この試合で後に語られるのは間違いなく、試合内容よりも遠征にまつわるドタバタだ。試合前日のスペイン各地で発生した航空管制官のストライキに伴う、ドタバタ劇。連盟がバルサに試合の翌日延期を告げ、結局それを取り消し、急きょ鉄道とバスでのパンプローナ入りを強いられたバルサだったのだが、そんな障害に屈することなく、クラシコ圧勝で気を緩めることもなく、グアルディオラの選手たちはしっかりと勝利をもぎ取ってくれた。立派である。
レイノ・デ・ナバーラにチームが到着したのは、本来のキックオフ予定時間の10分前だった。選手たちは慌しく着替えを行い、ウォームアップもそこそこに試合開始。45分遅れのキックオフだった。
長く混乱した一日を経てピッチに立ったバルサは、やはり序盤はゲームに入りづらそうにしていた。5分にはペドロのキラーセンタリングにビジャがあと一歩に迫るなど、チャンスを作り出したバルサではあったが、プレーにはいつもの流動性は見られない。守備面でも細かなエラーが見られ、プジョルとバルデスの連係に乱れも見られた。最大のピンチは16分、ブスケツへと送ろうとしたバルデスのパスがソリアーノにカットされた場面だ。彼のシュートが正直なもので、バルサは助かった。
また14分には、守備に急いで戻ったペドロがエリア内でファンフランを倒すなど、審判によってはペナルティを宣告されかねないプレーもあった。ペドロのプレーはギリセーフというものだったが、レイノ・デ・ナバーラの観客はもちろん納得しない。スタンドの空気は、遅刻したバルサに対しいっそう辛いものとなった。
だが時間の経過に伴い、バルサはじわじわと本来のフットボルを取り戻していく。ボールは自由にグラウンドを駆け始め、オサスナはそれを追って走るようになっていく。そして本日の主役であるメッシが、最初の仕事をする。まずはペドロへの絶妙すぎるスルーパスだ。ライン裏のスペースへ抜け出したペドロは、逃すことなくこのチャンスをモノにした。ペドリートに本来の勝負強さが戻っている。
このコンビの息の合い方は完璧であり、28分には今度はペドロのパスからメッシが決定機を手にしたのだが、エリア内左からの角度のないシュートは惜しくも右ポストに弾かれてゴールならず。この後の時間帯は、ほぼバルサ一色だった。バルサがゲームを支配し、前半が終了している。
だがいくらボールを支配しようと、0-1では試合は決まらない。後半、オサスナはゲーム序盤と同様にバルサに圧力をかけるべく前へと出てくる。だがバルサは後ろに引くことはなく、あくまでバルサとしてそのオサスナの攻勢を受け止めた。
勝負の行方を決定付けたのは、64分のメッシによる追加点だ。それはオサスナのお株を奪う、速攻による得点だった。グラウンド中央付近でビジャがボールを奪取すると、広大なスペースへと向けてパスを送り込む。そしてこれを受けて超高速にオサスナ陣内を切り裂いたのがメッシだ。デフェンサたちを置き去りにしてエリア内に到達したレオは、そのままGKリカルドも難なく攻略。素晴らしき哉、このクラックの決定力。
主導権をがっちり確保したバルサはその後、ビジャを中心に幾度かチャンスを作り出す。だが3点目のゴールを決めたのは、やはりというかメッシだった。グアルディオラがチャビをベンチに下げてケイタを送り出した直後、エリア内に切れ込んだメッシが倒されてペナルティキックを獲得。これをレオ自らがきっちり沈め、スコアはゆとりの0-3となった。
クラシコでは2得点と大きな仕事をしたビジャだったが、どうもこの日はゴール運がなかった様子。まあそういう日もあるだろう。フットボル以外でのドタバタがあり、なにかとしんどい一日だったが、難所レイノ・デ・ナバーラでの試合も乗り越えたバルサが、相応しい勝利を手に入れたのは大きい。幾多のトラブルを克服し、自らの力によって3ポイントを獲得したバルサ。この王者を止めるのは、生半可なことでは不可能なようだ。
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