ディ・ステファノからレオ・メッシへ。半世紀前に伝説のクラックによって率いられたマドリーがリーガ15連勝を達成し、21世紀のクラックに導かれたバルサがその記録を塗り替えた。いま私たちは、伝説の誕生を目撃している。
メッシはそこらのクラックと呼ばれる選手たちの、さらに何ランクか上をいく選手である。驚異的なペースでゴールを量産するだけではなく、仲間へのアシストも驚異的なペースで量産するフットボールマシーン。最強のバルサの中で、レオはその才能をさらに増幅させているようだ。チームとギガクラックが、互いにその長所を引き出しあっている。
アトレチコ戦の前半、バルサの優位は文字通り圧倒的だった。3連敗とクライシス状態でカンプノウに訪れたキケ・フローレスのチームに成せたのは、どうにかその押し寄せる波を瀬戸際にて食い止めることだけ。フォルランをベンチに置き、中盤でバルサのパスを寸断するという作戦も、功を奏しなかった。
コルチョネロたちがバルサの波を凌げたのも、最初の15分のみだ。16分の先制点は、これぞメッシだというゴールだった。エリアの右際でボールを受け、中央へ向かって一気に加速。デフェンサたちを置き去ると、開いたコースに正確なシュートを突き刺す、いつものパターンである。だがこれ、分かっちゃいても止められない。メッシ必殺の宝刀だ。
この日はもう、メッシが主役になると決まっていたかのようだ。17分のビジャ、26分のペドロの際どいシュートが惜しくも決まらない一方で、レオの前には決定的なボールが転がり込むのだ。20分にはアルベスの完璧なお膳立てを活かせなかったメッシだったが、バルサの10番に2度の失敗はない。28分、高速パストライアングルによってアトレチコ選手の判断力をオーバーヒートさせると、最後はビジャから一閃のスルーパス。アントニオ・ロペスがかろうじて足に当てるも、ボールはメッシの前に転がり、あとはもう楽々とGKデ・ヘアを料理するだけだった。2-0。コルチョネロたちは呆然と天を仰ぐしかなかった。
もちろん、バルサの素晴らしさはメッシだけではない。アグエロを止めまくったアビダル、疲れ知らずのアルベス、イニエスタ、チャビ、ブスケツのテクニック、ビジャやペドロの献身的かつ相手を脅かすプレーの数々。チーム全体が、アトレチコを完全に凌駕していた。その上で、異次元人メッシである。
後半に入ると、アトレチコは反撃を開始した。バルサが若干リズムを低下させると同時に、天敵であるフォルランがピッチに登場し、存在感を発揮したのだ。53分、フィリペ・ルイスのエリア内でのシュートをゴールライン上でピケがかろうじてクリアした場面、これは正直危なかった。
そんななか、カウンターを仕掛けようとするクン・アグエロを、まるでデフェンサのように30mほど猛追し、きっちりとボールを奪還したメッシのプレーは特筆ものだ。世界ナンバー1であろうと、楽をせずにボールを追う。ここにレオの値打ちがある。どこぞの自称ナンバー1とは違うのだ。
試合後にグアルディオラが指摘したように、このゲームは輝かしい出来栄えとはいえなかった。だがそれなりにアトレチコの反攻を抑え、そして追加点を奪ってしまうのは流石である。決めたのは、みたびメッシ。メッシから送り込まれたスルーパスにビジャが突進し、デ・ヘアともつれ合ってボールがこぼれたところを、抜け目なく押し込んで3-0(78分)。どこまでも飽くことない得点への執念。
こうしてメッシはキャリア9回目のハットトリックを完成。ピチーチ競争でクリスティアノを抜き去り、今季のゴール総数はすでに40にも到達した。リーガだけでもすでに24得点。この調子でネットを揺らし続ければ、レオは1951年にサーラ(アスレチック)が、1990年にウーゴ・サンチェス(マドリー)が達成した38ゴールもクリアしてしまいそうだ。残り16試合、15得点で新記録達成。やっておしまい、レオ!
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