予想通りに簡単な試合ではなかったが、難しすぎる試合でもなかった。事をややこしくするのは大抵、作り出した好機を活かしきれない時だ。
「他チームがバルサに勝利をプレゼントするのであれば、自分たちは相当なるポイントを積み重ねなければならない」 これは試合前日のジョゼ・モウリーニョなる男の発言だが、彼のこの軽薄なコメントが過ちであったことは、"カテドラル"にてハッキリと証明された。バルサが勝利しているのはライバルたちが気配りをしてくれているからではない。ザ・実力。スポルティングもアスレチックも全力を尽くした試合の結果、最終的にバルサが勝利を手にしているのである。
このサン・マメスでのアスレチック戦で、バルサは幾つかの逆境を克服している。メッシの不在。降りしきる雨。圧力鍋と化した"カテドラル"の敵対する雰囲気。ぼこぼこの芝生。言い訳にしたくなる要素満載のこのゲームを、バルサはいつもの攻撃的フットボルにて勝利したのだ。なんと素晴らしきことだろうか。
前半を終えて0-0というのは、水曜日のスポルティング戦と同じである。しかし内容は大きく異なっていた。ビルバオにプレーらしいプレーをさせず、シュートも打たせず、逆にこちらはイライソスの守るゴールを幾度となく脅かした。問題はこのところ、手にしたチャンスを活かせない点だ。11分、チャビのパスを受けたケイタのシュートはイライソスのセーブに阻まれ、12分、イニエスタの絶妙パスに抜け出したビジャのシュートはまたしてもポストに弾かれ・・・・ビジャは一度、お祓いでもしてもらったほうがいいかもしれない^^;
チャビ、イニエスタ、ブスケツが展開するパスに、アスレチックは付いていくことは出来なかった。目の前の嵐が通り過ぎるのをどうにかやり過ごすのが、彼らの精一杯。アスレチックの初シュートは、実に時計が31分を指し示してからのことである。そしてその3分後となる34分、マテウ・ラオス主審はイニエスタに無用のハードタックルをかましたアモレビエタに対し、赤紙を提示する。サン・マメスのスタンドはこの判定に激怒したが、ボールに触れていないのだから、少々厳しいとは思うが仕方ない。10人となったアスレチックはますます、バルサの攻めに防戦一方となる。
しかしフットボルとは簡単にはいかないスポーツだ。バルサにとってこの試合最大のピンチはハーフタイム直後の49分に訪れている。ビルバオの攻めをクリアしきれなかったことでバルサのエリア前は一時混乱状態となり、ハビ・マルチネスのミドルシュートがポストを直撃したのである。もしこれが決まっていれば・・・試合が別の顔を見せたことは間違いないだろう。
一瞬肝を冷やしたバルセロニスタであったが、その5分後にはこれまでの苦労が報われる時が訪れた。54分、ビジャからの最高級の縦パスによって密集ラインを抜け出したケイタが、まるでメッシのように左足アウトサイドでのシュートを、ゴール右隅に流し込むのである。お見事なり。
63分には、今度はイニエスタのシュートが右ポストに嫌われるというクレ悶絶のシーンもあったが、その10分後の73分にはチャビのゴール正面からのミドルシュートが、相手デフェンサに微かに当たりながらもネットに吸い込まれていったので一安心。0-2となり、勝負の行方はほぼ決定付けられた。
だがゲーム最終盤、思わぬ事件から試合は突如おかしな方向へ進んでいく。86分、グルペギの顔を殴ったことでビジャが一発退場。これでがらりと雰囲気が逆転し、バルサが苦境に立たされてしまうのだからフットボルは恐ろしいものだ。息を吹き返したアスレチックは、88分にガビロンドが執念のプレーから1点を返す。スコアは1-2となり、エンパテの恐怖がバルセロニスタを襲った。
しかしこの不安を安堵に変えてくれたのが、ブスケツのゴールだった。92分、前がかりとなったアスレチックに対してバルサはカウンターを仕掛ける。オフサイドを上手く破ったペドロが右サイドを駆け上がり、最後は中央で待ち構えたブスケツが思い切りよくシュートをズドン。この3点目が、もうちょっと早く決まっていればネ。さっさと試合を決めないと、こういうややこしいことになりかねない。
まあいずれにせよ、これでバルサは今季リーガでフエラ3連勝。レバンテと引き分けたマドリーを、軽やかに順位表で抜き去った。
|