アトレチコとバルサのゲームは、必ずやスペクタクルなものになる。それはまあ、今回も例外といえなくもないのだが、いつもと異なっていたのはバルサの安定感である。カウンターを必殺の武器とするコルチョネロを、バルサがバルサの流儀でコントロールしたといっていい。
ビセンテ・カルデロンでは3連敗中。昨夜はマドリーが勝利を手にしている。プレッシャーを感じる要素は揃っていたのだが、この日のバルサは非常によくプレーに集中できていた。序盤はボールの奪い合いがピッチ各所で繰り広げられた。だが徐々にバルサが主導権を握り、アトレチコ陣内へと迫っていく。そして最初のシュートが決定機となり、さらには先制点へとつながるのである。
12分のことだった。メッシからのスルーパスに抜け出したビジャのシュートは惜しくも右ポストに弾き返されるのだが、これを拾ったペドロがエリア内に巧みなパスを供給。ここにメッシが走りこみ、クラックは事もなげにこのボールを左足アウトサイドで流し込んだ。なんて簡単にやってしまうんだろう、この人は。
先制点を奪ったことで、バルサ選手たちは非常に勇気付けられたようだった。ここからはしばし、バルサの時間帯といっていい。だが、それで侮ってはならないのがアトレティコというチームだ。油断をすれば、きっちりやられる。今回はコーナーキックだった。25分、ラウール・ガルシアのヘッド弾が炸裂。正直、観客としても少々ボーっとしていた。バルサ守備陣の準備が整う前に、上手くボール前に入られてしまった。
この同点ゴールでカルデロンは息を吹き返すのだが、それで萎んでしまわないたくましさが今のバルサにはある。オープンな展開を目論むアトレチコの狙いを阻止し、ボールをしっかりと支配すると共に、早々に追加点を決めてしまうのである。ゴールの主は、若旦那ピケ。左コーナーからのボールを鮮やかに胸でトラップすると、デランテロよろしく、ずばっとシュートをねじ込んだのだった(32分)。
そうして勝利へと前進したペップチームだったが、それで簡単に終わらせてくれるほどにカルデロンは優しい場所ではない。ハーフタイム後、ゲームはまた別の表情を持つようになる。影響力をとことん行使したのは、スタンドの観客たちだ。何かあるごとに、けたたましく騒ぐ観客たち。現実として、アトレチコはピッチ上で特にこれといって効果的な攻撃は繰り出してはいない。しかしカルデロンはやたらとヒートアップしていた。観ていて引いてしまうくらい、彼らは騒々しかった。
スタンドのプレッシャーに同調するように、バルサはアトレチコゴールへと近づけなくなっていた。それでも4度はチャンスを作ってしまうのがさすがなのだが、残念ながら、そのいずれもがほんの少しの精度不足。特にこの夜はビジャの日ではなかったようで、彼のシュートはあと一歩のところでデ・ヘアの好守によって阻まれ続けた。このポルテーロの活躍がなければ、試合はゴレアーダとなっていたことだろう。
ゲームはそのまま、アトレチコの反撃を許さず1-2で終了している。バルサ勝利!ついにカルデロンの悪夢に終止符を打った!ペップ、リーガでカルデロン初攻略!めでたし!
・・・・・・・・・・・・・・と祝勝ムードに包まれるはずだったのだが、それを許さなかったのがゲーム終了間際のレオ・メッシの負傷だ。ウイファルシの悪質なタックルを受け、担架で運び出されるクラック。顔を覆い続けるその様が、事の深刻さを物語る。何故あのタイミングで、あのようなファールをする必要があったのか。大事でないこと、それだけを祈る。
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