チャンピオンズで傷を負ったバルサにとって、このエル・マドリガルでのビジャレアル戦は試練だった。だがペップと選手たちはこの苦境に、王者のリアクションをもって応えた。輝くバルサが甦り、イエローサブマリンを跳ね返したのだ。
ペップはこの重要な試合に、インテルとの戦いで成果を残せなかったイブラヒモビッチをベンチに置いた。代わりにスタメン起用されたのが、ボージャン。この采配は効果を発揮した。チームに活気が戻ったのだ。
だが序盤はビジャレアルが積極的だった。目立っていたのはニルマールだ。まずは4分、バルデスがエリア外でのボールクリアに失敗したところを受け、空のゴールに向かってロングシュートを放つも枠外。さらに7分にはカニの気の効いたパスを受けエリア内に突入し、バルデスと1対1となるも、シュートを吹かして先制はならなかった。ニルマールがこのいずれかを決めていれば、ビジャレアルに金星のチャンスもあっただろう。
だが攻守の切り替えが早い展開の中から、先に均衡を破ったのはバルサだった。18分、チャビからの縦パスを、身を翻しながら受けたメッシが守備網を突き破り、ネットを揺らすのである。デフェンサの足に当たって好い方向にコースが変わったのもツキがあった。
このゴールによって、バルサは落ち着いた。逆にビジャレアルは、少々ダメージを受けたようだった。最初の勢いはなくなり、ペップチームがボールを支配するようになる。前々日の練習での怪我が心配されたチャビも問題なし。高レベルなプレーでチームを操り、バルサ復調の中心となった。33分には久々にフリーキック弾をネットに突き刺してもいる。意外なほどに容易く0-2。
それだけでも上出来だが、ハーフタイム前にバルサはさらにリードを広げる。42分、チャビからの縦パスを受けたボージャンが、次のワンタッチで鮮やかにゴンサロを抜き去る。そしてドリブルでエリア内に持ち込み、そのままディエゴ・ロペスの壁も楽々破ってみせたのだった。ボージャンの魅力が存分にちりばめられたナイスゴール!0-3となり、試合はほぼ決着した。
後半、ビジャレアルのガリード監督は勝負に出る。カニとイバガサを下げ、マルコス・セナとホセバ・ジョレンテを送り込んだのだ。これが功を奏した。3点差をつけてバルサがギアを落とす半面、ビジャレアルは意地の反撃に出る。バルデス、ならびに守備陣が仕事をする場面も三度ほど訪れた。47分のコーナーからのカプデビラ弾は決定的だった。
だがそれらの黄色い勢いも収まり、ゲームはこう着状態となっていく。バルサもビジャレアルも相手ゴールに迫れない時間帯がしばらく続いた。スコアが動いたのは、67分になってからである。ビジャレアルのカウンター攻撃。ニルマールから絶妙なるスルーパスがライン裏に飛び出し(プジョルのスライディングもあと数センチ届かず)、抜け出したジョレンテがダイレクトにゴールへと流し込んだのだった。
1点を返されはしたものの、まだ2点のリードはある。バルサとしてはただ時間を消費しておけば良かったのだが、ビジャレアルのその1点がペップチームに火をつけた。ここからバルサ選手たちは再び、攻勢に出るのである。このあたりの精神がいい。
ゲーム(観客)が混乱したのは、81分の選手交代時だった。トゥレと交代するためにブスケツがピッチを去ろうとしていた際、なにやらセルヒオはジョレンテと揉めていた。そしてビティエネス主審はカードを提示。誰もがブスケツへのカードだと取り、2枚目で退場と思ったが、実はそれはジョレンテへの警告だった。しかしブスケツはすぐに交代せず、いったい何をやっていたのか。
そして試合はバルサがコントロールしつつ終盤へと入っていき、メッシ、ペドロが惜しいシュートを放っていく。85分にはイブラと交代する直前のボージャンが、決定機を掴みもしている。この日のボージャンは非常にアクティブ。シーズン最終盤、期待していいだろう。ゲームの最後に花を添えたのは、やはりこの人メッシだった。87分、チャビのスルーパスを受けたアルベスが右サイドを駆け上がり、メッシへの横アシストパス。目前にはディエゴ・ロペスが立ちはだかったが、レオには関係なかった。落ち着いてボールを押し込み、1-4としている。
こうしてペップチームは、真価が問われる一戦にて本来の持ち味を発揮し、苦手ビジャレアルを一蹴した。これがマドリーの圧力に対する、王者としての返答である。チャンピオンズを失ったダメージは、バルサにはない。このまま残り試合も勝利し、リーガを戴くまでである。
|