である。内容は好いに越したことはないが、平凡であっても特に問題はない。ペップ・グアルディオラはピケ、メッシらをベンチに温存。チグリンスキー、マルケス、ジェフレンといった出番の少ない選手たちが先発となっている。ペドロも休みで、アンリがスタメンとなった。
試合前、後ろには引かないと言っていたヘレス監督ネストル・ゴロシトは、たしかにべったりとは引いてこなかった。だが中盤での激しいプレスがあるわけでもなく、バルサはチャビとトゥレを中心に比較的楽にボールを回している。しかしリズムはいまひとつで、横パスが多く、ミスもしばしば見られた。ベストには程遠いバルサだった。
だが14分、特に苦労せずにペップチームは先制する。チャビからの一本の縦パスを受けたジェフレンがエリア内に切れ込み、一度は滑ってこけそうになりながらも、それが結果的にフェイクとなり、メッシのごとく深く切れ込んでのゴールとなったのだ。挑戦する気持ちと、正確なシュートが生んだ得点だった。ナイスゴール。
アンリもまた、前半に活躍した選手だった。動きも活発だったし、頑張りが伝わってきた。それが24分、得点となって返ってくる。ケイタからの(チャビ級)スルーパスにイブラヒモビッチが反応し、エリア内に突入する。前にはGKレナンのみ。だがここでズラタンはパスを選択し、左を併走するアンリがそれを決めた。
だがその直後、バルサはふと気を緩めてしまう。最終ライン付近でトゥレ・ヤヤとチグリンスキーの連携が上手くいかず、オレジャナに奪われてボールは最前線のベルメホへ。勢いに乗ったベルメホはそのままダイレクトでズバンと獰猛なシュートをゴール右上角に、文字どおり突き刺した。さすがのバルデスも、これはどうしようもなかった。
そのままなんとなく前半を終え、迎えた後半。バルサの出だしは、目を覆わんばかりの酷さだった。簡単にボールを失い、簡単にパスを回され、簡単にエリアに迫られる。最初の5分で、ヘレスは2度の決定機を手にしている。それで事なきを得たのは、聖バルデスのパラドン連発があってこそだ。ここで同点とされていれば、事態はずっと厳しいものとなっただろう。
これはダメだと判断したペップは、すかさずピッチにメッシとピケを送り込んでいる。もう少し休ませたかったところだろうが、致し方ない。そしてチームは平常を取り戻し、それ以降はヘレスにチャンスを与えることもなかった。最高のプレーが戻ったわけではないが、問題も起きなかったので良しとしておこう。チームを落ち着かせる追加点は、すぐに訪れた。
56分、トゥレがエリア左から巧みなボール運びで裏のスペースへ突破し、中央へ見計らったパスを送る。ここに走りこんでいたのがイブラヒモビッチで、あとは贈り物のボールをボールへと押し込むだけだった。3-1。勝負の大勢は決した。
こうなれば、あとは上手に時間が経過するのを待つだけなのだが、終盤になって何故だかゲームは荒れた。それまではよくボールを追っていたヘレスにラフなプレーが目立つようになり、メッシやボージャン、イブラが次々と地面に打ち付けられた。審判は当然ながらカードを連発。最後の10分で7枚のカードがヘレスに出されるという、異常事態に発展した。怪我人が出なくて本当によかった。
試合終了後、バルサの選手たちは特製Tシャツ(かっこいい)を全員で着用、ファンにインテル戦でのサポートをお願いした。書かれていたメッセージはカタラン語で、「僕たちは死ぬ気で戦う。水曜日は夜8時、みんなでカンプノウへ来てほしい。逆転だ」。素晴らしき魔法の夜がバルセロニスタを待っている。
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