鬼門セントラルには変わらず鬼門のままであり、ルビンは相変わらずバルサの天敵であることが証明された試合。少ないチャンスを確実にモノに出来ねば、バルサは辛い。
ルビン・カザンのベルディエフのバルサ対策は非常に明快だった。昨年のインテルのごとく、とにかくエリアを閉ざしてバルサにゴールを許さない。そこに魅せるプレーは必要とされず、カルロス・エドゥアルド、マルティンス、カサエフといった選手たちはベンチに置かれた。自陣前に、5人のラインを1列、その前にさらに4人のラインを1列。そして残る1人がバルサのエラーを待ち、速攻カウンターを仕掛ける作戦。これが上手くいってしまうから性質が悪い。
ルビンはキックオフ直後より、ボールをバルサに譲り渡していた。バルサが攻め、ルビンが守る分かりやすい構図。そういう試合では、チャンスを確実に活かしたものが勝者となる。端的にいえば、それはロシア王者の方だった。
ゲームで最初に決定機を掴んだのはバルサだ。12分、ビジャからのスルーパスに抜け出したペドロが、GKリジコフと競り合いながらも無人のゴールにシュートを放り込む。しかしボールは無常にもクロスバーに拒まれた。これが入っていれば、展開はまた違っていたのだが・・・・。運がない。
バルサはその後も、ブスケツのセンタリングに合わせたビジャのボレーがポストの右を通過するなど、あと一歩が足りなかった。そうしているうちに29分、アルベスがエリア内でカレシンを倒してペナルティを献上。ノボアがこれをきっちりと決めて先制に成功するのである。バルサとしては、恐れていたシナリオが現実となった。
リードを奪えば、さらに守りを固めるのがこの作戦の肝である。ルビン・カザンもその例に漏れず、がっちりとエリア周辺に人員を集めてくる。ハーフタイム直前、またもペドロがビジャから決定的なパスを受けるのだが、昨年ならここで無類の勝負強さを示した彼のシュートが決まらない。バルサは同点とすることが出来ないままに前半を終えた。
後半に入り、このままでは絶対に終わるわけにはいかないペップチームはさらに攻勢を強めた。押し込むバルサ、引き守るルビン。待望の得点機は、60分に訪れた。エリア内に突入したイニエスタがデフェンサに倒され、審判はペナルティを宣告。このプレッシャーのかかるシュートをビジャがスリリングながらもしっかりと決め、バルサはついに同点に追いついた(1-1)。
同点とした直後、グアルディオラは勝負を一気に決めるべくレオ・メッシをピッチに送り出している。まだ万全ではないクラックを投入してでも、勝利をもぎ取る。その意図がこの交代に強く表されていた。
10日ぶりの怪我明けとはいえ、それなりのプレーをやってしまうところがメッシのメッシたる所以である。しかし全精力を上げてゴールを守るルビンの守りを崩すのはそのメッシをしても容易ではなく、メッシが手にした3度のシュートはいずれも枠を捕らえることはなかった。
そんなバルサが肝を冷やす場面が、86分に訪れている。途中交代のマルティンスのヘディングシュートが、バルデスの守る右ポストを直撃するのである。もしこれが入っていたら・・・考えるだけでも恐ろしい。
試合最後に見せ場を作ったのはイニエスタだった。エリア内左から、ゴール右角を狙ったシュートを放つドン。決まればそれはあたかもスタンフォード・ブリッジ弾のようだったろうが、奇跡のようなゴールがそうも入るものではない。ボールはバーの頭上をわずかに通過し、その直後に試合終了のホイッスルが吹かれた。
バルサはまたしても、ルビン・カザンを攻略することが出来なかった。ペップチームと3度ゲームを行い、1度も負けなかったチームは彼らのほかに存在していない。まさに天敵というところか。メッシを投入したからには3ポイントが欲しいところではあったが、敵地ロシアでのドローは、まあ許容される範囲内ではある。カンプノウ決戦では、今度こそ勝利あるのみだ。
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