伝説チームの仲間入りを果たす、文句ない勝利でヨーロッパ制覇。クレ冥利に尽きたファイナル。
コンディションの整ったペップバルサを止められるチームなど、この世界には存在していない。バルサ最強をどこまでも強く印象付けた試合だった。ウェンブリーでバルサが対戦したのは、2年前のローマ決勝と同じくマンチェスター・ユナイテッド。あの敗北を経て、さらに強力になったというユナイテッドだ。しかしそんな彼らとて、このバルサの敵ではなかった。
ゲームは2年前と同様、マンチェスターの攻勢で始まっている。このバルサを相手に勝機を見出すには、先制点は極めて重要だ。いきなりアクセルを踏み込み、バルサ陣内へと押し寄せる赤い悪魔たち。だがここに我らが守護神が立ちはだかり、まずはピンチを凌いでいる。このゲームでのバルデスの一番にしてほぼ唯一の見せ場は8分、デル・サールからルーニーへと直接送り込まれたボールを、判断よく飛び出し、パンチングで弾き出したプレーだった。お見事!
序盤10分間のユナイテッドの攻撃を抑えきると、ゲームはこちらも2年前と同様、バルサの支配下へと置かれていく。持ち味であるワンタッチフットボルが機能し始め、軽やかなリズムでボールがピッチを駆け回っていくのである。言うまでもなく、前線からのプレスもバッチリ。こうなればもう、相手チームは自陣深くで嵐の通過をただ願うしかない。
15分、アルベスのセンタリングにニアで合わせたペドロ。19分、わずかにポスト横を通過したビジャのミドルシュート。21分、デル・サールがかろうじてキャッチしたビジャのシュートなどなど。ユナイテッドは、ギリギリのところでどうにか無失点に持ち堪えていた。
そして27分、シュートの匠がバルサに貴重な先制点をもたらす。チャビからえげつない視野のパスが大外のペドロへと渡り、匠は左と見せかけながら右正面にズバッと一発。あのデル・サールが完全に逆を突かれた、技ありのゴールだった。
だがマンチェスターもやるもので、すぐさま一発のチャンスから同点に追いついてみせる。34分、バルサ陣内でスローインのボールを奪い取ると、ルーニーが一気にエリア前へ。ここで縦パスを受けたギグスはわずかながらもオフサイドであり、かつ彼のトラップは乱れるのだが、上手い具合にワンツーの形となり最後はルーニーが押し込んで1-1。このあたりの決定力は流石である。
チャンスを作りながらも、前半を1-1で終えたバルサは後半、立ち上がりから勝負を決めにいく。必殺モードに入ったバルサは、壮観だった。チャビ、イニエスタ、ブスケツの中盤トリオがテンポよくパスを展開し、ここにメッシがちょこちょことアクセントに加わる。ペドロやビジャ、アルベスやアビダルもまた攻撃に幅をつける。マンチェスター、これには完全になす術なし。バルサのフットボル祭りとでも言おうか。ローマ決勝も圧倒的アスルグラナだと思ったが、前回より良くなっているユナイテッドを、それ以上に進化したバルサがまたも凌駕したのだ。
バルサの追加点は時間の問題だった。51分、アルベスとメッシによる連続シュートはかろうじて防いだレッドデビルズだったが、54分のキングメッシのシュートまでは耐えられず。クラックはチャビからのパスを受けると瞬時にギアを上げ、ユナイテッド守備網の穴へ入ったかと思うや否や、左足を一閃させた。獰猛なシュートが、ネットを焦がす。鉄壁と謳われたディフェンダーたちも、ただ呆然とするだけだった。
この試合のバルサは、ここではまだギアを落とさなかった。勝負を決めるには、トドメが必要。このあたり、過去の教訓が生きている。苛立ちを見せ始めるマンチェスターに対し、圧力をかけ続けるペップチーム。62分63分のメッシ、65分のチャビミドル、66分のイニエスタミドル、そして69分のビジャゴラッソだ。
メッシが右サイドから切れ込んでいき、守備陣がクリアし切れなかったボールをブスケツが落とし、最後はエリア際からグアッヘが超技ありのカーブシュート。ゴール右角に向かい放たれたボールは美しい曲線軌道を描きながら、懸命に伸ばされたデル・サールの指先のその数センチ先を抜け、ネットへと突き刺さったのだった。バルサ入団以降で最高のゴールが、この舞台で炸裂。このゴールを、すべてのバルセロニスタは待っていた。
3-1となり、事実上勝負は決着した。25,000人のバルセロニスタが歓喜の歌声をあげるなか、バルサ選手たちは幾分ギアを落としつつ、急所はきっちり押さえて試合終了。思い出の地ウェンブリーでクラブ通算4度目となるヨーロッパカップを獲得し、新たな伝説をフットボル史に刻んだのだった。ああ、このチームと同じ時代を生きられる幸せよ。本当にありがとう、グアルディオラと選手たち。
そしてフィエスタは、アビダルがビッグイヤーを掲げるという粋すぎる計らいで幕を閉じた。アビさんにカピタン腕章を譲ったプジョル、素晴らしき哉。ビスカ、バルサ!!!!
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