たまにはこういう試合だってある。ペップの見立ては正しいものだ、と実感させられた敗北であり、教訓を得るにもちょうど良い敗北だ。
国王杯は、いろんなことが発生する。カンプノウでの第1戦のあとから、グアルディオラはベティスの実力を高く評価し、このベニト・ベジャマリンでの試合も警戒が必要であるとしつこく繰り返していた。このセビージャ遠征にフルメンバーを帯同させたことも、その表れだ。
スタメンにはコパ的メンバーが起用されはしたが、ゲームはペップの警告どおり、誰もの予想を裏切る形で始まっている。キックオフわずか1分、ベティスはエリア右でフリーキックのチャンスを手に入れ、ニアのホルヘ・モリーナがこれをバチンと突き刺してみせたのである。それだけではない。7分にもモリーナは、今度は速攻からライン裏へと抜け出し、ピントを破ってゴール。バルサはなんだかよく判らないうちに、2点のリードを奪われてしまった。
第1戦でのスコア(5-0)はやはり気合を減少させてしまうのだろう。この試合のバルサはどうにも出来が悪く、プレーにリズムがなければ、守備もちぐはぐ。ボールはいっこうにつながらず、ベティスボールとなるたびにバルサはあたふたと守りに追われた。積極的に真正面から立ち向かってくる相手になど、どう対処していいのか分かりません、といった風情だった。
チャビが中盤にいながら、これだけボールをコントロールできないのも珍しいほど。入団初先発で張り切るアフェライは元気いっぱいだったが、孤軍奮闘というか、まだチームに馴染みきっていない状況では、空回り感も否めない。
2-0となってもベティスは攻撃の手を緩めず、もし15分のモリーナのシュートが決まりハットトリックとなっていたなら、バルサはそのまま崩れ去っていたかもしれない。その点でピケは救世主である。
もうひとつ、バルサを楽にしたのは38分のレオ・メッシの一撃だ。グラウンド中央付近から、自らカウンターアタックをスタートし、自ら仕上げてみせたクラック。このゴールによって、ベティスはさらに5点が必要となった。まさかの番狂わせは、この時点でなくなったといっていい。
しかしバルサは、レオのゴールで目を覚ましたというわけではない。前半もロスタイムに入った46分、遠い位置から放り込まれたフリーキックをミリートが頭でクリアしようとするのだが、後ろに逸れたボールを、エリア内の落下点にいたアルスがゴールを背にしながらも器用にダイレクトボレー。バルサにとってこの前半は、始まりも悪ければ終わり方も最悪だった。
あの忌々しいインテル戦以来となる3失点を喫し、バルサもそのままでは終われなかった。ロッカールームでペップの喝が入ったのは間違いないだろう。後半、彼らのプレーは激しさを増し、その結果、52分に追加点の絶好のチャンスを得る。メッシのプレーがイシドロのエリア内でのハンドを呼び、ペナルティキックが宣告されたのである。
しかしダメな日というのはこういうもの。メッシはシュートの直前に足を滑らせ、ボールは遠くクロスバー上方を飛んでいってしまった。
ペップはチャビとアフェライを下げ、ブスケツとアビダルを投入するなど、選手交代によって局面を打開しようと試みたのだが、期待されたような変化は訪れず。要するにこの試合はバルサのものではなかったということで、大健闘したベティスをただ褒め称えるしかないのだ。彼らは間違いなく、バルサが今季対戦したチームの中で、ベストだった。来季のプリメーラでの対決が、楽しみだ。
残念ながら、バルサの公式戦での無敗記録は28試合にてストップした。幸いなことに、チームがこの黒星によって受ける実害はなく、バルサはコパの準決勝へと駒を進め、週末のリーガで勝利することで、この負けも忘れ去られることだろう。つまりは、いつか負けるとするならば、タイミングとしては抜群。良い教訓を導き出し、さらに成長していくための糧とすれば問題はない。変に勝ってしまうより負けたほうが良い場合だって、稀ながらもあるのだ。
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