小細工の多い、英国ではパスを得意としているらしいチームに、本当のパスフットボルをレクチャー。おまけとして、シュートの打ち方もレクチャー。
バルセロニスタに、またひとつステキな想い出が誕生した。ロンドンでの2-1なんて、なんのその。情熱に満ち満ちたカンプノウにあっては、そんなハンデもドラマのスパイスでしかなかった。年に数度だけ訪れる、魔法の夜。クラックたちのパフォーマンスが、ファンの声援と響き合う。
前日の会見では「攻めにいく、勝ちにいく」と豪語していたアーセナルだったが、ふたを開ければ案の定、ボールは放棄してさっさとリードを守りに入ってきた。もちろん、"目覚しい回復"をみせたというバン・ペルシーは元気に先発。何から何まで、いちいち裏がある人たちだ。スペースを消すガナーズに対し、バルサはこつこつと忍耐強くボールを回し続けた。たまにボールを失おうとも、高速プレスによって瞬時に回復。マスチェラーノはあまりにグレートだった。
18分、アウベスのロングフリーキックを止めた際にポルテーロのSzeczesny(読み方難しい)が負傷交代となり、2006年パリ決勝でもレーマンの代わって登場したアルムニアに急きょ出番が来たのには、奇妙な因縁を感じる。ガナーズにとっては、このアクシデントはいわば幸運だった。アルムニアさんはこの後、パラドン連発で大ゴレアーダからチームを救うのだから。
アーセナルの守備に手を焼いたバルサだったが、30分を越える頃から徐々にチャンスを作り始めていた。特に惜しかったのは、エリア内に猛烈にダッシュしてきたアドリアーノのポスト直撃弾(36分)。しかし決定機はなかなか訪れず、じわじわと時間が経過。アーセナルは大げさに怪我を偽装したりと時間稼ぎに忙しく、そんななかでバン・ペルシーはアルベスからボールを取ろうとした際に顔を殴ったことで、この日1枚目のカードを提示されている。
だがハーフタイムを前にメッシが得意の形でシュートを放ったあたりから、バルサはギアを上げる。そして48分、イニエスタが変態ドリブルによってエリア正面に切れ込むと、絶妙タイミングで右のメッシへとスルーパス。アルムニアが前に出たところをレオは見逃さず、ポン、とソンブレロでかわすと、そのままボレーで無人のゴールへと突き刺した。なななななんというゴール!走りながらのソンブレロなんぞ、しかもこの局面でやってのけるのはメッシしかいない。えぐすぎる。
そして後半。ドラマはまず、序盤に立て続けに発生した。その一つめは52分。前半と同じく、時間を稼ぐのが関の山だったアーセナルが手にした貴重なコーナーキックの場面。これをクリアしようとしたブスケツが、不運にも自分たちのゴールネットを揺らしてしまうのである。
しかし思わぬ形で1-1となり、喜んだのも束の間。アーセナルはその3分後、自らを厳しい状況へと追い込む。判りやす〜いオフサイドに気付かなかったと言うバン・ペルシーが、時間稼ぎととられて然るべきシュートを放ち、2枚目のカードで退場となるのだ。若干厳しい判定とはいえ、文句があるならルールに言えばいい。前半からのチームとして繰り返された不誠実なプレーの、その結果がこれなのだ。
10人となったガナーズに、やれることは少ない。あとはバルサの圧倒的な攻めに対し、ベンゲル集団がどれだけ耐えられるか、の話だった。60分と66分のビジャの決定機は、アルムニアがパラドンでどうにか防ぎはしたが、いつまでもそうはいかない、いかせない。69分、またもイニエスタの変態ドリブルがアーセナル守備陣を襲い、ビジャをワンタッチで経由してから、ライン裏を取ったチャビが冷静にボールを流し込んで2-1。見事すぎるパス交換、中央突破!ドン・イニエスタ、キレてます。
バルサの攻勢は止まらない。合計スコアをイーブンとしたさらに2分後、今度はエリア内へと突入するペドロを、コシエルニーが堪らず倒してペナルティの宣告。メッシが確実にこれを決め、このゲームのスコアを3-1とした(71分)。
有利な立場になったとはいえ、アーセナルに1点返されれば、その時点で一転ヤバくなるバルサ。狙いにいった追加点のチャンスは数度あったものの、惜しくもそれらが決まらず、絶対安心とはいえない状況は続いていた。そして87分、バルサはアドリアーノとアビダルの連係ミスからベントナーに1対1の場面を作られそうになる。そしてこの絶体絶命のピンチを救ったのが、後方より気迫のスライディングによってシュートを阻止したマスチェラーノである。さすがはアルヘンのカピタン!嗚呼あなたがいてくれてよかった。この執念と献身性が、バルサの強さの秘密であろう。
そうしてバルサはきっちりと目標を果たし、1/4ファイナル進出を決めた。もう一発アーセナルが打ちひしがれるようなゴールがほしかったが、これで満足としよう。なんたって、シュート数は19対0である。あちら方面から聞こえてくる言い訳など、痛くも痒くもない。国王杯で当たったセウタ(3部)だって、バルサ相手にシュートを何本か打っている。
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