余裕の勝利かと思いきや、心臓に悪いひやひやの展開に。試合終了の瞬間は、ちょっと他にないくらいに安堵した。
難所のサンチェス・ピスファンだろうがなんだろうが、優勝のためには勝利しか価値のないバルサ。必勝の期してペップ・グアルディオラがピッチに送り込んだ先発11人は、エル・マドリガルの先発と同じだった。現時点でのベスト布陣。前線はカンテラーノちびっこ三銃士だ。その他、合計カンテラが8人。にやり。
ゲームは序盤、チャンピオンズ出場権を確保したいセビージャが積極的に出てきていた。バルサの中盤に圧力をかけ、主導権を掴もうとしていた。だが気合ではセビージャに負けるはずもないペップチームは、すぐさま自らに流れを引き寄せる。まず仕事をしたのは、ギガクラック・メッシだった。
わずか5分、マクスウェルが左から中央へ切れ込み、絶妙タイミングでレオにパス。オフサイド網は破られ、胸でボールをコントロールしたメッシはあっさりと聖パロップも攻略した。身体をひねりながらの、上手なシュートだった。
ほしかった先制点を早い時間に獲得したバルサは、これにてリズムを上げた。それも半端ではないほどに上げたといっていい。エミレーツでのアーセナル戦を思い出させるような、輝くフットボルを展開するバルサ。セビージャはボールに触れない。近づいても簡単にいなされ、まるで子ども扱いするバルサ選手たち。スコア上でぼこぼこにされなかったのは、セビージャにとって幸運だった。
追加点は29分、絶好調ボージャンだった。チャビがアルベスからのパスをダイレクトで前線へ送り込み、そこに飛び出したボージャンがデフェンサたちを引き連れながらも執念でゴール。これでクルキッチは3試合連続弾。バルサのスペイン人選手としては、10年ぶりの快挙らしい。
37分には、アルベスからのクロスにゴール正面のメッシが合わせるも、シュートは枠の外。レオにしては珍しい吹かしだった。
前半のセビージャのチャンスはハーフタイム前40分、ルイス・ファビアーノの至近距離弾のみ。ただこれはフリーキックでの早いリスタートによってピンチとなっていて、後半に苦しむ伏線ともいえる。
ハーフタイムが明け、後半もゲームはバルサのペースで進んでいった。バルサの余裕ムードを強くしたのは、56分の出来事だ。スピードに乗ったボージャンを強引に止めたコンコが、2枚目のカードで退場。セビージャは追い込まれた。クレはここで勝利を確信したし、さらに追い風も吹いた。 ここからしばらくは、バルサのチャンスラッシュとなった。
58分にメッシ、59分にもメッシ、60分にはボージャン。後者のふたつはパロップの好守によって阻まれている。セビージャ守備陣は踏ん張った。しかしすべてを止めるのは、容易ではない。ペドロがやってきたのである。62分、メッシのエリア際からのシュートは壁にブロックされるのだが、すぐ横でボールを拾ったペドロがズバッとそれを突き刺す。勝負あり。誰もがそう思った。
しかしゲームはこの後、急変する。勝負のあやとなったのは、68分のボージャンの絶好機でのシュート失敗だ。これが決まっていれば0-4だったのだが、そうはならなかった。するとその直後、69分、セビージャはカウンターからカヌーテが1点を返す。ベンチにひじを打ちつけ怒るペップだったが、この時点ではまだ、名誉の1点だろうとバルセロニスタにはゆとりはあった。それが良くなかったのか。
問題は71分の失点だった。70分、ボージャンのミドルシュートが惜しくもパロップに弾き出された数十秒後、バルサはうっかりミスから1点を失うのだ。ファールを犯し、のんびりしている隙にセビージャに素早いリスタートを許し、完全フリーのルイス・ファビアーノが難なく右足を振り抜いて2-3。ここからの20分余は、クレにとっての責め苦だった。
時を同じくして、それまでは1-1だったベルナベウから、不愉快な知らせが次々と舞い込む。言うまでもなく、マドリーのゴールラッシュだ。嫌味のように、ビルバオにシュートを叩き込む白組。バルサがひぃひぃ言っているところへきて、5-1だなどと知らされることのなんと面白くないことか。マドリーの勝ちは動かぬものとなり、ペップチームは引き分けも絶対に許されない状況となる。セビージャが息を吹き返しての1点差。実に心臓に悪い。
クレはとにかく、時計の針が過ぎ去り、一刻も早くゲームが終わることを願った。バルサにもリードを再び広げるチャンスはあったが、疲れたボージャンのシュートには勢いがなかった。こんな試合でのロスタイム3分は鬼だ。長く思えて堪らない。ついに訪れた試合終了の瞬間は、かつてないほどに安堵した。ああ勝ててよかった・・・。
なんという試合だったろうか。カンペオンになるためには、苦しまなければならないようだ。とにもかくにも、リーガ連覇まではあと1試合。カンプノウにてバジャドリーを下せば、バルサの優勝は決まる。さあ、あと一歩。きっちり仕上げをして、地元ファンの前で笑おうじゃないか。バモス!
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